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こころと体にうれしい 知財セレクション
COMPANY株式会社TESS
PRODUCT足漕ぎ車椅子「COGY」
ペダル付きで、足で漕いで動かす車椅子。脊髄の「原始的歩行中枢」から出る反射的な指令により、片方の足がわずかでも動けば、その後に反対の足が自然に前に出るメカニズムを活用。半田康延東北大学名誉教授と高橋隆行福島大学教授が発明した。SOLID YELLOWとITALIAN REDという明るい色が採用されており、2016年にはグッドデザイン金賞を受賞、これまでに一万台以上が出荷されている。
病気や先天的な障害などで歩行が困難な人に、「自分で自分の体をコントロール」する喜びと尊厳を取り戻してほしいという発想から生まれた製品があります。「片足を動かしたらもう片方の足を動かそうとする」という人間が原始的に持っている反応を生かして移動を実現する、株式会社TESSが開発したペダル付き車椅子「COGY(コギー)」です。
COGYが動く仕組みは、東北大学の半田康延名誉教授によって研究されている、電気刺激や化学刺激によって身体機能の活性化を目指す「ニューロモジュレーション技術」を土台としています。東北大学で開発されていた足漕ぎ車椅子をテレビを介して偶然知った現在のTESS代表の鈴木堅之さんは、この取組に感銘を受け、東北大学に大学ベンチャーでの製品化を提案。見事信頼を勝ち取った鈴木さんは、それまで勤めていた小学校教諭の職を辞し、TESSを起業します。そこから抜本的なデザインの見直し、大幅な軽量化といった改良を図り、販売へとこぎ着けました。現在までに一万台以上のCOGYが出荷されています。
COGYには、通常の車椅子の約5倍となる、1台当たり300ものパーツが使用されています。これらのパーツを組み合わせることで、利用者の微細な足の動きを動力に変換することを可能にしています。また、一見窮屈な座面とペダルの距離も、利用者の身体機能を引き出せるように精緻に計算されたもの。さらに小回りが利くようにと前二、後一輪という車椅子としては珍しいフォルムを採用しています。こうした技術等に関する知財の管理は、大学ベンチャーということもあり、主に東北大学が請け負っており、国内はもちろんのこと海外でも特許を取得しています。鈴木さんは「ノウハウがある東北大学に知財の管理を任せられるからこそ、私たちは技術開発に専念できています」と話します。
鈴木さんの現在の目標は、手で動かす車椅子と、電動車椅子に加えて、足漕ぎ車椅子という第三の選択肢を世の中に浸透させること。そのために販売チャネルの拡充や、認知度を高めるためのプロモーション活動に積極的に取り組んでいます。また、VRを活用した仮想現実空間でリハビリを行う技術開発にも着手。「足漕ぎ車椅子を選ぶのは、どんな環境でも諦めない人。チャレンジすることを応援できる社会をつくっていきたいです」——そう夢見る未来像へ、鈴木さんはCOGYと共に一歩ずつ歩み続けます。
PROFILE
株式会社TESS
[所在地] 宮城県仙台市宮城野区榴岡3-9-15 101号室
[URL] https://www.h-tess.com (外部サイトへリンク)
[設立年] 2008年
[業種] 製造業(介護医療用器具、運搬具等の開発・販売など)
[従業員数] 8人(2023年現在)