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なるほど!知財セレクション
COMPANYDAIZ株式会社
PRODUCT大豆由来の植物肉原料「ミラクルミート」
生きた発芽大豆から作られた、栄養価が高く、大豆特有の癖のある味が少ない植物肉の原料。特許技術・落合式ハイプレッシャー法により、うま味のもととなるグルタミン酸を通常の大豆に比べて10倍にまで高めるなど工夫し、従来の畜肉に近いおいしさを実現させている。2020年からは、ミラクルミートを使ったハンバーガーや唐揚げなどの製品も販売。現在も改良が重ねられている。
世界人口の増加や気候変動などで食料の安定供給の重要性が増す中、最新技術で食品を開発する「フードテック」への期待が高まっています。肉や魚に代わるタンパク源として有力視される代替肉の分野で注目を集めているのが、DAIZ(ダイズ)株式会社が製造する大豆由来の植物肉原料「ミラクルミート」です。
ミラクルミートを口にした人が驚くのは、その「うま味」。「大豆特有の臭いがある」「味や食感に乏しい」といった従来の植物肉のイメージとは、一線を画した品質が魅力です。この風味は、いかにして実現したのでしょうか。ミラクルミートの生みの親、同社の取締役研究開発部長の落合孝次さんは「多くの植物肉は搾油後の粕の脱脂大豆から作られていますが、弊社が原料としているのは、丸ごと発芽させた生きた大豆です」と、秘密の一端を語ります。落合さんが開発した特許技術「落合式ハイプレッシャー法」で大豆の代謝を活性化させて栄養価を向上させ、うま味を引き出しているのです。
今でこそ、この画期的な植物肉の存在は広く認知されていますが、落合さんは「ミラクルミートに辿り着くまでには長い道のりがありました」と振り返ります。
「私はバイオベンチャーなどで植物の発芽にまつわる研究を30年間続けてきました。数千回に及ぶ発芽実験を繰り返し、2015年に落合式ハイプレッシャー法を特許技術として確立したんです。しかし、技術はあってもそのポテンシャルを生かせる製品づくりがなかなかできなかった。豆腐や豆乳などを開発していたこともありますが、注目を集めるには至りませんでしたね。」
転機が訪れたのは、落合さんがアメリカを訪れた2019年の秋。「スーパーの棚に、牛肉や豚肉と同じように植物肉がずらりと並んでいました。それを目にして、『いずれ日本にも植物肉ブームが来る。特許技術を生かせる製品はこれだ』と確信し、帰国してすぐミラクルミートの研究に着手したのです。」
その後、日本でも植物肉の普及が進み、開発に成功したミラクルミートも順調に売り上げを伸ばしていきます。最近の例では、大手スーパーのPB商品の材料に採用されたり、8月から大手焼肉チェーンのメニューにも使われたりなど、さらに身近なシーンへと浸透しています。
おいしさを武器に代替肉市場そのものの活性化にも貢献しているDAIZ。落合さんは今後の目標をこう語ります。
「たいていのPCにインテルの集積回路が入っているように、ミラクルミートを植物肉の普遍的な原料として普及させることが目標です。機能性があり安価な大豆だからこそ、発展途上国の子どもたちにもお肉のおいしさと栄養を届けることができるはず。地球環境に少しでも貢献できればと思っています。」
PROFILE
DAIZ株式会社
[所在地] 熊本市中央区南熊本5-1-1 テルウェル熊本ビル 4F
[TEL] 096-363-8800
[URL] https://www.daiz.inc (外部サイトへリンク)
[設立年] 2015年
[業種] 植物肉の開発 ・生産 ・ 販売等
[従業員数] 67人