特許行政年次報告書2019年版288第2章グローバルな知的財産環境の整備に向けて③意匠a. 商標・意匠・地理的表示の法律に関する常設委員会(SCT) SCTは、WIPO加盟国及びオブザーバーが意匠、商標及び地理的表示の法律に関する議論を行うための常設委員会である。 意匠分野では、現在、第35回会合(2016年4月)における我が国と米国、イスラエルの共同提案を起点とした、グラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)等の新しい意匠の保護に関する検討や、優先権書類の電子的交換のためのWIPOデジタル・アクセス・サービス(DAS)への参加に関する情報共有が行われているほか、第40回会合(2018年11月)からは、国際博覧会に出品された意匠の仮保護の実務に関する各国調査を開始することが議論されている。 第24回会合(2010年)以降、意匠の手続調和を目的とする意匠法条約の制定に向けた検討が行われており、各国専門家による累次の議論を経て、調和の対象となる実質的な手続内容については、既に一定の方向性が打ち出されている。一方で、(ⅰ)途上国の条約履行を促進するための技術支援に関する規定、及び(ⅱ)伝統的文化表現等の出所開示に関する規定の位置付けについて、南北間の懸隔が残っている状況にある。これら論点については、議論の場をWIPO一般総会に移しての検討が引き続き行われているが、いまだ対立は解消しておらず、早期の外交会議開催を目指し、2019年の一般総会において引き続き検討を行うこととなっている。b. ハーグ制度の法的発展に関する作業部会 ハーグ協定は意匠の国際登録制度に関する条約である。幾度かの改正の後、実体審査国等の参加による地理的な拡大を目指して、1999年にジュネーブ改正協定が採択された。同協定は、2015年5月13日に、我が国について発効し、特許庁は意匠の国際登録出願の受付を開始した。 2019年3月現在のジュネーブ改正協定には、米国、カナダ、欧州連合(EU)、英国、フランス、ドイツ、スペイン、スイス、トルコ、韓国、シンガポール、カンボジア、ロシア等の60の締約国がある。 ハーグ制度の法的発展のための作業部会は、ハーグ同盟総会によって2011年に設立された。同作業部会では、ハーグ協定締約国及びオブザーバー(未加盟国及び各国ユーザー団体)が一同に会し、ハーグ制度の改善のために必要な共通規則及び実施細則の改正に係る議論が行われている。2018年7月の第7回会合では、代理人選任の手続緩和に関する共通規則改正提案、拒絶の通報の公表に関する運用変更、国際登録簿におけるデータ構造の刷新に関するプロジェクト、優先権書類の取扱い及び優先権主張手続の適法性等について議論が行われた。 なお、上記作業部会で決議した共通規則の改正提案は、2018年9~10月に開催されたハーグ同盟総会で承認され、2019年1月1日から適用されている。c. ロカルノ同盟専門家委員会 ロカルノ協定は、意匠の国際分類を制定する条約であり、1968年に成立し、1971年に発効した。同協定により定められるロカルノ国際意匠分類(ロカルノ分類)の最新版は2019年1月に発効した第12版であり、32のクラスと237のサブクラスから構成される。 2019年3月現在のロカルノ協定には、英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国、韓国等の56の締約国があり、我が国では2014年9月24日に発効した。 2017年11月に開催されたロカルノ同盟第13回専門家委員会会合(我が国は締約国として正式参加)では、締約国から提出されたサブクラスの追加提案や、VRヘッドセットのような新規物品を製品リストに追加する提案等について議論され、これらの議論の結果が最新の第12版において、反映されている。
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