特許行政年次報告書2019年版vi 平成のヒット商品と知財の関係について、ハイブリッド車、EV車に注目して見てみよう。図1-1は、トヨタのハイブリッド車のFターム分類として3D202が付与されている特許出願件数の推移を示したグラフである。 特許出願件数の推移とヒット商品との相関について分析してみると、トヨタのハイブリッド車に関する特許出願は初代プリウスが発売される直前である平成8年までは堅調に増加していることが見て取れ、3代目プリウスが発売される直前である平成20年にも特許出願件数がピークであることが見て取れる。特に平成21年に発売された3代目プリウスは各段に進化させたハイブリッドシステムを備えており、平成20年のピークの特許出願件数からもトヨタがハイブリッドシステムの開発に力を入れていたことが伺える。 次にEV車についての特許出願データを見てみよう。 図1-2は、日産の車両の電気的な推進・制動(EV車ハイブリッド車)のFターム分類である5H125AA01 が付与されている特許出願件数の推移を示したグラフである。 特許出願件数の推移とヒット商品との相関について分析してみると、日産のEV車に関する特許出願は初代リーフが発売となる6年前にピークとなり、新型リーフが発売となる4年前にピークとなっていることが読み取れる。初代リーフが発売される平成22年までには多くもの特許出願がなされていることからも、初代リーフは日産のEV車に関する技術が詰まったものであることが伺える。 また、本統計データのデータ抽出に利用しているFターム分類はハイブリッド車に関する技術も含むものであるところ、平成28年に発売となり、平成29年にヒット商品となったノートe-POWERなどの技術も含まれる点留意されたい。 図1-3は、三菱自動車の車両の電気的な推進・制動(EV車ハイブリッド車)のFターム分類として5H125AA01 が付与されている特許出願件数の推移を示したグラフである。 特許出願件数の推移とヒット商品との相関について分析してみると、三菱自動車の特許出願はi-MiEVが販売となる2年前にピークとなり、アウトランダーPHEVが販売となる4年前にピークとなっている。また、平成後期においてEV車に関する特許出願を毎年100件弱行っていることからも、三菱自動車は車両の電気制御の技術の開発に力を入れていることが伺える。 また、本統計データのデータ抽出に利用しているFターム分類は車両の電気的な推進・制動に関する技術も含むものであり、三菱自動車のハイブリッド車の技術も含まれる点留意されたい。 以上の分析のように、ヒット商品が販売される数年前には、ヒット商品と関連のある特許技術が出願されていることが見て取れ、各社が力を入れ始めている技術を追うことも可能であると言える。 最後に、令和時代に来ることが期待されている自動運転に関する特許技術について紹介してみる。特開2018-106757号公報はgoogle傘下のWaymoの公開特許公報であるが、この公報には、天候や地図情報等を用いて手動運転モードから自律走行モードに切り替える機能を備える自律走行システムに関する発明が記載されている。 今後、このような特許出願が増えていき、自動運転に関する技術が熟成していけば、安全運転に係る監視、対応をシステムが行うレベル3に相当する自動運転技術を備えた車が実用化される未来も遠くはない。平成ヒット商品と特許出願データとの相関の分析自動車編冒頭特集
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