特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版280第2章グローバルな知的財産環境の整備に向けてを連携させることにより仮想的な共通システムを構築し、各国特許庁が保有する特許出願の手続や審査に関連する情報(ドシエ情報)の共有やITを活用した新たなサービスの実現を目指す構想である。 ドシエ情報の共有について、JPOは、五庁の複数庁に出願された同一発明のドシエ情報を一括取得し、見やすい形式で提供するITサービスである「ワン・ポータル・ドシエ(OPD)」を推進し、五庁で主導的な役割を担っている。また、ITを活用したグローバル・ドシエの新たなサービスの実現を目指し、五庁は優先五項目に取り組んでいる。2018年6月に開催された五庁長官会合では、優先五項目に関する今後2-3年間の新たな作業方針及び作業計画について合意がなされた。 また、2019年1月に開催された本作業部会の会合において、JPOは、ユーザーのドシエ情報へのアクセス性を向上するため、OPDのAPIを公開する試行プロジェクトを五庁に提案し、今後本プロジェクトをリード庁として主導することへの賛同を得た。加えて、JPOは、ユーザーニーズを踏まえたグローバル・ドシエのサービス改善について、各庁での取組の進捗を取りまとめ、ユーザーへ提供している。c. 作業部会3:審査関連(ⅰ)五庁による特許審査ハイウェイ 五庁間での特許審査ハイウェイ(IP5 PPH)の試行を開始するとともに、PPHの更なる改善を目指す取組である。2014年1月の試行プログラム開始により、これまでPPHを実施していなかった欧中、欧韓の間でもPPHが開始され、通常型PPH、PPH MOTTAINAI、PCT-PPHを含む全てのPPHの枠組みが五庁間で相互に利用可能となった。また、更なるユーザーの利便性向上に向けて、PPHによる審査待ち期間短縮等の効果を客観的に把握可能となるようにPPH統計情報の公開を提案するとともに、統計情報を公開する際に統一的な指標を設定すべく議論をリードしている。(ⅱ)PCT協働調査試行プログラムグループ会合 PCT協働調査は、PCT国際出願における質の高い成果物を作成することを目的として、複数の特許庁が協働して、一つの国際調査報告を作成する取組であり、2018年7月1日より五庁による試行プログラムを開始した。 PCT協働調査試行プログラムグループ会合においては、試行期間中、運用状況の確認及び各庁が協働したことによる効果の評価を行うとともに、本格実施に向けた枠組みの改善に関する議論を継続的に行っている。d. 特許制度調和専門家パネル(PHEP) 2014年6月に開催された第7回五庁長官会合において、特許制度調和に向け、ユーザーから要望が出ていた調和の議論を進める項目について五庁間で検討され、(ⅰ)記載要件、(ⅱ)出願人による先行技術の開示義務、(ⅲ)発明の単一性の三項目を、優先的に議論を進める項目とすることに合意した。特に、JPOが議論をリードしている記載要件については、サポート要件及び明確性要件に着目した事例研究を進めている。これら三項目は、2019年6月五庁長官会合でのプロジェクト完了が予定されており、それに向けて最終報告書の確認を行うとともに、新たに取り組むトピックを検討している。③ユーザーとの会合 五庁は、日本知的財産協会(JIPA)、米国知的財産権法協会(AIPLA)、米国知的財産権者協会(IPO)、ビジネスヨーロッパ(BusinessEurope)、韓国知的財産権協会(KINPA)、中国専利保護協会(PPAC)の五庁ユーザーとハイレベル及び実務者レベルでの会合を開催し、意見交換を行っている。 2018年6月の五庁長官・ユーザー会合では、五庁の進化と品質について、ハイレベルでの意見交換を行った。 また、2019年1月には、第6回グローバル・ドシエ・タスクフォース(GDTF)会合及び第3回イ

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