特許行政年次報告書 2019年版
306/356

特許行政年次報告書2019年版276● Cláudio Vilar Furtado(クラウジオ・ヴィラール・フルタード)ブラジル産業財産庁長官 ブラジル産業財産庁(INPI)は特許・商標分野で日本国特許庁(JPO)から多くを学んでおり、今後もJPOの経験を参考にしていきたいと考えている。今後3年でINPIが世界有数の特許庁に仲間入りできるよう、INPI長官として全力で取り組むつもりである。 例えば、2019年末までにマドリッド協定議定書に加盟し、国際出願を受理できるよう、INPIは必要な準備を進めていると共に、4年以内にハーグ協定への加盟を果たすための戦略的検討も行っている。 今後のINPIの運営方針は大枠では前政権時に公表されたINPI戦略計画2018-2021に沿ったもので、取組みを加速化させている。INPIの上級官庁である経済省が政府のデジタル化に取り組んでいることもあり、INPIが特に力を入れているのが業務処理の全面的なデジタル化である。 特許のバックログ解消もINPIにとって重要な課題である。実体審査を行うことなく特許権を付与することはブラジルにとって望ましいものではないと考えており、2021年までにこの問題を解決することができる新しい措置の導入について検討している。また、ブラジルの大学や研究機関と外国企業などによる共同研究を促進し、ブラジルに共同で特許出願することを奨励するためにINPIとして何ができるかについても検討を行っている。● Juan Lozano Tovar(フアン・ロサーノ・トバール)メキシコ産業財産庁長官 メキシコ産業財産庁(IMPI)にとっての優先事項は、(ⅰ)エンフォースメントの強化、(ⅱ)行政サービスの質の向上、(ⅲ)イノベーションの促進、の3つである。 (ⅰ)について、IMPIは模倣品を取り締る権限を有しているが、IMPIが違反者に科すことができる罰金の額が低いため、現行制度は違反行為に対する十分な抑止力とはなっていない。そこで、法律の改正による権利侵害行為の厳罰化を予定しており、2019年末までに改正法を施行することを目指している。 (ⅱ)について、IMPIをもっとユーザーフレンドリーな機関とするため、ユーザー目線から業務内容を見直し、各種手続の簡素化を進めている。例えば、現在はIMPIから出願人への通知は全て郵送で行われているが、郵送には時間がかかるため、IMPIから出願人への通知を電子的に行うことを可能とする法改正を行うことを予定している。また、IMPIはユーザーにメリットをもたらす国際的な枠組みへの参加も推進しており、2019年中にハーグ協定への加盟を果たしたいと考えている。 (ⅲ)について、IMPIの行政サービスを迅速化し、メキシコ国内における技術開発やイノベーションの促進を目指している。また、メキシコにはテキーラ以外にも優れた民芸品、織物や食品などがあり、これらの特産品を知的財産権で適切に保護することによって、競争力を持たせ、地域経済の発展につなげたいと思っている。 最後に、メキシコが知的財産を尊重する国として国際的に認識され、知的財産がメキシコの発展の動力源となるようIMPI長官として全力で取り組むつもりである。日本は知的財産制度を国の発展に上手く活用している国なので、日本とは緊密な協力関係を構築していきたいと考えている。ブラジルとメキシコの産業財産庁長官への インタビュー日本貿易振興機構 サンパウロ事務所 中南米地域の大国であるブラジルとメキシコでは2018年に大統領選挙が実施され、新大統領の就任に伴い、産業財産庁の長官も交代している。そこで、両国の新長官に知的財産政策の今後の方向性や産業財産庁の運営方針などについてインタビューを行った。Column 27

元のページ  ../index.html#306

このブックを見る