国際的な動向と特許庁の取組第3部特許行政年次報告書2019年版299第2章 企業の経済活動のグローバル化の進展に伴い、海外において予見性を持って円滑に権利を取得し得ることが求められている。そのためには、その国の審査官が、十分な審査実務能力を有し、適切な判断ができる能力を備えていることが重要である。特に、インド・ASEAN等の新興国は我が国企業の事業展開が大いに見込まれることから、これらの国における審査体制の整備・強化への協力に対するニーズが寄せられている。このような中、特許庁では、特許審査の実務経験が豊富な審査官から構成される国際研修指導教官を中心として、インド・ASEANをはじめとする新興国審査官に対する特許審査実務面での協力を行っている。国際研修指導教官は、新興国に対する支援を行い、特許庁が採用するグローバルスタンダードの審査手法等を伝えていくことを目的として、2012年4 月から活動を行っている。加えて、2018年度には、さらなる活動拡大のため、従来の約2倍となる29名まで人員を増加させ体制強化を行った。 国際研修指導教官の主な業務として、新興国審査官に対する審査実務指導が挙げられる。審査実務指導では、国際研修指導教官が新興国に赴いたり、新興国審査官を日本に招へいしたりすることで、直接顔を合わせての研修を実施している。このように直接交流することを通じて、指導効果を高めるとともに、深い信頼関係を構築している。2018年度は、インド・ASEAN諸国を中心とした計25の国と地域の新興国審査官のべ293名に対し審査実務指導を行った。4.国際研修指導教官について 特に、新興国向け研修テキストを活用した講義とケーススタディによる演習とを組み合わせた研修カリキュラムにより、新興国審査官の実務能力向上と我が庁審査実務のさらなる普及を図った。タイでは新人22名に、インドネシアでは新人9名を含む14名に、ケーススタディを用いて特許審査実務の基礎について網羅的な指導を行った。また、タイ、ベトナムの新人審査官(タイ20名、ベトナム29名)に対するフォローアップ研修を実施した。さらに、ベトナムに対しては、トレーナーチーム(審査官10名と事務官5名から構成)メンバー計15名を対象に、指導審査官向け研修も行った。ブラジルでは、要望に応じて特定技術分野(バイオ、AI・IoT)の審査実務指導を計57名の審査官に対して初めて実施した。フィリピンでは、機械分野における特定技術分野別研修を15名に実施するとともに、37名の審査官に対してISA能力向上研修を実施した。マレーシアでは、13名の若手審査官(経験年数10年未満)及び9名のシニア審査官(経験年数10年以上)に対して並行して機械分野における特定技術分野別研修を実施した。 特許庁は、今後も、国際研修指導教官を中心として、引き続き新興国審査官に対して効果的・効率的な審査実務指導を行い、さらに、特許庁が作成した新興国向け研修テキストの配布やEラーニング教材の拡充と周知を通じて、新興国審査官の審査実務能力の向上と我が国の特許審査実務のより一層の普及を図る。そして、これらの取組により、我が国企業の新興国展開を支援していく。ブラジルでの特定技術分野別研修の様子タイでのフォローアップ研修の様子新興国向け研修テキスト
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