特許行政年次報告書 2019年版
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国際的な動向と特許庁の取組第3部第1章特許行政年次報告書2019年版277(1)中東 中東地域はアジアと欧州をつなぐ貿易の中継点として重要な役割を果たしていると同時に、模倣品の流通経路となっているとの指摘もなされている。日本国特許庁は日本貿易振興機構(JETRO)ドバイ事務所に知財専門家を派遣しており、2016年2月には、模倣品対策に取り組む中東知的財産研究会(中東IPG)1が発足している。 湾岸諸国(バーレーン、オマーン、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール)においては、1998年より広域特許庁としての湾岸協力会議(GCC)特許庁が設けられている。2019年3月現在、GCC加盟国における商標制度の統一をはかる統一GCC商標法がクウェート、バーレーン、サウジアラビア、オマーンにおいて施行されている。サウジアラビアでは、組織再編により、特許、商標と著作権の3つの制度を所管するサウジアラビア知的財産総局(SAIP)が新たに設立された。 イスラエルでは2018年8月に改正意匠法が発効し、保護対象の拡大、存続期間が15年から25年に延長された他、意匠の国際登録に関するハーグ協定への加盟が可能となった。 各国知財庁との関係においては、2018年9月のWIPO加盟国総会時にSAIPと今後の両庁の協力に関してバイ会談を行った。さらに、12月には湾岸協力会議特許庁(GCC-PO)を訪問し、今後の両庁の協力に関してバイ会談を行うと共に、審査の迅速化や統計データ、法令等に関する情報共有、人材育成等を主とした協力覚書への署名を行った。(2)アフリカ アフリカには、主に英語圏の国々が加盟しているアフリカ広域知的財産機関(ARIPO)2、主にフランス語圏の国々が加盟しているアフリカ知的財産機関(OAPI)3という二つの広域特許庁が存在する。我が国は、WIPOに対して任意拠出金を支出しており、この拠出金を基に「WIPOジャパン・トラスト・ファンド」が組まれ、これらの広域特許庁を始めアフリカ諸国の知的財産庁の能力向上を支援している(第3部第2章3.(1)(2)参照)。 2018年9月、ジュネーブで開催された第58回世界知的所有権機関(WIPO)加盟国総会のサイドイベントとして、アフリカファンド10周年記念イベントを開催した(コラム30参照)。2018年11月にナミビアで開催されたARIPO執行評議会では、マラウイ法務大臣、ナミビア工商業・中小企業開発庁長官、ドス・サントスARIPO長官、ARIPO加盟国各国の長官級等の出席を得て、ナミビア政府及びARIPO協力の下、WIPOとパネルディスカッションを共催し、ファンドを通じて、アフリカの中小企業支援を進めていくこと、アフリカの知財環境の強化に取り組んでいくことを提言した。翌12月にセネガルで開催されたOAPI執行評議会では、開会式において、ファンドを通じたこれまでの協力とアフリカにおけるイノベーションの重要性について、嶋野特許技監からスピーチを行った。 各国知財庁との関係においては、南アフリカと2018年9月にバイ会談を行い、両庁の知財制度・運用に関する情報共有、人材育成等を主とした協力覚書への署名を行った。また、特許庁が提供する研修について、最高レベルの研修であるとの高い評価を得た。モロッコとは、2018年12月にバイ会談を行い、両国の知的財産推進計画や中小企業支援に関する情報共有の協力を確認した。エジプトとは、2019年2月にバイ会談を行い、その結果を受け、エジプト特許庁に特許審査官を派遣して、審査実務や最新の情報関連技術に関する審査基準について意見交換を行った。11中東諸国、アフリカにおける動向1 2019年3月現在、メンバー企業は全28社。主な活動内容は、2~3か月に1回の定期会合、中東政府機関等向けの知財セミナーや意見交換の実施、他の知財団体との連携・協力、知財啓発活動など、多岐にわたる。2 アフリカ広域知的財産機関(ARIPO):加盟国(19ヶ国)は、ボツワナ、ガンビア、ガーナ、ケニア、レソト、リベリア、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、ルワンダ、サントメ・プリンシペ、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、スワジランド、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ。3 アフリカ知的財産機関(OAPI):加盟国(17ヶ国)は、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コンゴ、コートジボワール、赤道ギニア、ガボン、ギニア、ギニアビサウ、マリ、モーリタニア、ニジェール、セネガル、トーゴ、コモロ。

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