特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版323平成年表平成知財史平成元特許庁本庁舎竣工検索外注本格実施平成二世界初の電子出願受付開始工業所有権に関する手続き等の特例に関する法律(特例法)の制定平成三ニース協定加盟に伴う商標法改正(商品及びサービスの国際商標分類採用等)平成四サービスマーク登録制度導入平成五特許・実用新案審査基準初版発行特許法・実用新案法等改正(補正要件の変更/新実用新案制度等)平成六特許法等改正(外国語書面出願制度導入・明細書の記載要件変更・付与後異議申立制度導入)実用新案無審査登録制度導入平成七世界貿易機関(WTO)発足知的所有権の貿易に関連する側面に関する協定(TRIPS協定)発効産業財産権制度110周年 パテ丸くん制定平成八特許付与後異議申立制度の導入商標法条約発効に伴う商標法改正(立体商標制度・団体商標制度)平成九立体商標制度の導入団体商標制度の導入平成十大学等技術移転促進法(TLO法)施行パソコン電子出願受付開始平成一一特許法等改正(審査請求期間の短縮)部分意匠制度の導入、関連意匠制度の創設対話型審査の開始平成一二マドリッド議定書加盟意匠・商標・審判手続の電子化平成一三審査請求期間を7年から3年に変更独立行政法人工業所有権総合情報館設立平成一四知的財産基本法成立特許法等改正(発明実施規定の明確化等)平成一五知的財産戦略本部発足知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画(最初の知的財産推進計画)策定特許法等改正(特許関係料金の改定・異議申立制度廃止等)平成一六任期付審査官の大量採用開始知財ニュース企業と従業者を守るための法制度へ向けて 特許法では、原則として発明者(従業者)が職務発明の権利を有することとなっている。一方で、企業が職務発明の権利を欲する場合には、企業が職務発明に対する対価を従業者に払って職務発明の権利を企業に承継させることができる。 知的財産に対する国民的関心の高まりを背景に、特許法第三五条の存在が認知されつつあった平成一五年四月二二日、最高裁判所判決(オリンパス事件)が出されたことを契機として、職務発明の相当の対価に関する訴訟が多発した。特に世間を賑わせたのは、平成一六年一月三〇日、東京地裁判決(青色発光ダイオード事件)における二〇〇億円という、職務発明の権利の対価である。 一般に、職務発明の相当の対価は企業と従業員との契約によって定められているものであり、先のオリンパス事件においても、企業が従業員の職務発明につき特許収入を得ていれば、上限額を一〇〇万円とする報償を企業が従業員に与えることが社内規定で定められていた。しかし、当該事件での職務発明の対価の額は二五〇万円と認定された。オリンパス事件の最高裁判決を踏まえて、その後の青色発光ダイオード事件の中間判決では、『相当の対価については、最終的に、司法機関である裁判所により、客観的に定められるべきものであって、契約等で対価の条項を設けたとしても、当該条項の額に拘束されることなく、従業者は「相当の対価」を請求することができる』旨が述べられた。 これらの判決や社会情勢を鑑みて、企業と従業者との職務発明にかかる利益を守るために、特許庁では職務発明に関する法改正を平成一六年に行った。この法改正により、相当の対価を決定するに際しては、企業における対価の付与にかかる手続を重視することが規定され、この手続きが不合理でなければ、その対価の付与は裁判所において尊重されることとなった。 しかしながら、平成一六年の法改正後においても、雇用の流動化といった社会情勢の変化に起因する問題、例えば特許を受ける権利の二重譲渡問題等も顕在し、産業界からも職務発明の再改正の必要が示されることとなり、特許庁では、平成二七年にも職務発明に関する法改正を行った。 時代の変遷によって、企業、従業者に必要な制度も変わってくるが、その時代の企業、従業者を守るべく、特許法は法改正がなされてきた。意匠制度は新時代へ 令和元年の幕開けとともに、意匠制度は新たな時代を迎えた。制度有史以来の大改正とも言われる令和元年の改正意匠法の中でも、関連意匠制度の拡充は、注目すべき内容の一つだ。 「関連意匠制度」とは、端的に言えば、バリエーションの意匠を保護する制度である。日本の意匠制度は、先願主義を採用しており、出願した意匠が、その出願日と同日又はそれ以前に出願され、登録された意匠と同一又は類似している場合は、原則として登録を受けることができない。しかし、関連意匠制度を利用すれば、同一出願人に限り、そのような意匠も例外として意匠登録を受けることができる。 現在の制度の形になるまでに、数々の変遷があった。昭和三四年の現行法制定時には、バリエーションの意匠を「本意匠」と「類似意匠」として保護することができる「類似意匠制度」があった。しかし、侵害訴訟の場では、類似意匠は本意匠の効力範囲を定める際に参酌されるにとどまり、類似意匠に基づく侵害の成

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