特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版252第1章国際的な知的財産制度の動向②戦略計画2020 EUIPOは、2016年6月1日、2020年までの同庁の活動指針を定める「戦略計画2020(Stra-tegic Plan 2020)」を公表した。 戦略計画2020は、「ビジョン」を頂点に掲げ、それから生じる「戦略的目的(Strategic Goals)」及びさらにそれらを細分化した「行動方針(Lines of Action)」といった階層構成である。「行動方針」においては、職員の能力開発や実務環境の最適化、EUIPOにおける財政管理の強化、ITセキュリティの強化、IPツールやデータベースの開発・改善、EU各庁間のネットワークの強化、規則改正に対する各加盟国へのサポート、知財分野における証拠ベースの調査研究の実施、欧州企業に対する知財権の保護に係る支援等、多岐に渡って言及されている。(5)欧州各国の取組①英国 ビジネス・イノベーション・職業技能省の下に、英国知的財産庁(UKIPO)が設置されている。同省が、特許、意匠、商標、及び著作権を所管しており、イノベーション促進の観点から知的財産権に関する責任を担っている。 2016年6月の国民投票においてEU離脱を是とする投票が過半数を占めたことを受けて、UKIPOは、知財法制に関する見解を公表している。 意匠及び商標に関しては、EU離脱後であっても英国産業界は共同体意匠及び欧州連合商標の登録を行うことは可能であることが示された。また、既存の登録済みの共同体意匠及び欧州連合商標は、EU離脱後であっても英国法に基づき英国内で権利が与えられ、継続的に保護されることが示された。なお、英国は、意匠及び商標に関して、ハーグ協定制度、マドリッド制度のメンバーである。 特許に関して、英国のEU離脱は、EPOに特許保護を求める上で影響を与えるものではなく、また英国を含む現存する欧州特許についても影響を受けることはない旨示された。また、英国のEU離脱は、EPCにおける現行の欧州特許制度に影響を与えないこと、英国は、EUを離脱した後であっても欧州単一特許制度及びUPC制度に留まることを模索する意思があるとした。②ドイツ ドイツの知的財産制度については、連邦司法省の下にドイツ特許商標庁(DPMA)が設けられ、そこがドイツ国内の特許、実用新案、意匠及び商標の審査・登録や、従業者発明の報償の調停等の中核を担っている。ドイツは、製造業が盛んであり、特許出願や特許訴訟も他の欧州の国に比べて多い。DPMAは、特許審査期間の短縮等を目的として、2019年以降、200名程度の職員の増員を予定している。

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