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Vol.62
広報誌「とっきょ」2024年10月28日発行

知財が創る未来

ふくしまイノベーション 企業ファイル

2024年1月、特許庁は福島県及び公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構と、知的財産の保護及び活用に関する連携協定を締結しました。知財で福島の新しい時代を切り開く企業やプロジェクトを紹介します。

FILE#02 合同会社ねっか

合同会社ねっか
[代表社員] 脇坂斉弘
[住所] 福島県南会津郡只見町大字梁取字沖998
[従業員数] 8名
[URL] https://nekka.jp (外部サイトへリンク)

独自技術を生かした酒造りで只見町の田園を次代にリレー

ユネスコエコパークにも認定された豊かな自然を誇る福島県只見町で、特産品の米を100%使用した焼酎造りなどを行っているのが、2016年7月に設立された合同会社ねっかです。代表社員の脇坂斉弘さんに話を聞きました。

「只見町の田園風景を次世代に引き継ぐため、米作りに新たな価値を加えようと米農家が中心となり創業しました。夏は農業、冬は酒造と通年雇用を生み出すことで、IターンやUターンの増加にもつながるのではという発想で、地域の特産品を主原料とした『特産品しょうちゅう』を造る焼酎蔵としてスタートしました。社名の由来は、奥会津の方言『ねっかさすけねえ(全然大丈夫)』から。前向きな気持ちで頑張ろう、という想いを込めました」

こうして生まれた米焼酎「ねっか」は、フルーティーな吟醸香が極めて高いことが魅力。そして次に、2021年5月に「輸出用清酒製造免許」の第一号となる交付を受けて、日本酒造りも始めました。

「海外に日本酒を輸出する際の最大の課題は、品質の劣化です。そこで、江戸時代の『柱焼酎』という製法を参考にして、吟醸香を生むカプロン酸エチルの豊富な『ねっか』を醸造用アルコールとして日本酒に添加し、香りのコントロールをしつつ風味が劣化しない技術を開発しました。福島県ハイテクプラザや福島県の知財総合支援窓口(INPIT)などに支援をいただいて、特許も取得(※)しました」

特許の恩恵は、さまざまな場面で実感するとのこと。

「たとえば米国への輸出において、酒税法の関係で値段が高くなってしまっても、『特許技術に基づく製法だから』と説明すれば、バイヤーに納得してもらえるのです」

今年に入り、日本酒の醸造技術と焼酎の蒸留技術を融合させ、搾った甘酒を添加する独自製法のリキュール「HOBO(ホボ)」も新発売。さらに来年から米を使ったウイスキー造りも予定しています。

「弊社のコアは、あくまで只見町の米。地域の農家と『只見米ブランド 協議会』を立ち上げ、JGAP認証(安全かつ効率的な農場管理に対する第三者認証)をとった米の魅力のPRに努めていきます。その一環として、米を使ったアルコール飲料のラインナップもさらに充実させていきたいですね」

※特許第7128561号

米焼酎「ねっか」
[1]米焼酎「ねっか」の吟醸香を生むのが、カプロン酸エチルという香り成分。福島県ハイテクプラザの技術支援を受けて「ねっか用酵母」を実用化し、開発当初の5倍規模の香りを実現
「流觴」と「HOBO」
[2]「輸出用清酒製造免許」の第1号「流觴(りゅうしょう)」。香港を最初のターゲットに定め、現地で好まれるテイストを絞り込み、ネーミングも香港市場を意識したものにした [3]「ほぼ日本酒」のリキュール・「HOBO(ホボ)」。醪(もろみ)を搾った日本酒に、醪を蒸留させた米焼酎を醸造用アルコールとして添加、搾った甘酒を加える独自製法(特許出願中)
POINT
焼酎のタイムカプセルを、20歳を迎えた只見町の子どもたちへ

只見町には現在3つの小学校があり、小学5年生の「地域学」の授業で、生徒全員が弊社に関わってくれます。田植えや稲刈りを体験し、地元の米のおいしさを味わうことで地域の魅力を知った子どもたちが、学習発表会などの機会を通じて親世代を啓発したり、情報発信したりしてくれるのです。子どもたちのほとんどは、成人前に外の地域に出てしまいます。そこで弊社は、訪問してくれた小学5年生の子どもたちに、20歳になる9年後の贈り物として、焼酎を仕込んでいます。2025年夏に20歳を迎える子どもたちが、この企画の第一世代。「はたちの集い」で只見町に集まった時に、故郷を想い出すタイムカプセルとして焼酎を渡せる日を、今から心待ちにしています。(脇坂さん)

小学5年生の「地域学」の授業 田植えの様子
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