特許行政年次報告書 2019年版
300/356

特許行政年次報告書2019年版270第1章国際的な知的財産制度の動向(1)我が国との関係 インドは、BRICsの一角として、近年、急速に経済成長しており、我が国からの企業進出も拡大している。2011年8月には、両国間の経済関係強化のために、日インド包括的経済連携協定(JICEPA)が締結された。また、両国はともに、2012年11月に交渉が立ち上げられた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)にも参加している。 知的財産分野においても、インド特許意匠商標総局における審査官増員等の取組を支援するため、日本国特許庁(JPO)は様々な協力を行っている。2015年6月には、JPOとインド商工省産業政策・振興局(DIPP)との間で産業財産分野における協力覚書を締結した。2016年度には、研修講師として特許審査官をのべ12名派遣し、同年に大量採用された約460名のうちほぼ全ての新人審査官に対して基礎的な特許審査実務に関する指導を行うとともに、2017年度には、特許審査官をのべ5名派遣し、2年目を迎えた新人審査官に対してフォローアップ研修を行った。また、2018年8月にはDIPPとの間で、協力関係の維持・強化を目的に第2回日印知的財産評価会合を東京で開催し、特許審査ハイウェイ(PPH)導入等に関する議論を行い、その後の調整を経て同年9月に共同声明を採択した。共同声明では、2019年度第一四半期に日印PPHの試行を開始することで大筋合意し、また、ITや普及啓発の分野について協力を拡大することについても合意した。1同年10月には日印首脳声明において2019年度第一四半期に日印PPHの試行を開始することで一致した。2 2019年1月には、インドの現地校に通う日本人小中学生及びインド人学生約50名が参加したフォローアップセミナー「知的財産の普及啓発と青少年の知財教育と創造性教育成」を開催した。(2)近年の知的財産政策の動向 インド政府は、2014年9月、インドにおける製造業を振興する“Make in India”イニシアチブを打ち出し、知的財産権の保護を含む投資環境整備を推進してきた。2015年8月には、“Start-up India”構想を公表し、2016年5月に導入された早期審査制度の対象にスタートアップ企業を含めるなど、スタートアップ企業に対する知財面での支援も行っている。また、2016年5月に発表された国家知的財産権政策では、特許・意匠・商標の登録及び異議申立ての処理期限の設定と厳守、知的財産権推進管理部(CIPAM)の創設、商事裁判所を通じた知財紛争の解決等、知的財産の創造を奨励し、その活用を推奨するための知的財産制度整備の方針が示されている。 2019年3月には、インド政府がニース、ウィーン及びロカルノ協定へのインド加盟の提案を承認しており、インドにおける意匠及び商標出願には世界的に採用されている分類が付与されることとなる。8.インドにおける動向 本節では、我が国との関係に加え、インドにおける近年の知的財産政策の動向及びインド特許意匠商標総局の各種取組について紹介する。1 日印でPPHの実施に大筋合意しました: https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180920002/20180920002.html2 日印特許審査ハイウェイ、首脳会談において来年度第一四半期開始で一致: https://www.meti.go.jp/press/2018/10/20181030007/20181030007.html12

元のページ  ../index.html#300

このブックを見る