国際的な動向と特許庁の取組第3部第1章特許行政年次報告書2019年版253 日本貿易振興機構デュッセルドルフ事務所では、欧州における知的財産に関心のある日系企業等が相互に協力、連携の促進を図り、また、一体となって知的財産問題の改善、解決に向けた情報の共有、活動を行い、欧州における適切な事業環境の実現に資することを目的として、「欧州IPG」を組織している。欧州IPGは、2016年の設立以来、欧州内の様々な知財庁、裁判所、税関等と意見交換を行っており、2019年3月7日には、欧州特許庁(EPO)との年次会合を実施した。今次会合は2018年7月のカンピーノス新長官就任、2019年1月の3人の副長官の交代以降初めての開催となるものであり、日本側からはこれまでで最多の約30名が参加して、カンピーノス新長官、エルンスト新副長官ほかEPO各部署の担当者と、審査の品質、審査基準、国際協力等に関する最近の施策、日本ユーザーからの要望等について率直かつ有意義な意見交換を行った。 特に、EPOでは、特許審査着手時期を延期することで特許審査のタイミングの自由度を向上させる施策の導入の必要性及び実現可能性についてユーザーの意見を収集すべく、2018年11月から2019年1月にかけてユーザー・コンサルテーションを実施したところ、今次会合にて、その結果概要がいち早く報告された。本施策には、日本ユーザーからも、権利者としての立場から商業的価値がある程度明確になるまで権利化を待つことができるメリットと第三者としての立場から権利化の動向の監視負担が増すデメリットの両論がある中で高い関心が寄せられていたところ、EPOの今後の同施策への対応の動向が注目される。 また、EPOでは、2023年までの今後5年間の戦略計画(Strategic Plan 2023)を策定すべく、2019年1月23日から同年3月15日までパブリック・コンサルテーションを実施していたところ、今次会合はこの意見募集期間中にあたったことから、日本ユーザーに対しても積極的な意見の提出が促され、EPOのこのようなオープンな姿勢に対して欧州IPG側から感謝の意が表された。EPOの戦略計画は、2019年6月の欧州特許機構管理理事会に提出され、採択される予定となっており、EPOが、新体制のもと、どこに重点を置き、どのような政策を打ち出していくのかを示すものとして注目される。 欧州IPGでは、英国のEU離脱(Brexit)、欧州単一特許・統一特許裁判所制度の導入等、目まぐるしい情勢の変化の中で、欧州の知財関連当局から生の声を聞き、またインプットを行うことのできるこのような機会を引き続き積極的に設けていきたいと考えている。 欧州IPGの詳細、参加方法については、以下のリンクを参照されたい。https://www.jetro.go.jp/world/europe/ip#r_ipgEPOと日本ユーザー(欧州IPG)との意見交換日本貿易振興機構 デュッセルドルフ事務所Column 19
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