特許行政年次報告書2019年版300第2章グローバルな知的財産環境の整備に向けて(1)模倣品問題の現状 近年、模倣品・海賊版の流通は世界的に拡大しており、その被害内容も多様化・複雑化している。経済のグローバル化とアジア地域の経済発展に伴い、アジア地域で商標権や著作権等の知的財産権が侵害される事例が増加するとともに、アジア地域で製造された模倣品が世界中に拡散する傾向にある。2019年3月8日付財務省の報道発表1によると、2018年の我が国の税関における知的財産権侵害品の輸入差止め件数は、26,005件で、7年連続で2.5万件を超えている。 このような模倣品・海賊版の氾濫は、市場における潜在的販売機会の喪失、消費者に対するブランド・イメージの低下等の経済的影響だけでなく、偽造医薬品による健康への被害、製品の安全性の問題、組織犯罪への資金提供等の深刻な悪影響をもたらすものである。 JPOが実施した模倣被害実態調査によると、2017年度において我が国の産業財産権を1件以上保有していた企業のうち、同年度中に模倣被害を受けた企業数は、全体推計で、11,643社(全体の7.0%)であった。また、2017年度において我が国の産業財産権を保有する企業が受けた模倣被害の状況を模倣品の製造国(地域)、経由国(地域)及び販売提供国(地域)に分けてみると、製造国が中国(香港を含む。以下同じ。)である企業数は、全体推計で4,703社、経由国が中国である企業は、全体推計で1,791社、販売提供国が中国である企業数は、全体推計で2,446社であり、いずれも中国が最多であった。次いで韓国、台湾等アジア地域での模倣被害が引き続き深刻な状況となっている。さらに、模倣業者が取締り・摘発から逃れようと、模倣手口の巧妙5.模倣品問題への対応化も年々進んでいる。このように多様化・複雑化する模倣被害に対処するために、模倣被害対策における働きかけ先や働きかけの方法等を多様化していくことが必要になっている。 知的財産権保護の制度・運用が不十分な国・地域において模倣品が製造され、流通することにより、世界的な広がりを見せている模倣品・海賊版被害は、我が国企業にとって深刻な問題となっている。本節では、日本国特許庁(JPO)をはじめとした政府による模倣品問題への取組について、その概要を紹介する。1 https://www.mof.go.jp/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2018/20190308.htm1被害がなかった64.2%不明28.8%被害があった7.0%01,0002,0003,0004,0005,000販売経由製造アラブ首長国連邦(UAE)アジアその他フィリピンベトナムタイ欧州その他マレーシア台湾韓国中国(香港を含む)4,7031,7912,446871760833217269338596271082473294783418918510668132638507593-2-3図 模倣被害者数の割合(全体推計値)3-2-4図 国・地域別の模倣被害状況(全体推計値)(資料)特許庁「2018年度模倣被害実態調査報告書」(2019年3月)(資料)特許庁「2018年度模倣被害実態調査報告書」(2019年3月)
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