特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版254第1章国際的な知的財産制度の動向(1)我が国との関係①我が国とCNIPAの取組 日本国特許庁(JPO)とCNIPAとは、1994年に第1回日中特許庁長官会合を開催して以降、特許、意匠、商標、審判、機械化、制度・運用に関する各種専門家会合や、人材育成機関間の会合等を開催し、二国間の課題について意見交換を行っている。また、特許審査についての国際審査官協議も行っている。 JPOとCNIPAは、2018年11月に開催した第25回日中特許庁長官会合において、特許、意匠及び商標分野の審査、機械化、審判、人材育成など、多方面にわたる今後の両庁の協力について議論を行った。特に今次会合では、CNIPAが新たに商標も担当するようになったことを受けての商標分野での協力の推進、及び、PPH試行プログラムの期間延長などに合意した。 上記商標分野での協力の合意を受け、2019年3月、第1回日中商標専門家会合を開催し、イメージサーチを活用した審査の効率化、品質管理の比較検証、非伝統的商標における審査実務に関する意見交換を実施した。②冒認商標出願への対応 2008年6月に公表した「中国・台湾での我が国地名の第三者による商標出願問題への総合的支援策」に基づき、商標検索・法的対応措置に関するマニュアルを作成し、幅広く情報提供を実4.中国における動向施しているとともに、北京・台北に「冒認商標問題特別相談窓口」を設置して、我が国の自治体等関係者の相談に対応している1。 また、中国における日本の地名・地域ブランドの商標出願・登録状況の調査・公表を年1回行ってきたが、2019年度からは、四半期毎の調査・公表へと変更し、正当な権利者への早期対抗措置を促進している2。(2)近年の知財政策の動向 中国では、2008年の国務院による「国家知的財産権戦略綱要」の公表以来、第1段階の5年間の目標を達成したとして、さらに国家知的財産戦略を深化させるために、2015年1月の「国家知的財産戦略を深化させて実施する行動計画(2014-2020年)」が公布され、1万人当りの発明専利保有数、専利出願の実質審査平均期間等について、2014-2020年の主要予測指標が定められた。また、国家知的財産戦略の実施を徹底し、知的財産権重点分野の改革を深化し、より厳格な知的財産権保護を実施し、新技術や新産業、新業態の発展を促進し、産業の国際化レベルを向上させ、大衆創業・万衆創新を保障、奨励する方針のもと、2015年12月に国務院から「新たな情勢における知的財産強国建設の加速に関する若干意見」が公布された。さらに、知財保護環境の改善、知財運用収益の顕在化、知財総合能力の向上を発展目標として、2016年12月に中国国務院から「十三五期間における国家知的財産権保 中国は、世界で最も多く専利(我が国における「特許・実用新案・意匠」に相当)及び商標の出願を受理する国である。特に、2008年に国務院が「国家知的財産権戦略綱要」を公表し、知的財産を国家戦略として位置付けて以来、産業財産権の取得奨励をはじめとする知的財産権に対する認識が浸透してきたこと、製造大国からイノベーション型国家への転換を推進し、多国籍企業と現地企業の合弁によるR&Dの現地化が進展していること等を背景として、国内出願人による権利取得の動きが活発化している。このような状況下では、輸出入共に中国を主要貿易相手国とする我が国にとっても、中国における知的財産権保護の重要性は高まる一方である。 本節では、我が国との関係に加え、中国における近年の知的財産政策の動向、及び専利・商標を所管する中国国家知識産権局(CNIPA)の各取組について紹介する。1 https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/bonin/shohyo_syutugantaisaku.html2 https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/tm_misappropriation.html12

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