特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版258第1章国際的な知的財産制度の動向(1)我が国との関係 日本国特許庁(JPO)とKIPOとは、1983年に第1回日韓特許庁長官会合を開催して以降、特許、意匠、商標、審判、機械化に関する各種専門家会合や、人材育成機関間の会合等を開催し、二国間の課題について意見交換を行っている。また、特許・商標審査についての国際審査官協議も行っている。(2)近年の知的財産政策の動向 韓国政府は、2016年末に策定された第2次知識財産基本計画(2017-2021)に基づき「第4次産業革命を先導するIP国家競争力確保」を目指した取組を行うとしている。また、2018年5月には、「2018年度国家知識財産施行計画」を公表し、2018年に韓国政府が推進する6大重点施策(下記参照)が示された。・知識財産基本法と国家知識財産基本計画 2011年7月の「知識財産基本法」の施行に伴い、政策の立案・推進のために「国家知識財産委員会」が設置された。国家知識財産委員会は、2011年から5年ごとに政府の知的財産分野の最上位計画である「国家知識財産基本計画」を策定し、2018年は知的財産関連の政策は2016年末に策定された「第2次知識財産基本計画(2017-2021)」に基づき実行されている。5.韓国における動向 また、国家知識財産委員会により毎年策定される「国家知識財産施行計画」には、その年の韓国政府の知財政策方針が示されており、2018年は6大重点政策として、(ⅰ)IPを基盤にした良質な雇用創出への寄与、(ⅱ)第4次産業革命への対応および新産業の創出に向けた強力なIPの確保、(ⅲ)起業と中小・ベンチャー企業の成長に必要なIP競争力の強化および公正な秩序の確立、(ⅳ)デジタル環境に対応した著作権エコシステムの基盤構築、(ⅴ)グローバルなIP対応力の強化、(ⅵ)IP尊重文化の拡散および基盤構築、が掲げられている。(3)KIPOの取組 KIPOは、特許、実用新案、意匠、商標、半導体集積回路、及び営業秘密を所管する、産業通商資源部の外局である。①2019年に新たに変わる知的財産制度・支援施策 2019年1月、KIPOは、社会的弱者への支援と国民の利便性向上、中小・ベンチャー企業のイノベーション成長支援、技術奪取の根絶に伴う公正な経済の実現を骨子とする2019年新たに変わる知的財産制度・支援施策を発表した。詳細は脚注2を参照。 韓国では、2011年の知識財産1基本法の施行を受けて、国家知識財産委員会が設立され、知識財産強国及び豊かな未来の実現のため、知識財産の創出・保護・活用の好循環を政策目標に掲げて、様々な取組を積極的に推進している。2018年度は、国際裁判部の運用開始、故意侵害に対する懲罰的損害賠償を規定した特許法等一部改正の公布など、韓国の知的財産制度は多くの変化があった1年であった。 本節では、我が国との関係に加え、韓国における近年の知的財産政策の動向及び韓国特許庁(KIPO)の各種取組について紹介する。1 韓国では、2011 年7 月の「知識財産基本法施行令」の制定に合わせ、文学・芸術・デザイン・発明・特許等、全ての知的活動により創出される無形財産に関する法律用語を「知識財産」に統一している。ここでは、固有名詞及び韓国政府による発表を引用した箇所について、「知識財産」の語を使用している。2 https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2019/190102.html2

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