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小野長官 2025年 年頭所感

2025年の新春を迎え、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。

日本経済はデフレ脱却、すなわち、賃金と物価の好循環に向けて正念場を迎えております。ミクロで見れば長年の「デフレマインド」からの脱却ということであり「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への変革を実現するために、イノベーションに向けた前向きな投資を官民挙げて促進していく必要があります。折しも特許庁は知財経営、すなわち、知財で稼ぐ、知財で経営の質を高めることを柱の1つとして掲げておりますので、まさに特許庁の真価が問われていると認識しております。

昨年6月に公布された産業競争力強化改正法において、INPITの業務として、中小企業に対する助言と助成業務が追加されました。これは、中小企業に対する伴走支援です。中小企業だけではなくて、スタートアップやオープンクローズ戦略を実施する企業や大学も対象に含まれます。しかしながら、INPITの支援だけでは不十分です。これを地域の「面」の支援に拡大するために知財経営支援ネットワークという枠組みを構築しました。具体的には、特許庁、INPIT、日本弁理士会及び日本商工会議所の4者が連携し、地域の中小企業・スタートアップ等への知財経営リテラシーの向上と知財経営支援の強化・充実化に取り組むため、一昨年始まったものですが、昨年12月には中小企業庁が加わり、新たに5者での連携となっております。

このネットワークを大いに活用した事業として、昨年4月より、青森県、石川県、神戸市の3地域を知財重点支援エリアに選定し、「知財経営支援モデル地域創出事業」を通じて、地域支援機関の連携強化、人材育成及び地域企業のイノベーション創出を通じた持続的な知財活用の促進を目指しております。また、そこで得られた成功事例を横展開することで、知財経営の「面」の支援を行っていきたいと考えております。

次に特許審査のスピードと質についてですが、権利化までの期間を平均14か月以内にするという目標を2023年度末に達成しました。内閣府で作成している知財推進計画2024では、10年後(2033年度)もこの14か月以内を維持すると設定されており、次の目標に向けて動き出しております。既に達成したものを維持することは、一見すると簡単なように見えますが、そうではありません。外国語文献を含む調査すべき特許文献の増加や、あらゆる技術分野へのAI技術の浸透等による発明の高度化・複合化など、近年の特許審査を取り巻く環境変化を踏まえると、審査に要する業務負担が増加の一途をたどる中で、その達成に向けた審査体制の整備や業務効率化に向けた変革に取り組む必要があります。審査官の複数の技術分野への習熟を含む能力向上に向けた対応を進め、技術の動向に即した審査体制を整備することや、積極的にデジタル/AI技術を活用することでさらなる業務効率化に取り組むことが必要です。これにより、「世界最速・最高品質の特許審査」を着実に実施することに加え、それを基礎として「イノベーションの創出」へ最終的に繋げてまいります。

さらに、デジタル技術の活用が加速する中で事業環境は激しく変化しており、世の中全ての制度がDXに対応していかなければならず、知的財産制度も例外ではありません。特許庁は、ネットワーク関連発明の国境を跨いだ実施行為に対する適切な権利保護の在り方等について、検討を行っております。現在、「特許制度小委員会」という有識者会議にて多様な専門性を有する委員の方々に議論していただいております。さらに、「意匠制度小委員会」にて、「仮想空間におけるデザインに関する意匠制度の在り方」及び「生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度上の適切な対応」等について議論していただいております。ユーザーの声に耳を傾けながら、合意形成が可能な制度的措置を適時に行うことができるよう、議論を深めてまいります。また、AIの発明者適格性についての訴訟が各国でありますが、日本においても非常に注目を集めているテーマです。生成AIと発明の論点は様々あるところ、正面から向き合って検討を行い、制度的措置が必要となれば対応していきます。

次に海外展開支援についてですが、海外展開を目指す企業が、進出する先の国等において特許権等を取得し、権利行使できるようにするためには、それらの国等の知財制度が整っており、適切に運用されていることが大前提となります。特許庁は、それらの国等における知財制度の整備・強化に向けて、研修の提供や専門家の派遣など、効果的な支援を継続して実施しております。

加えて、海外知財庁や世界知的所有権機関(WIPO)等との対話を通じ、より強固な協力関係を築くとともに、特許庁の有効な施策を積極的に発信し、国際的な制度調和をリードするべく取り組んでおります。

また、海外展開を目指す中小企業等があとで困ることのないように、海外での特許権等の取得を促す取組も行っております。国内ではINPITを通じ海外展開知財支援窓口を設置し、海外では一部のJETRO海外事務所に知財の専門家を配置し、個別の相談に対応できる体制を整えております。さらに、海外に出願するときの費用等の負担を助成しておりますが、令和6年度からは予算を増額し、より多くの者に利用し易くするための改善を図りました。さらに、特許庁は世界で最も多くの44の知財庁との特許審査ハイウェイ(PPH)も実施しており、ユーザーが早期に海外で権利を取得するための支援を行っております。

こうした取組を続けることで、我が国ユーザーの海外展開を引き続き後押ししてまいります。

最後に、いよいよ今年開催される大阪・関西万博の場では、知財が、企業規模の大小関係なく、世界的な社会課題を解決し、SDGsを達成するためのツールとして有益であることを世界に発信することを目指しております。

具体的には、10月2日~10日で、EXPOメッセにおいて、知財に縁遠い方でも楽しみながら知財に親しんでいただけるような展示や実演、ステージイベントを計画しております。

さらに、10月4日には、テーマウィークスタジオにおいて、WIPOや海外知財庁と連携し、社会課題解決に向けた知財活用の促進等に関する国際フォーラムの開催も予定しております。

本年も、特許庁は、迅速・高品質な審査等を通じてイノベーションを促し、新たな制度の周知を図る等、ユーザーの皆様のビジネスをサポートすべく全力で取り組んでまいります。今後とも特許庁の行政に御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。皆様のますますの御健勝と御発展を心からお祈り申し上げまして私の新年の御挨拶とさせていただきます。

特許庁長官 小野洋太

[更新日 2025年1月6日]

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