特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版iiiく採用されていた。 周到、綿密に張り巡らされた特許戦略により、ハイブリッド車の分野は、しばらくトヨタの独擅場が続いた。ただ、発売当初はその割高な価格と複雑な機構を採用したゆえ供給不足もあり、当初は一気にヒット商品に上り詰めるまでには至らなかった。 2003年(平成15年)に発売された2代目プリウスは、大型化して実用性を高め、価格も抑えた。燃費の良い自動車の取得や維持に対して税額を下げる低排出ガス車認定制度、いわゆるエコカー減税が後押ししたこともあり大きなヒット商品となった。さらに2009年に発売した3代目プリウスは、同年6月の新車販売台数ランキングで首位を獲得すると、2010年12月までの19か月連続で首位を獲得。国民車としての地位を不動のものとした。3代目プリウスに搭載されたハイブリッドシステムは、90%以上の部分を新開発して軽量・小型化・低コスト化を実現したもので、このシステムはのちにトヨタ自動車のさまざまな車種のハイブリッド化に貢献する。 トヨタに続いてホンダもハイブリッド車の「インサイト」を2003年に復活させこれもヒット商品となった。両メーカーはその後もハイブリッド車のラインナップを徐々に増やしていき、燃費の良い自動車の代名詞として市場に定着した。 ハイブリッド車が定着していく中、ガソリンエンジンの技術を鍛え上げることに注力したマツダは、平成29年画期的なガソリンエンジンSKYACTIVE-Xの開発に成功した。SKYACTIVE-Xとは世界初の「圧縮着火」方式のガソリンエンジンであり、このガソリンエンジンを採用したMAZDA3は平成30年に公開された(発売は令和元年)。MAZDA3は、最も優れるグレードで欧州複合モード燃費が23.3km/リットルを実現した。 ハイブリッド車のヒットは、ガソリンではなく電気で動くモーターを主動力とする電気自動車の登場も誘発した。ハイブリッド車と並んで将来の市場を牽引すると期待されたのが、電気自動車(EV)である。エンジンではなく、モーターを動力とし、ガソリンではなく、電気をエネルギーとして走行する電気自動車は、自動車市場の根底を変えるポテンシャルをもっている。日本では三菱自動車が、2006年にi-MiEVを発表、2009年(平成21年)から量産化に踏み切った。これに続き、日産が2010年(平成22年)に電気自動車リーフを発売。2017年(平成29年)にフルモデルチェンジした。世界的に進むEVシフト また、三菱自動車は、一般的なハイブリッドよりも大容量のバッテリーを搭載し、外部からの充電が可能なプラグイン・ハイブリッドとして国産初のSUVとなる「アウトランダーPHEV」を2018年(平成30年)に発売した。 2017年(平成29年)に、パリ協定の遵守に向け、フランスとイギリスが2040年までにガソリ知財の視点から振り返る平成という時代冒頭特集世界最初の量産ハイブリッド車となったトヨタの初代「プリウス」と「3代目プリウス」(写真:トヨタ)

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