特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版iv2008年(平成20年)から量産化された初代i-MiEV (写真:三菱自動車)2019年に発売したMAZDA 3(写真:マツダ)ン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を表明、大気汚染問題が深刻な中国もEVシフトを念頭においた政策を発表している。このEVシフトを軸とした省エネ対応と自動運転技術の進展が、今後の自動車産業の基盤を大きく変えていく可能性がある。 トヨタが、2019年(平成31年)、トヨタがハイブリッドにかかわる技術を無償公開すると発表し、業界を驚かせた。ハイブリッド技術の更なる普及とコストの低減を進める戦略的な狙いがあるとみられている。 平成の後半から始まったこうした自動車のエレクトロニクス化は、動力に関するところばかりでなく、大きく2つの方向で自動車を進化させることになった。1つは将来の自動運転制御をにらんだ、運転サポート技術。もう一つはICT・クラウドと連携した情報化・インテリジェント化の方向である。 走る、止まる、曲がるといった自動車の基本的な機能について、現在に至るまで事故の低減を目指した制御技術が各社から登場している。2008年(平成20年)に登場したスバルの「アイサイト」はステレオカメラの技術を使って車の前方の歩行者などの対象物を判別し、自動的にブレーキをかける仕組みである。日産の「プロパイロット」は、高速道路などで、車線の中央を検知しながら前の車との距離を保ちながら自動追尾できる。動力制御とハンドル制御の両方を行うもので自動運転のレベル2に相当する。この技術を搭載した日産の「セレナ」は2016年(平成28年)、大きなヒット商品となった。 こうした画像センシングと動力やハンドル制御の組み合わせは、駐車場の枠内などにスムーズに停めることをアシストする自動駐車の仕組みも実現することになった。 自動車とスマートフォンの連携では、位置情報とスマホの音声入力機能を利用したナビゲーションの進化や、自動車とスマートフォンの間の通信機能を利用して、自動車から離れた場所でも自動車の状態をモニターできる機能などが提供されるようになった。5Gがもたらす進化 日本でも2020年(令和2年)から商用化が始まる第5世代移動通信システム(5G)の普及を前提により、自動車関連の技術は、自動車の枠を超えて更なる進化が見込まれる。ICTを活用してクラウドに統合されるコネクテッド化が進み、AIが自動車の運行を管理する自動運転やカーシェア、配車サービスなどが実現する。自動車がモビリティとして他の交通機関と共通のITプットフォームに統合され、モノではなくサービスとして提供される「MaaS(Mobility as a Service(=サービスとしての移動手段))の世界が到来すると言われている。2018年(平成30年)1月、トヨタがMaaS専用次世代電気自動車と銘打った「e-Palette Concept」を発表したように、今後、単なる移動手段としての車ではなく、自動車の枠を超えた進化が見込まれるMaaSがヒット商品となる未来も遠くないのかもしれない。冒頭特集

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