ここから本文です。
なるほど!知財セレクション
COMPANY東日本旅客鉄道株式会社
PRODUCT外観・内装のカラーリングで山形を表現した山形新幹線「E8系」
東京と山形・新庄間を結ぶ山形新幹線に、新型車両「E8系」が2024年春から順次投入されることが発表されました。E8系は速達化と利用客へのサービス向上を目的として、山形新幹線向けに新規開発される車両です。この新型車両へのこだわりを、開発に携わったJR東日本の山川氏、矢嶋氏、一法師氏の三名に伺いました。
デザイン面で一番大きく変わったのは、「鼻先」と呼ばれる車両の先頭部分で、従来の6メートルから9メートルに延長されました。これは、新幹線区間での最高速度の向上(最高時速30 0キロメートル)に伴い大きくなる、トンネル突入時の発破音を抑えるため。鼻先が延びた一方で車体の長さは変えられないため客席を減らすことは必至でしたが、「定員も減らしたくない」という社内の声も強かったとか。他にも車椅子スペース増設など厳しい条件があるなか、客席数を最大限確保するよう配慮したそうです。
また、デザイン設計を担った川崎重工業株式会社(現:川崎車両株式会社)の担当者は実際に山形へ赴き、郷土資料館や歴史資料館で山形の文化や歴史、風土をその身で感じ取ってきたそう。こうした経験が、山形の伝統や文化を取り入れたE8系のデザインに生かされています。外観のカラーはE3 系を引き継いで、県鳥「おしどり」の飾り羽根から採用したパープルを中心に蔵王の雪をイメージした白と、紅花の黄色の三色で構成。インテリアデザインにもこだわり、中央通路部は最上川の流れをモチーフとした柄を通し、グリーン車には月山の緑を、普通車には紅花のオレンジを腰掛けの色に採用しています。特に普通車の腰掛けは美しく、グラデーションの始まりは紅花が摘み取られる前の最も鮮やかな黄色を表し、終わりは山形でみられる紅花の最後の姿である紅餅を表現。E6系・ E7系のデザイン監修も手がけた、山形出身の世界的な工業デザイナー・奥山清行氏の監修のもと、調整を繰り返し完成にこぎつけました。
こうして手塩にかけた新型車両のデザインを知的財産権で守るべく、E8 系のデザインはすでに、形状の表現を優先した線画バージョンと、カラーリングを含めた色付きバージョンの2パターンで意匠登録済み。JR東日本では知財保護に力を入れており、新型車両の多くは発表前に意匠登録出願を済ませているのだとか。
開発も最終段階に入っている新型車両「E系」。山形を走る光景が今から目に浮かぶようです。
PROFILE
東日本旅客鉄道株式会社
[所在地] 東京都渋谷区代々木二丁目2-2
[TEL] 03-5334-1111
[URL] https://www.jreast.co.jp(外部サイトへリンク)
[設立年] 1987年
[業種] 陸運業
[従業員数] 49,780人