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注目のあの話題を徹底解説!
特許や意匠、商標など知財にまつわる注目の最新ニュースについて、知財情報コンサルタントの野崎篤志氏がわかりやすく解説!
今回は、コーポレートガバナンス・コード改訂とGPIFのESG報告書に関するトピックについてご説明します。
野崎篤志氏
株式会社イーパテント代表取締役社長。「知財情報を組織の力に®」をモットーに各種分析・コンサルティングに取り組む。YouTubeなどの各種メディアで特許検索や特許分析・パテントマップについて積極的に情報発信を行っている。
2021年6月11日に公表された改訂コーポレートガバナンス・コードに、初めて知的財産に関する規定が追加され、上場企業に対して知財投資等についての具体的な情報の開示や取締役会による実効的な監督の実施が求められることとなった。今回の改訂により、上場企業が知的財産等の投資・活⽤戦略の構築・実⾏の取組を進めることが期待される。
企業経営を管理・監督するための仕組みがコーポレートガバナンス(企業統治)であり、その指針がコーポレートガバナンス・コードになります。企業の競争優位性の源泉がカタチある有形資産からカタチのない無形資産へシフトしている中で、無形資産の中でも特に重要な知的財産への注目が高まっていることが背景にあります。特許だけではなく、ブランドやノウハウ、データ資産などの知的財産をより積極的に活用した企業経営が求められると同時に、知財情報を活用したIPランドスケープにもより一層注目が集まると考えられます。
[コーポレートガバナンス・コードとは]
上場企業が守るべき企業統治のガイドライン。東京証券取引所と金融庁が制定。企業の持続的な成長と企業価値の向上を通して、経済全体の発展へとつなげることを目的とする。
世界最大の機関投資家として動向が注目される年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。長期的な投資収益拡大のため、環境・社会・ガバナンス(ESG)への考慮を進める中、2021年8月20日にその取組と効果を「2020年度 ESG活動報告」としてまとめ刊行した。本書の「気候変動リスク・機会の評価と分析」項目には、特許スコアが掲載されている。
企業価値を測る上で、従来の財務情報だけでなく、重要性がより一層増しているのが非財務要素です。ESGの中でもE(環境)において、企業活動を客観的に定量評価するための情報として特許に注目が集まっています。権利的、技術的側面だけではなく、企業の研究開発投資を示す経営的側面も持っている特許情報。ESGだけではなくSDGsへの取り組みの可視化にも特許情報の活用が進んでいくと考えられます。ただし、必ずしも企業価値や業績と特許スコアが相関するわけではなく、万能なスコアではない点に注意する必要があります。
出典:https://www.gpif.go.jp/esg-stw/esginvestments/2020esg.html(外部サイトへリンク)