特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版272 インドではEコマースの市場規模が急激に拡大しており、それに伴いインドにおいてもEコマース・サイトにおける模倣品被害が年々増加している。事例としては、Eコマース・サイトの製品紹介のページに真正品のカタログが無断転用されており、実際に注文したところ届いた品物が模倣品であったというケースが散見される。LocalCircles社の調査(2018年)によれば、過去6ヵ月間にインドのEコマース・サイトで商品を注文した利用者の19%が模倣品被害にあったという状況である。 模倣品を放置しておくと、真正品の売上が減少するだけではなく、質の悪い模倣品が真正品と間違えられることで、自社ブランドイメージの低下、取引先とのトラブル、消費者からのクレーム発生等、様々な不利益を被ることになる。企業にあっては、このようなEコマース・サイト上の模倣品についても対策を講じる必要性が高まっている。 これら対策を行うにあたり、自社製品について知的財産権、特に、商標権をインドでもしっかりと取得することが前提となる。一方で、インド知財庁が毎年接受する商標出願件数は27~28万件に上るが、95%以上がインド国内の企業等からの出願であり、全体に対して日系企業からの出願は極わずかに過ぎない。近年、インドは知的財産制度に関する改革を行っており、商標権であれば出願から登録まで約7~12ヵ月で権利化できる環境が整ってきたところ、必要な商標権を確実に取得することが求められる。 また、最近、Eコマース・サイト上の模倣品問題に関する重要な判決1が、デリー高裁から出された。Eコマース・サイト上の模倣品に関するサイト運営者の責任範囲に関するものである。そして、インドEコマース・ポリシーの度重なる改定検討がなされる中、本判決も考慮されたと思われる模倣品対策措置条項を含む当該ポリシー改定案2について、パブリックコメントの募集がなされた(2019年3月)。 引き続き、模倣品対策にあたり、インドにおけるEコマース上の模倣品被害実態や、インドにおけるEコマース・ポリシー等の改定の動き等に注目していく必要があるが、上記のとおり、模倣品対策の前提となる商標権等の知的財産権を確実に取得することが第一である。インドにおけるEコマース上の 模倣品問題と商標権等の取得日本貿易振興機構 ニューデリー事務所Column 261 Christian Louboutin(仏) vs. Nakul Bajaj(印)に関するデリー高裁判決(2018年11月2日)2 https://dipp.gov.in/whats-new/draft-national-e-commerce-policy-stakeholder-comments2

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