国際的な動向と特許庁の取組第3部第1章特許行政年次報告書2019年版261 他人の特許権や営業秘密を故意に侵害した場合に、損害額の最大3倍まで賠償責任を負わせる「懲罰的損害賠償制度」を導入する「特許法」および「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」(以下、「不正競争防止法」)の各改正法案が2018年12月7日、韓国国会の本会議で可決成立し、2019年1月8日に公布された。各改正法は公布6カ月後の2019年7月9日に施行され、法施行後に発生した違反行為から適用される。 韓国では、特許権および営業秘密の侵害行為は、創造的なアイデアと技術力を備えた中小・ベンチャー企業に深刻な弊害をもたらす行為であるとされている。しかしながら、侵害訴訟において認められる損害賠償額が他国と比較して低いため、知的財産について正当な価格を支払うよりも、侵害して利益を上げ、いざ侵害が摘発されれば賠償額を支払う方が良いとの認識が広がっている。この歪んだ市場秩序を正して知財保護を強化するため、故意による特許権や営業秘密の侵害行為に対して「懲罰的損害賠償制度」が導入されることとなった。 ここで、裁判所が賠償額を判断するにあたっては、侵害者の優越的地位の有無、故意または損害発生の恐れを認識した程度、侵害行為による被害の規模、侵害者が得た経済的利益、侵害行為の期間および回数、侵害行為による罰金、侵害者の財産状態、被害救済努力の程度などが考慮される。 今回の改正により、特許権者や営業秘密保有者の権利が強化されるとともに、中小・ベンチャー企業に対する技術奪取行為の防止に大きく貢献するものと期待されている。韓国における懲罰的損害賠償制度の導入について日本貿易振興機構 ソウル事務所Column 21<韓国大法院(ソウル)>
元のページ ../index.html#291