特許行政年次報告書2019年版262第1章国際的な知的財産制度の動向(1)我が国との関係 我が国と台湾は経済的な関係が強く、日本から台湾への特許出願件数についても、2018年には日本から海外への出願では五庁に次ぐ規模となっている。また、台湾における国籍別出願件数を見ると、外国籍では、日本からの出願が最も多い。このような状況下、2012年4月には、(公財)交流協会(現:日本台湾交流協会)と亜東関係協会(現:台湾日本関係協会)との間で、各種民間覚書が署名され、日台間の協力が行われている。最近では、2018年11月30日より特許審査書類(ドシエ情報)の電子的交換の協力がそれぞれ開始されている2。(2)両岸関係 2010年に発効した「海峡両岸知的財産権保護協力協議」において専利・商標の優先権の相互承認、知的財産諸問題の協議処理メカニズムの構築、業務交流等を行っている。 2018年12月には、第11回両岸専利フォーラムが台北で開催され、TIPOの洪局長、国家知識産権局専利局の徐聰副局長をはじめ、両岸の産学官各界から多数が出席する中、(ⅰ)AIの展望と対策、(ⅱ)新興テクノロジーに対する審査実務や国際訴訟戦略、(ⅲ)スマート時代における特許代理業務などについて意見交換が行われた。(3)近年の知的財産政策の動向 台湾では、2002年のWTO加盟及び「知的財産権の保護貫徹行動計画」策定、2004年11月の保護智慧財産権警察大隊(2014年1月に6.台湾における動向刑事警察大隊に組織変更)の発足、2008年7月の智慧財産法院の設立等、知的財産の保護が着実に強化されている。以下、主要な知的財産政策について紹介する。①知的財産権の保護貫徹行動計画 台湾行政院は、知的財産権の保護政策の実施を目的として、2002年より「知的財産権の保護貫徹行動計画」を3年ごとに策定している。現在は、2018年に策定された「知的財産権の保護貫徹行動計画(2018-2020)」に基づき、企業の研究開発イノベーション力の向上、国内環境と国際規範に適合した知的財産権法制度の確立、有効な模倣品・海賊版の取り締り、及び営業秘密保護体制の強化、水際措置の実施等を目標に掲げ、具体的な取組を計画、実施している。②国家知的財産戦略綱領 2012年10月、台湾行政院において「国家知的財産戦略綱領」が策定された。同綱領では、知的財産権の保護と流通を実施するとともに、国家知財能力を整合して産業競争力を向上させる6大戦略として、(ⅰ)高付加価値化された専利の運用創造、(ⅱ)文化コンテンツ利用の強化、(ⅲ)卓越した農業価値の創造、(ⅳ)学界における知的財産流通の活性化、(v)知的財産権の流通及び保護体制の実施、(ⅵ)質、量共に充分な知的財産実務人材の育成、を打ち出している。 台湾では、喫緊の課題とされていた一次審査未着手件数の削減を進める一方で、発明専利1加速審査作業方案(AEP)や、内外ユーザーの要望を反映した専利法及び商標法の大規模改正、我が国や米国、韓国との間で特許審査ハイウェイ(PPH)を実施するなど、知的財産制度の利便性向上にも注力している。 本節では、我が国との関係に加え、台湾における近年の知的財産政策の動向及び台湾智慧財産局(TIPO)の取組について紹介する。1 我が国における「特許・実用新案・意匠」に相当2 日本国特許庁としては、日本台湾交流協会に対して我が国国内法令の範囲内でできるかぎりの支持と協力を与えるとの立場から日台PPH 試行プログラム、日台特許等優先権書類電子的交換及び特許手続上の微生物寄託分野における相互承認を実施。
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