国際的な動向と特許庁の取組第3部第1章特許行政年次報告書2019年版269 このたびミャンマー政府の熱意が実り2019年1月30日に商標法と意匠法が成立し、続いて3月11日に特許法が成立した。これにより、商標・意匠・特許の登録を定める法律がミャンマーで初めて制定されたこととなる。また、改正著作権法も5月24日に成立した。 これら各法の施行日は、知的財産庁の設立準備に合わせて今後定めるとの方針であるため、現段階では確定していない。今後は知的財産に関する所管が教育省から商業省に移り、そこからの知的財産庁設立との段階を経る予定であるが、円滑な知的財産庁設立と法律施行が求められる。各法の施行規則については教育省にて現在検討中であり、国際的に遜色のない制度にするとともに、初めて出願や審査を行うミャンマー側にとっても適切に機能する制度とすることが期待されている。 多くのミャンマー国民にとって知的財産制度はなじみがないため、制度導入にあたっての普及啓発が重要であることはミャンマー政府もよく理解しており、商標法・意匠法の成立日の夜半に国営放送で「商標法・意匠法成立」との速報テロップが流れたことからも、知的財産制度に対する政府の意気込みがうかがわれる。また、模倣品・海賊版が氾濫するミャンマーにおいて、侵害者から知的財産権をいかに守るかは制度の根幹に関わる重要事項であり、今後は税関・警察・裁判所等の関係省庁との連携を密に行うことが欠かせない。 ミャンマーでも他のASEAN諸国同様、知的財産制度を整備することにより、外国からの投資が増え、国内の雇用につながり、将来的に同国の競争力強化にもつながることが期待される。ミャンマーの未来を担う制度の創設、そして知的財産による持続的な社会・経済の発展が達成されるよう、引き続き同国での知的財産行政の強化を支援していく。ミャンマーにおける知的財産に関する法律の成立JICA専門家(ミャンマー教育省 知的財産行政アドバイザー) ミャンマーでは、長らく続いた軍政から民主化を果たし、近年はさらなる経済発展のための投資環境整備の一環として、知的財産に関する法律(商標法・意匠法・特許法・著作権法)の制定、その登録実務を担う知的財産庁の設立に向けて準備が進められている。こうしたミャンマー政府の動きを受けて、日本国特許庁と国際協力機構(JICA)とは協力して、2015年3月から「知的財産行政専門家」をミャンマー教育省へ派遣して当地の知的財産行政の強化を後押ししている。Column 25
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