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注目のあの話題を徹底解説!
特許や意匠、商標など知財にまつわる注目の最新ニュースをご紹介!
今回は、東北大学特任准教授の稲穂健市先生が株式会社ノーリツと西日本シティ銀行のトピックについてわかりやすく解説します。
稲穂健市先生
東北大学特任准教授、弁理士、米国公認会計士(デラウェア州Certificate)。知財を楽しく分かりやすく伝える知財啓発に取り組む。著書は『楽しく学べる「知財」入門』(講談社現代新書)、『ロボジョ!杉本麻衣のパテント・ウォーズ』(楽工社)など。
ノーリツ製給湯器でお湯はり完了の際に流れる、「人形の夢と目覚め」のメロディーと「お風呂が沸きました」の音声が「商標登録 第6369662号」としてクラシック音楽を含む音声で商標登録。目が不自由な方のお風呂沸かしをサポートするため、いつの時代にもなじむクラシック音楽と音声案内が組み合わせられている。
商標法で認められる商標は、長らく、文字、図形といった「視覚で認識される商標」に限定されていましたが、2014年の法改正で、新しいタイプの商標の一つとして「聴覚で認識される商標」である「音商標」が追加されました。言葉(言語的要素)と音(音楽的要素)の組み合わせからなるものが多く、300件以上が登録されています。
従来の商標と同様、商標登録されるためには、他の商品・サービスと区別できる「識別力」が必要です。この音商標は、言葉(「お風呂が沸きました」)と音(「人形の夢と目覚め」)がお湯はり完了時のお知らせに過ぎないとの理由から、一度は特許庁の審査で「識別力」がないと判断されました。しかしその後、1997年以来日本全国で長年使用されてきたことで「識別力」を獲得したと認められて商標登録されたのです。
西日本シティ銀行のイメージキャラクター「ワンク」の知的財産権の第三者使用を許諾し、製造販売業者等が運営するWebサイト・店舗でグッズ購入ができるスキームを構築。SDGsへの取組として、使用許諾料を子ども食堂や社会福祉団体に寄付する「ワンクのSDGsプロジェクト」を開始した。第一弾としてワンクの段ボールオブジェを取り扱っている。
銀行のキャラクターグッズといえば、そのほとんどがキャンペーンなどで無料で配布されるノベルティでした。銀行法による制約も商品化を妨げていた理由の一つですが、その点で、キャラクターグッズの製造販売を認め、その使用許諾料を社会福祉団体等への寄付に充てるという寄付型販売スキームは画期的です。
この事業は、グッズを製造販売する業者の利益や、寄付を通じた社会貢献につながるだけではなく、同行のイメージアップとキャラクターの認知度向上にもつながりますから、銀行の「新たな役割」を示した好例といえます。今後登場するワンクグッズが楽しみです。