第Ⅵ部 特殊な出願 第2章 出願の変更
特許法第46条は、出願人が実用新案登録出願又は意匠登録出願を特許出願に変更することができる旨を規定している。また、同条は、特許出願への変更が適法になされた場合は、新たな特許出願は、もとの出願の時にしたものとみなされる旨を規定している。
出願人が出願形式(特許出願、実用新案登録出願又は意匠登録出願)の選択を誤ったり、もとの出願を出願した後に事業計画を変更した等の理由により、出願後に他のより有利な出願形式に改めたいと考える場合が生ずることがある。出願の変更制度は、このような観点から設けられたものである。
以下の2. から4. まででは、もとの出願が実用新案登録出願である場合について説明する。もとの出願が意匠登録出願である場合については、5.の項で説明する。
この章では、出願の変更が適法になされたか否かにかかわらず、「もとの出願」及び「新たな特許出願」を、それぞれ「原出願」及び「変更出願」という。
出願の変更が適法になされたと認められるためには、出願の変更の要件が満たされる必要がある。出願の変更の要件は、形式的要件(2.1参照)と実体的要件(2.2参照)とに分けられる。出願の変更の要件が満たされると、出願の変更の効果(2.3参照)が認められる。
出願の変更をすることができる者は、その出願の出願人である(第46条第1項)。すなわち、原出願の出願人と変更出願の出願人とは、出願の変更時において一致していなければならない。
出願の変更は、以下の(i)及び(ii)の時期を除き、することができる。
出願の変更は、原出願と変更された後の出願との間の出願形式を変更するものであることから、以下の(要件1)が満たされる必要がある。また、変更出願が原出願の時にしたものとみなされるという出願の変更の効果を考慮すると、以下の(要件2)も満たされる必要がある。
ただし、原出願の明細書等について補正をすることができる時期(原出願の出願日から1月以内(実用新案法第2条の2第1項及び実用新案法施行規則第1条))に出願の変更がなされた場合は、(要件2)が満たされれば、(要件1)も満たされることとする。これは、変更直前の原出願の明細書等に記載されていない事項であっても、原出願の出願当初の明細書等に記載されていた事項については、補正をすれば、原出願の明細書等に記載した上で、出願の変更をすることができるからである。
出願の変更の要件が満たされている場合は、変更出願は、原出願の時にしたものとみなされる。他方、出願の変更の要件のうち実体的要件が満たされていない場合は、変更出願は、原出願の時にしたものとはみなされずに、現実の出願時にしたものとして扱われる。なお、形式的要件が満たされていない場合は、変更出願は、出願自体が却下される。また、形式的要件が満たされている場合は、原出願は取り下げられたものとみなされる。
審査官は、「第1章第1節 特許出願の分割の要件」の3.及び4.に準じて審査を進める。
原出願である実用新案登録出願が分割され、更にその分割出願である実用新案登録出願が適法に特許出願に出願変更されたときには、審査官は、変更後の特許出願が分割出願であると仮定して、原出願に対する分割要件を判断する(「第1章第1節 特許出願の分割の要件」参照)。
原出願が意匠登録出願である場合は、原出願が実用新案登録出願である場合と同様に取り扱われる。ただし、出願の変更をすることができる時期及び出願の変更の実体的要件については、審査官は、以下の5.1及び5.2に留意する。
出願の変更は、以下の(i)から(iii)までの時期を除き、することができる。
審査官は、2.2において、「明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面」を「願書の記載又は願書に添付した図面等」と読み替える。