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Vol.55
広報誌「とっきょ」2022年12月19日発行

注目のあの話題を徹底解説!

知財TOPICS

特許や意匠、商標など知財にまつわる注目の最新ニュースについて、弁護士の小林幸夫先生がわかりやすく解説!
今回は10月にオープンした「ビジネス・コート」の話題です。

私が解説します
小林幸夫氏のプロフィール写真

小林こばやし幸夫ゆきお先生

弁護士、弁理士。知財専門弁護士として20年以上にわたり活躍。350件以上の知財訴訟の取り扱い実績がある、知財紛争のエキスパート。講演はこれまでに100本を超え、桐蔭横浜大学法科大学院教授を務めた経験も持つ。

TOPIC
知的財産高等裁判所が移転
中目黒に全国初の「ビジネス・コート」誕生

ビジネスに関連する訴訟を集中的に受け持つ裁判所「ビジネス・コート」が2022年10月、全国で初めて誕生した。ビジネス・コートは東急東横線・東京メトロ日比谷線中目黒駅(東京都目黒区)近くの地上5階、地下1階建ての新庁舎に開設。特許や商標など知財に関する訴訟を扱う高等裁判所の「知的財産高等裁判所」、そして東京地方裁判所でビジネス関連訴訟を扱う「商事部」「知的財産権部」「倒産部」の3部署が、東京・霞が関から中目黒に移転し、機能が集約される。

ビジネス・コート
撮影:小林幸夫先生
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FOCUS
知見やノウハウを一拠点に集積、審理の充実・迅速化を図る

ビジネス関連の訴訟は専門性が高い。そこで審理の充実を図るため、関係部署を集約し、専門家とのつながりを増すなどして、知見やノウハウを蓄積できるようにしたのがビジネス・コートだ。さらに同所では、迅速で質の高い紛争解決を目指し、裁判手続のデジタル化を推進。ビジネス訴訟のグローバル化が進む中、オンラインでの手続が円滑に進められるようウェブ会議用のITブースが設置された他、国際的な会議や講演会などを開催することのできる規模の会議室も整備された。なお、東京での知的財産権紛争は今後ビジネス・コートを中心に審理されることになる。

ビジネス・コートの仕組み
小林先生解説
デジタル化や国際化に対応するビジネス・コートに期待

デジタル化の進行が最近の知財訴訟の傾向で、特徴は大きく二つあります。一つは、新型コロナウイルス感染症の影響で、裁判所の審理は法廷だけではなくウェブ会議でも行われているという点。もう一つは、「民事裁判書類電子提出システム(mints)」の活用により、裁判所や相手方訴訟代理人への裁判書類の提出がオンラインで可能になり、大量のコピー作業が不要になった点です。

また、知財訴訟の件数は減少傾向にあるといわれていますが、紛争自体が減っているわけではなく、むしろ多様化・国際化が進んでいます。そして、知財紛争解決の中心を担うのはやはり裁判所で、その役割は重要です。

そんな中、ビジネス・コートが開設されたことは誠にグッドタイミングだといえます。ハード面で素晴らしい施設が完成したので、ソフト面にも今後大いに期待したいところです。すなわち、“さらなる迅速かつ充実した審理”が行われることが望まれます。審理の精度が上がれば、企業にとっては時間や作業コストの軽減となります。

知財訴訟の迅速化については、これまでにもさまざまな提言がなされ、審理促進が図られてきましたが、ビジネス界のスピードの変化から考えると、十分ではなかったのかもしれません。これには裁判所だけでなく、弁護士などの実務家にも責任があり、審理の迅速化のため、私たちも依頼者と共に努力する必要があると思います。

今後一層迅速かつ充実した審理がビジネス・コートで運営されることになれば、ビジネス・コートが大いに利用され、日本企業の知財に関する知見の蓄積も進むのではないでしょうか。そして、それがひいては、日本の経済力の強化につながるものと期待しています。

大合議法廷
大合議法廷
ITブース
ITブース

出典: https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/2022/202210.photo-businesscourt.pdf(外部サイトへリンク)

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