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Vol.62
広報誌「とっきょ」2024年10月28日発行

注目のあの話題を徹底解説!

知財TOPICS

特許や意匠、商標など知財にまつわる注目の最新ニュースを、専門家が分かりやすく解説! 今回は、ゲームアプリと睡眠管理アプリの両方の顔を持つ『Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)』の独創性を支える特許技術を深掘りします。

TOPIC
日本の平均睡眠時間は7カ国中最下位。
「睡眠不足」の社会課題が改めて裏付けられる
世界7カ国の『Pokémon Sleep』プレイヤーの睡眠調査結果を発表

株式会社ポケモンは、2024年7月20日に配信1周年を迎えた睡眠ゲームアプリ『Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)』 の最新プレイデータを基に、「世界7カ国の『Pokémon Sleep』プレイヤーの睡眠調査」を実施。同アプリは全世界累計で2000万ダウンロードを超え、計測されたプレイデータは5億回以上の睡眠の回数に当たる(2024年7月時点)。調査では、世界7カ国※のプレイデータから、国別の平均睡眠時間を算出。7カ国の平均睡眠時間7時間11分に対し、日本の平均睡眠時間は6時間38分で最下位という結果になった。経済協力開発機構(OECD)が2021年に発表した統計でも、先進国を中心にした世界33カ国で日本の平均睡眠時間が最も短いというデータが出ており、日本社会の睡眠不足が改めて浮き彫りとなった。

※世界7カ国(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ)を対象として算出/株式会社ポケモン調べ

世界7カ国の平均睡眠時間ランキング
QUESTION ここが知りたい!
特許技術が『Pokémon Sleep』の独創性に貢献している要素は?

『Pokémon Sleep』は、「朝起きるのが楽しみになる」をコンセプトに掲げた、睡眠ゲームアプリ。スマホを枕元に置いて睡眠計測を行い、「うとうと」「すやすや」「ぐっすり」の睡眠タイプに応じて集まってくるポケモンのさまざまな寝顔を集めることを楽しめる。睡眠リズムに応じてスコアが評価されるなど、睡眠とゲームを組み合わせたユニークな設計思想が特徴。ポケモンのブランドマネジメントを行う株式会社ポケモンの特許技術には、『Pokémon Sleep』の仕様と関連性が高いものがあり、アプリの独創性に貢献していると考えられる。

『Pokémon Sleep』のイラスト
©2023 Pokémon. ©1995-2023 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
Pokémon Sleep is developed by SELECT BUTTON inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
ANSWER 私が解説します!

解説

株式会社ポケモン 統括本部
法務部 ディレクター(特許担当)

新井あらい 健祐けんすけ

2018年入社、法務部に配属。21年より現職。15年以上にわたりアミューズメント関連の特許業務に従事。一級知的財産管理技能士(特許専門業務)。特許検索競技大会(2014年)個人の部ゴールド認定取得。

「睡眠×ゲーム」という独自ジャンルならではの技術を戦略的に特許化し、さらなるアプリの進化をサポートしていきます

『Pokémon Sleep』が、既存の睡眠計測アプリやデバイスと大きく異なるのは、「遊び」がコアになっており、継続の動機付けに結び付いていることです。アプリの利用頻度を示す指標であるDAU/MAU比率を見ると、他のアプリよりも極めて高く、多くのユーザーが継続してプレイしてくれていることに手応えを感じています。特許技術もゲームの特徴に貢献していますので、その幾つかをご紹介します。

①睡眠タイプの決め方(特許7316992号)

「睡眠タイプ」によって出現するポケモンが異なるため、「睡眠タイプ」が固定化されないよう、自分の過去の睡眠データとの比較で判定するようにしています。今日はどんなポケモンが出現するかなというランダム性を楽しみつつ、日々の睡眠の特徴のチェックにも使えるようにしました。本アプリを象徴する特許技術の一つです。

②1週間単位でリセットされるパラメーター(特許7330413号)

月曜日を起点にして、日曜日が最大値になるようにパラメーターを蓄積していき、1週間でリセットされて次の1週間が始まります。ある種チャレンジングな設計でしたが、パラメーターのインフレを適切にコントロールすることで、ユーザーを飽きさせず、継続率の高さに結び付いているのではと考えています。パラメーターが高いほど珍しいポケモンの寝顔を見つけやすいのですが、リセット前の最大値のパラメーターが月曜日の朝のポケモンの寝顔リサーチに反映されるため、気分が上がりにくい休日明けの月曜日の朝を、「最も珍しい寝顔に出会えるチャンス」と楽しみに迎えられるのは、本アプリのユニークな要素だと思います。

③昼間に触らなくてもゲームが進行する機能(特許7383769号)

「放置ゲーム」と呼ばれるジャンルでも、通常は数時間に1回はプレイに戻る設計になっていますが、『Pokémon Sleep』は極端に言えば、起床時と就寝前に1回ずつアプリを開けばポケモンの育成が進み、成果が回収できるようになっています。ユーザーの可処分時間を奪わずに楽しさを継続させるこの特有の仕様は、普通のゲームではまずあり得ない発想で、睡眠とゲームという組み合わせだからこそ可能になったともいえます。

④一緒に寝た時間によって能力が上がる機能(特許7534837号)

これは先日リリースされた「おやすみリボン」という機能関連の特許です。一緒に寝た時間が蓄積されることでポケモンの能力がアップするという、ポケモンとのつながりや思い入れが深まる仕組みで、今回のアップデートに合わせて、特許を取得しました。

弊社としても『Pokémon Sleep』に関しては、独自ジャンルのリードランナーとして、製品の核となる技術を戦略的に特許化する方針をとっています(同時に、ゲームの仕様に直結する情報にもなり得るので、特許出願のタイミングは慎重に見定めています)。このように、さまざまな可能性を秘めた特許技術の権利化体制が整っていますので、事業部門のアイデアから生まれる新しい機能の権利化を継続し、今後もアプリの進化のサポートを続けていければと考えています。

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