国際的な動向と特許庁の取組第3部第1章特許行政年次報告書2019年版265(1)我が国との関係①ASEAN全体との関係 日本国特許庁(JPO)は、ASEAN知的財産協力作業部会(AWGIPC)を通じ、ASEANとの知的財産分野における協力の在り方を議論してきた。2012年以降は毎年、ASEAN諸国の知財庁と日ASEAN特許庁長官会合を開催し、日ASEAN間の知財協力について議論している。②各国との関係 JPOは、ASEAN各国との間の協力覚書に基づき、各国の知財庁職員等を対象とした招へい研修や、専門家派遣等を通じて、各国の状況に応じた協力を実施している。また、様々な場面でASEAN各国との知的財産庁トップ同士の対話等を継続している。a. ブルネイ JPOは、ブルネイ知的財産庁(BruIPO)との間で、日本の審査結果を活用して迅速な権利付与を可能とする「特許審査ハイウェイ・プラス(PPHプラス)」を実施している。b. カンボジア JPOは、カンボジア工業手工芸省(MIH)との間で、日本の審査結果を活用して迅速な権利付与を可能とする「特許の付与円滑化に関する協力(CPG)」を実施している。c. インドネシア JPOは、2018年10月、インドネシアのメダンにおいて、インドネシア知的財産総局(DGIP)及び独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)との共催により日インドネシア知財フォーラムを開催7.ASEANにおける動向し、両国の知財庁、弁理士団体及び企業等から知財制度や知財活動についての経験を紹介した。 また、独立行政法人国際協力機構(JICA)「ビジネス環境改善のための知的財産権保護・法的整合性向上プロジェクト」が実施されており、JICA専門家として、JPOから職員1名が駐在し、インドネシアの状況や需要に応じた支援を継続している。d. ラオス JPOは、ラオス科学技術省知的財産局(DIP)との間で、日本の審査結果を活用して迅速な権利付与を可能とする「特許の付与円滑化に関する協力(CPG)」を実施している。e. マレーシア JPOは、2018年7月、マレーシアのクアラルンプールにおいて、マレーシア知的財産公社(MyIPO)と日マレーシア知的財産商業化フォーラムを共催し、知財の商業化に関する知見・経験を共有した。また、同フォーラムにおいて、JPOとMyIPOは特許・商標関連のデータ交換に関する覚書に合意した。f. ミャンマー JPOは、知的財産庁設立、業務フロー確立、人材育成、知的財産の普及啓発支援のために、JICA専門家として駐在員1名を派遣し、ミャンマーの状況や需要に応じた支援を継続している。g. フィリピン 2018年7月、フィリピン知的財産庁(IPOPHL)のラルセス副長官がJPOを訪問し、特許審査基準及び国際調査機関(ISA)業務等について意見交換を行った。また同月、JETROが東京においてフィリピン知的財産フォーラムを開催し、ラルセス副長官ほかIPOPHL職員から同国の知財制度に関する講演を行った。 ASEAN地域における知的財産制度の整備状況は、初期段階から先進的な段階まで、国によって様々である。各国は投資環境を整備するため、審査の迅速化や模倣品対策等の取組を積極的に行っている。 本節では、我が国との関係に加え、ASEAN地域における近年の知的財産政策の動向、各国の取組を紹介する。
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