特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版ii 平成31年間の自動車のヒット・トレンドは、世相との連動がはっきりとみてとれる。 日経平均株価が過去最高の3万8915円を付けたのは1989年(平成元年)の年末12月29日だった。バブル景気が国内を覆っていたこのころ、自動車の分野でも高級車やスポーツカーがヒット商品となっていた。自動車メーカーはこぞって、高級者やスポーツカーを発売し、それぞれ話題を呼んでいた。 3ナンバーの高級車ブームの象徴として「シーマ現象」とまで言われた日産の「シーマ」がヒットしたのは平成直前の1988年のこと。翌年(89年)日産はさらに上位の高級車として「インフィニティ」を発売し、トヨタは高級車専用ブランド「レクサス」を米国で立ち上げた(国内は2005年以降発売)。 一方で、平成元年はスポーツカーの年だったともいえる。日産の8代目スカイラインや4代目フェアレディZが登場したのに加え、マツダがスポーツカーのユーノスロードスターを発売したのも1989年。ホンダも800万円~1000万円前後のスポーツカーNSXの発売を発表した(発売は翌90年)。 それまでの、安価で壊れにくくコストパフォーマンスに優れた日本車という範疇を超えて、各社がラグジュアリーで尖った付加価値を模索した時代だった。 ところが、90年代に入ってバブル経済の崩壊とともに、自動車に関するニーズも大きな変化を迎えることになる。続いて訪れたのは徹底した節約と実用の時代だった。その象徴ともいえるのが95年(平成7年)に発売された8代目カローラだった。91年に発売された7代目が金メッキを施したハーネスや豪華な内装など“プチバブル仕様”だったのに対して、8代目は一転、部品点数を減らした質素な作りの仕様となった。 カローラに象徴されるように、平成半ば以降の自動車には低価格と実用性が強く求められるようになってきた。平成半ば以降、それまで各車種の中心的存在だったセダン型ボディの人気が低くなり、空間の快適性と多くの荷物を運べる利便性、また使用目的によってシートのレイアウトが変えられるSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル、Sport Utility Vehicle)の人気が高まってきた。その先べんをつけたのが1996年(平成8年)にヒット商品ランキング入りしたホンダのRVシリーズだ。RV(レクレーショナル・ビークル)はSUVと同じくスポーツ多目的車と呼ばれるジャンルのボディ形状を持っている。ハイブリッド車の登場 1997年(平成9年)、こうした実用一辺倒の市場ニーズが高まるなかで登場してきたのが世界初のハイブリッド車、トヨタの初代「プリウス」だった。ガソリンエンジンと電気駆動を実現するモーターを両方搭載しており、従来のガソリン車に比べ圧倒的な燃費性能を持ち、環境負荷の低減にも役立つことから、カリフォルニア州の厳しい環境基準をクリアした当時唯一のガソリン車として、脚光を浴びた。 環境問題に関心の高いハリウッドスターが推奨したことから、環境対応の側面がブランディングされたが、後のEV開発や自動運転につながる新しいエレクトロニクス、コンピュータ技術が数多自動車編11989年(平成元年)にマツダが発売したユーノスロードスター(写真:マツダ)冒頭特集

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