ホーム> 特許庁について> 長官からのメッセージ> 濱野長官 2023年 年頭所感
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2023年の新春を迎え、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。
まだ予断を許さない新型コロナウイルスの影響、大きく変化する国際社会、年々進む地球温暖化問題など、我が国を取り巻く環境は激動の状況下にあります。産業財産権の活用促進、その審査を通じた権利付与を担う特許庁では、本年も、脱炭素社会の実現を始め、新たな社会課題の解決に資するイノベーションの促進を支援するための取組を着実に進めてまいります。
2022年1月から9月においては、2021年の同時期と比べ、特許・商標登録出願件数はそれぞれ0.3%、6.3%減少したものの、意匠登録出願件数は0.4%増加しました。新たな事業展開にあたっては、経営戦略と一体的に取り組む知財戦略がますます重要です。本年も是非とも、知財戦略の構築に基づき産業財産権の御活用をお願いいたします。
令和4年4月1日に令和3年特許法等改正に伴う料金の改定を行いました。ユーザーの皆様に御負担をお願いしていますが、特許庁としても、歳出削減を徹底した上で、「世界最速・最高品質」の審査を始めとする質の高いサービスを安定的に提供し、制度改正や新たな政策課題にしっかり取り組んでまいります。また、業務効率化やシステム活用に一層取り組むべく全庁的な業務改革も進めてまいります。
2021年12月に、特許庁と独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT/インピット)が関係部局と連携して公表した、「中小企業・スタートアップの知財活用アクションプラン」、「大学の知財活用アクションプラン」を踏まえ、INPITでは、中小企業の知財経営支援強化に向けて専門家を派遣して伴走支援を行う「加速的支援」を開始するとともに、地域ブランドデザイナーの派遣を通じた商店街支援を強化しました。
今後は、アクションプランの取組をより一層推進していくため、INPITと各経済産業局が連携し、各地域における知財経営支援の強化を進めてまいります。
さらに、昨年11月、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が事務局となって立ち上げたスタートアップ支援機関連携協定(通称「Plus “Platform for unified support for startups”」)にINPITが参加いたしました。Plusへの参加により、他の政府機関との連携が強化されます。特許庁はINPITと連携しながら、より一層の支援に取り組みます。
2022年6月には、GXに関する技術動向を俯瞰するため、GX技術を開示する特許文献の検索手法を示したグリーン・トランスフォーメーション技術区分表(GXTI)を公表しました。企業においては、コーポレートガバナンス・コードの改訂(2021年6月)により、気候変動に係るリスク及び収益機会が、自社の事業活動や収益等に与える影響についての開示の質と量の充実が求められています。そのような開示の充実化のための手段の1つとして特許情報の分析があり、当該分析にGXTIが活用できるものと考えます。特許庁自身も、GXTIを用いたGX技術に関する各国の特許出願動向調査に取り組んでおり、報告書を2023年5月頃に公表する予定です。
近年、SNSを利用したマーケティング手法の活性化、デジタル化の更なる進展など、ビジネスを巡る様々な環境の変化が生じています。大企業に加え、中小企業・スタートアップ等による知的財産を活用した新規事業展開の後押しを図るため、これらの環境変化を踏まえた知的財産制度の見直しが必要と考えており、現在、特許・意匠・商標の3つの小委員会で検討を進めています。
特許制度小委員会では、デジタル化への対応・ユーザーの利便性向上のための「送達制度の見直し」や「書面手続のデジタル化」等について御審議いただきました。
意匠制度小委員会では、特にユーザーの皆様の御関心が高い、意匠登録出願前のデザイン公開に関する手続の要件緩和(「意匠の新規性喪失の例外適用手続」)等について御審議いただきました。
商標制度小委員会では、商標を活用したブランド戦略展開に向けた商標制度の課題に対応するため、「他人の氏名を含む商標の登録要件緩和」、先行登録商標と類似する後願商標を当該先行登録商標の権利者の同意等があれば登録可能とする「コンセント制度の導入」等について御審議いただきました。
各小委員会において御審議いただき議論が深まった論点については、適時に方向性を取りまとめます。
産業財産権制度がビジネス環境の変化の中で、一層活用されるよう、特許庁としても引き続き、必要な施策について検討を深めてまいります。
2022年は多数の国際会議が対面で開催され、世界知的所有権機関(WIPO)の加盟国が集うWIPO加盟国総会や世界60か国以上の国から知財関係者が参加するIP WEEK、日米欧の特許庁からなる三極特許庁長官会合等の国際会議にも現地で参加することができました。
新興国・途上国知財庁に対しては、現地でのセミナー開催や国内外での対面形式での研修提供を再開しました。引き続き、新興国・途上国の知財制度の整備を支援してまいります。
今後も知財の適切な保護と活用に向けた国際的な環境整備に向け、対話をとおして海外知財庁・WIPOとより強固な協力関係を築くとともに、特許庁の施策を積極的に発信し、国際的な制度調和をリードしてまいります。
また、我が国特許庁は世界で最も多くの知財庁(2022年11月時点で44庁)と特許審査ハイウェイ(PPH)を実施しています。我が国特許庁の審査結果により我が国ユーザーの海外出願戦略を後押ししてまいります。
特許庁は、現在職員の職場が4カ所に分散していますが、本庁舎改修を経て、全職員が本庁舎で勤務できるよう、計画を進めています。この機会に、多様かつ効率的な働き方の推進に取り組み、また、組織としての一体感を更に一層高めるべく、「One JPO」のスローガンの下で、業務改革に取り組んでいます。
例えば、フリーアドレスの導入により、柔軟な課室内のチーム編成の実現やスペースの活用、情報セキュリティ向上に資するペーパーレスの推進、働き方の多様化に即したテレワークの推進などを進めています。
これらの取組を通じて、特許庁の組織力・職員個々の能力を最大限発揮できるように取り組んでまいります。
本年も、特許庁は、迅速・高品質な審査等を通じてイノベーションを促し、海外での権利化や予見性向上に貢献するなど、皆様のビジネスをサポートすべく全力で取り組みます。今後とも特許庁の行政に御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。皆様のますますの御健勝と御発展を心からお祈り申し上げまして私の新年の御挨拶とさせていただきます。
特許庁長官 濱野幸一
[更新日 2023年1月4日]
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