特許行政年次報告書2019年版322平成年表否は訴訟の対象とはならなかった。 このため、平成十年に、類似意匠制度を廃止するとともに、新たに関連意匠制度を創設し、同日に、同一出願人から出願された場合に限り、バリエーションの意匠をそれぞれ同等の価値を有するものとして保護できるようにした。平成一八年の法改正では、その後のデザイン戦略の多様性などに対応するため本意匠の登録の公表日まで関連意匠を出願できるようにした。 近年は、自社製品に共通の一貫したデザイン・コンセプトを用いた群のデザインにより、独自の世界観を築き上げ、製品の付加価値を高める動きが加速している。関連意匠の出願時期が本意匠の登録の公表まででは、長期的な市場動向等に応じて製品デザインを保護することができないとの指摘を受け、令和元年の法改正では、関連意匠の「後出し」が、本意匠の出願から十年以内まで認められるようにした。加えて、市場動向等を踏まえて製品等のデザインを長期的に進化させていくためには、類似する意匠を連鎖的に保護すべきとの指摘もあり、従来認められていなかった、関連意匠にのみ類似する意匠の登録も認めることとした。 国内市場の縮小や企業活動のグローバル化、消費者動向の変化などの要素が複雑に絡み合い、モノのデザインから(複数のモノやサービスから構成される)コトのデザインに注目が移っていく中、企業のデザイン戦略の重要性がますます高まることが予想される。我が国の意匠制度は、技術進展に伴って生まれる新しいデザインや、変化する企業のデザイン戦略に適時に対応しながら進化し続けていく。ブランド価値 3.6億円へ 苦労を重ね、やっとの思いで品種改良に成功した夕張メロン。しかし昭和三五年の生産開始からすぐに類似品が現れ始めた。 そこで、商標権取得の重要性に気付いた夕張市が商標登録を検討するものの、地域名と商品名での商標出願は二度も拒絶された。 商標法では、原則として「商品の産地や品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は他人のものと区別ができないため、全国的に知名度を有している商標でない限り、登録されないこととなっているからである。 これに対し夕張メロンの全国的な知名度を立証するために全国紙や地方紙の記事を集め、葉書によるアンケートを実施し八割の知名度を獲得した結果、平成五年に登録査定となった。しかしながら、それまでの間は他人の便乗使用の排除ができなかった。 その後、より早い段階で地域ブランドを保護すべく、平成一八年、地域団体商標制度が導入された。 この制度によって、全国的な知名度を獲得せずとも、一定範囲の需要者に認識されている「地域名と商品名(サービス名)からなる商標」であれば商標登録が可能となり、夕張メロンの例のような苦労は不要となったのである。 夕張市の例を振り返ってみると、夕張市は品質とブランドを守るために多くの商標権を獲得し、多くの制度を利用しつつ、時には裁判をしながら夕張メロンブランドを守ってきた。その結果、夕張メロンは地域ブランドを確立。そのブランド価値は、他のメロンに比べ年額三・六億円程度高いといわれている。平成一六特許法等改正(新職務発明制度・登録調査機関制度)独立行政法人工業所有権情報・研修館に名称変更政府模倣品・海賊版対策総合窓口を経済産業省に設置特許異議申立制度廃止平成一七知的財産高等裁判所設立特許法条約発効インターネット出願開始平成一八特許法・意匠法改正 (シフト補正禁止・分割制度濫用防止等/画面デザイン保護拡充等)特許審査ハイウェイ(PPH)の試行開始地域団体商標制度の導入平成一九イノベーション促進のための特許審査改革加速プラン2007平成二十特許法等改正 (通常実施権等登録制度の見直し、不服審判請求期間の拡大等)平成二一商標法に関するシンガポール条約発効平成二二産産業財産権制度125周年 特許庁ロゴマーク制定PCT-PPH開始平成二三震災復興支援早期審査・早期審理開始特許法等改正(料金の見直し等)PPH MOTTAINAI開始平成二四中小企業の特許料の減免期間拡大平成二五知的財産政策に関する基本方針を閣議決定平成二六FA11目標達成五庁間での特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラム開始特許法等改正(特許異議の申立て制度の創設等)ハーグ協定のジュネーブ改正協定加盟のための意匠法改正ロカルノ協定加盟平成二七特許法等改正(職務発明制度等)日米協働調査試行プログラム試行開始ハーグ協定のジュネーブ改正協定加盟新しいタイプの商標の追加(音、色彩、ホログラム、動き、位置)平成二八広域ファセット分類記号ZITの新設六本木仮庁舎への一部移転平成二九INPIT近畿統括本部(INPIT-KANSAI)開設平成三十特許法改正(特許関係料金の改定。新規性喪失の例外期間延長等)平成三一特許料等の軽減措置を全ての中小企業に拡大令和元特許法等改正(特許訴訟制度の充実、関連意匠制度の見直し等)商標登録 第1379023号商標登録 第2591067号
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