特許行政年次報告書 2019年版
285/356

国際的な動向と特許庁の取組第3部第1章特許行政年次報告書2019年版255護と運用計画」が公布された。これらの国家政策に基づき、中国では、政府機関や地方政府等、様々なレベルで各種の知財政策が策定されている。 2018年4月、ボアオ・アジアフォーラムにて、習近平国家主席は、「知的財産権保護を強化する。我々は今年、国家知識産権局を改編し、法執行を強化する整備を行い、法律違反のコストを大幅に高め、法律の抑止力が十分に発揮されるようにする。我々は中国における外資企業の合法的な知的財産権を保護する。」と、知的財産権の保護について言及した。 2018年10月に全人代において「専利等知的財産権事件の訴訟手続きに係る若干問題に関する決定」が可決され、2019年1月から、特許・ソフトウェア・技術秘密などの特に高い専門知識が必要な分野について最高人民法院の知的財産権法廷に二審(最終審)が集約されることとなった。このような司法制度改革とともに、2018年12月に国家発展改革委員会など38部門の連名で通知された「知的財産権(専利)分野における深刻な信用失墜主体に対する共同懲戒の実施に関する覚書」、2019年2月にCNIPAから意見募集のあった「商標出願行為の規範化に関する若干規定」等、知財保護の強化に資する取組が行われている。 また、2019年3月に国務院令第709条(国務院が一部の行政法規を改正することに関する決定)により、「技術輸出入管理条例」及び「中外合弁企業法実施条例」の技術移転に関連する一部規定が削除され(コラム20参照)、さらに、2019年3月に成立した「外商投資法」にて内外差別や強制的技術移転の禁止等の趣旨の改正を行うなど、知財制度整備を推進している。(3)CNIPAの取組 CNIPAは、特許、実用新案、意匠、商標、地理的表示に関する業務を所管する、国家市場監督管理総局(SAMR)配下の機構である。①CNIPAの政策動向a. 専利法改正に向けた動き 中国では、専利法という一つの法律によって、発明、考案、意匠が、それぞれ「発明専利」、「実用新型専利」、「外観設計専利」として保護されている。同法は、1985年施行、1993年に第一次改正法施行、2001年に第二次改正法施行、2009年に第三次改正法施行、と約8年おきに改正がなされてきた。第四次改正については、専利保護の強化、専利活用の促進、専利水準の向上等の観点からの検討を経て、2015年4月にCNIPAによる専利法改正案(意見募集稿)、同年12月に国務院法制弁公室による専利法改正案(送審稿)の公開意見募集が行われた。 2018年12月には全国人民代表大会(全人代)にて審議され、2019年1月には全人代による専利法改正案の公開意見募集が行われた。改正案には、懲罰的損害賠償(五倍賠償)制度の導入、法定賠償額の上限引上げ、証拠収集手続の強化等が含まれる。b. 審査体制の強化 CNIPAは、審査官の採用数拡大を柱とする審査体制の強化を進めており、2010年に発表された全国専利事業発展戦略(2011-2020年)において、2015年までに審査官数を9,000名とする目標が掲げられた。この方針の下、CNIPAの下部組織である専利審査協作センターを北京、江蘇、広東、河南、湖北、天津、四川、福建に設立した。2016年末におけるCNIPA及び各センターの審査官数は、1万人超となっている。c. 特許審査ハイウェイ(PPH)の拡大 CNIPAは、2011年11月の日中PPH試行プログラムの開始を皮切りにPPHの対象国を徐々に拡大している。日中PPH試行プログラムは、最近では、2018年11月1日からさらに5年間試行期間が延長された。(4)商標分野の取組①商標分野の政策動向a. 制度改正 第三次商標法改正については、改正商標法が2013年8月に全人代常務委員会で可決され、2014年5月1日に施行された。改正商標法は、出願人の利便性向上や公平競争の市場秩序の維持、商標権の保護強化等を目指したものである。

元のページ  ../index.html#285

このブックを見る