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特許庁広報室がユーザー目線で全力取材
今回訪れたのは国際商標登録出願(審査室)です。海外からの商標出願について、審査を担うのがこの部署。審査官(補)およそ30名で年間2万件もの審査をこなす、プロフェッショナルたちでした。
国際商標登録出願(審査室)は、日本で商標権を得るための海外からの出願について、登録できるかどうかの審査を主に行う部署です。海外からの出願には、複数国に一括して出願するマドリッド協定議定書に基づく国際商標登録出願(マドプロ出願)と、国ごとに直接出願する方法があり、私たちが担当するのは前者です。
マドプロ出願の審査には、海外の商標を取り扱うことに特有の複雑さがあります。まず、マークの表示が日本語ではありません。例えば、単なる地名は原則商標登録できませんが、海外の地名はその地名を知らなければ見落とす可能性が高まります。業界内の流行語なども同様なので、普段から海外の文化や流行にアンテナを張るよう心がけています。
言葉の壁もあります。出願などの手続き書類は原則英語。不備を修正する補正も英語でのやりとりが多く、コミュニケーションにはやはり気を使いますね。
それでも、出願人や代理人と丁寧に話し合いを重ねて、無事に登録に至った時の喜びはひとしお。また、審査を通して仮想通貨のような新しいトレンドを知ることも。世界のトレンドにいち早く触れられるのも商標審査という仕事の素晴らしさかもしれません。
日本へのマドプロ出願は年間2万件。新たな出願のみならず、登録に向けた既存出願のフォローを含めると、審査官一人が行う審査は月100件以上に上ることも。商標権はビジネスにとって重要なものなので、よりスムーズにスピーディーに登録できるようこれからも励みます。
[国際商標登録出願(審査室) 佐々木悠源さん]
昨年6月から、世界知的所有権機関(WIPO)が提供するウェブサービスMadrid e-Filingを利用することで、オンラインで商標の国際出願やWIPOへの手数料納付を行うことができるようになりました。
一つの願書で複数国に出願ができ、個別に海外へ申請するよりも翻訳料や代理人手数料などの費用を抑えられます。また、登録後の名義変更や商標権の存続期間の更新も一括して行うことが可能です。
マドリッド制度は現在、日本を含めた130カ国をカバーする114の国と機関で構成されています。マドプロ出願でなら、この130カ国のどこにでも一括して出願することができます。