国際的な動向と特許庁の取組第3部特許行政年次報告書2019年版301第2章(2)模倣品問題に対するJPOの取組①各国政府への働きかけと支援 2009年に日中政府間で知的財産保護に関する四つの覚書が交換され、知的財産保護の協力と交流関係の強化が図られている。当該覚書に基づいて中国政府機関との間で具体的な協力の取組が進められており、模倣品問題については日中知的財産権ワーキンググループ等の場で議論が行われてきた。また、途上国における取締りの強化に関しては、毎年、アジア各国の税関、警察、裁判所等の取締機関等職員を研修生として日本に招へいして知的財産権制度に関する研修を実施するとともに、現地においてセミナーを開催することを通じて、各国の取締機関等職員の人材育成を支援している。②産業界との連携 模倣品・海賊版等の海外における知的財産権侵害問題の解決に意欲を有する企業・団体が業種横断的に集まり、産業界の意見を集約するとともに、日本国政府との連携を強化し、個別企業や業界では対処が困難な問題についての官民合同の協力拠点となり、国内外の政府機関等に対し一致協力して行動し知的財産保護の促進に資することを目的として、2002年4月、「国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)」が設立され、2019年で17年目を迎えた。IIPPFが官民協力の拠点になることにより、官は日本産業界の現状をしっかりと把握し、それを施策に反映させることができ、民は日本産業界だけでは対処できない他国政府からの提案等についても柔軟な対応が可能になるなど、相互に補完し、海外の知的財産に関する問題についてより有効かつ実効的な対策をとることが可能となっている。特に中国政府との関係では、日中政府間において知的財産に関する協議の場が持てなかった時期においては、IIPPFが官民協力の拠点となり、中国政府との協議の場を切り開き、日中交流を継続した。また、近年、日中政府間において知的財産に関する協議の場が設けられて以降は、日中政府間の協議にIIPPFがオブザーバーとして参加し、それをIIPPFのその後の活動に活かし、他方でIIPPFの活動が日中政府間協議の内容に反映されるなど、日本政府とIIPPF が密接に連携して知的財産保護を推進している。このほか、IIPPFではASEAN諸国をはじめ新興国等の取締機関職員向けの「真贋判定」セミナーの実施等の協力も行っている。 JPOとしても、IIPPFの取組を支援しており、特に、中国に関しては、IIPPFと政府が連携して、これまでに8回のハイレベル官民合同ミッションを派遣し、中国政府機関に対して悪意ある商標出願問題、知的財産権に関する判決へのアクセス性の向上、実用新案権の権利濫用の防止等に関して、我が国企業からの意見・要望を集約して法整備・運用改善を要請している。③模倣品対策に必要な情報の収集・提供 JPOでは、海外における我が国企業の被害状況を把握するため、統計法に基づく一般統計調査として模倣被害実態調査を実施し、その結果を「模倣被害実態調査報告書」として公表している。また、海外における我が国企業の活動を支援するため、海外事務所(米国、ブラジル、欧州、中国、韓国、台湾、東南アジア、インド、ドバイ)に調査員を派遣し、現地において調査活動や相談対応を行っている。さらに、模倣被害の多発する国・地域における対策方法に関する有益な情報をとりまとめた「模倣対策マニュアル」や、知的財産権侵害判例・事例を収集して解説を加えた「知的財産権侵害判例・事例集」を作成し、公表1・配布しているほか、国内外の日系企業を対象としたセミナーの開催等、模倣品対策に必要な情報の提供に努めている。1 https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/mohohin/manual.html1
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