国際的な動向と特許庁の取組第3部特許行政年次報告書2019年版287第2章②特許a. PCT関連会合 PCTは、一つの国際出願により、1521の締約国全てに出願した効果を与える条約であり、1970年に採択された。近年、世界的に出願件数が増加しており、グローバルな特許取得のための手段として今後も発展することが期待されている。 PCT制度の改善については、我が国、欧米等の主要締約国が中心となり、2001年からPCTリフォームの議題が議論され、複数の規則改正が実現されるに至った。現在も引き続き、PCT国際機関会合(PCT-MIA)、PCT作業部会、PCT同盟総会等において、PCT制度の更なる発展について検討が行われている。(ⅰ)PCT作業部会 PCT作業部会は、PCT同盟総会に向けた締約国間における協議の場と位置づけられている。 2018年6月にジュネーブで開催された第11回会合では、ePCTをはじめとするITサービスの改善に関する議題、官庁間における手数料取引の効率化や新たな減額措置など手数料関係の議題、国際予備審査機関の審査官と出願人との対話期間の拡充を目的としたPCT規則改正案等の議題について議論が行われた。 なお、以上の議題のうち、作業部会が議決したPCT規則改正案については、2018年9月~10月に開催されたPCT同盟総会で承認された。(ⅱ)PCT-MIA PCT-MIAは、国際機関(ISA・IPEA)として任命されている知財庁の会合であるとともに、PCT作業部会に向けた実務者間の協議の場としても位置づけられている。 2019年2月、エジプト・カイロにおいて開催された第26回会合では、JPOから、JPOの特許審査の質の維持・向上のための取組やユーザー評価調査結果等を紹介した。また、かねてより我が国から提案していた国際段階と国内段階の連携のためのPCT国際調査・予備審査ガイドラインの更なる改訂案について議論の結果、事務局はガイドラインの改訂に向けた各国への意見照会手続に入ることとなった。そのほか、品質管理システムに関する同ガイドライン21章の強化や、国際調査報告書及び見解書の改善等についても議論が行われた。b. WIPO特許法常設委員会(SCP) SCPは、2000年11月の第4回会合以降、実体特許法条約作成に向けて議論を続けていた。2005年6月の第11回会合以降、南北対立により3年間、会合を開催することができなかったが、その後の調整の結果、2008年6月に第12回会合が開催され、2011年5月の第16回会合以降、(ⅰ)特許権の例外と制限、(ⅱ)特許の質(異議制度を含む)、(ⅲ)特許と健康、(ⅳ)依頼者と代理人の間の秘匿、(ⅴ)技術移転の5項目について、各国のコメントや事務局による予備研究に基づき、議論が続けられてきた。 2018年12月の第29回会合では、これら5項目に関し意見交換がなされ、我が国からは、(ⅱ)の項目に関する議論において、審査の品質向上のための我が国の取組についてプレゼンテーションを行った。また、将来の作業として、第29回会合のワークプログラムをベースにしたプログラムが合意され、第30回会合で引き続き議論が行われることとなった。1 2019年3月現在
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