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特許庁総務部国際課
4月17日に、我が国の呼びかけで、APECにおけるはじめての知的所有権会合がシンガポールで開催されました。「集まれるものはみんな集まろう」の意味も込めて「ゲット・トゥゲザー」と名付けました。APECの国又は地域の知的所有権・貿易関係者など約50名が参加しました。(議長は高倉国際協力官)。
この会合は、21世紀のビジョンである「大阪行動指針」の第一歩であると同時に、アジア太平洋地域が、知的所有権分野の国際的議論において発信源になりうる新たなフォーラムの形成として、大きなインパクトを持つものと評価することができます。
APEC(アジア太平洋経済協力)は、開かれた地域協力を理念とし、貿易投資の自由化・円滑化と経済・技術協力の推進を目的とする。アジア太平洋地域の政府間経済協力フォーラムです。毎年開催される閣僚会議を頂点に、高級事務レベル会合、貿易投資委員会、その他各種のワーキンググループを中心に活動しています。現在、日本、韓国、中国、チャイニーズタイペイ(台湾)、香港、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、インドネシア、パプア・ニューギニア、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、米国、メキシコ、チリの18の国又は地域が参加しています。
昨年11月の大阪閣僚会合で、中長期的な視点に立つ総合的な行動指針(「アクションアジェンダ」)がとりまとめられました。この中で、貿易投資の自由化円滑化に関連して、15の分野で協調的な行動や共同の行動が規定されました。その15分野の1つに「知的所有権分野」が含まれています。
具体的には、知的所有権分野の共同行動として、「知的所有権政策に関する対話の深化」「周知商標に関する情報交換」「行政手続きの簡素化・標準化を目指した情報交換」「効果的な権利の行使のための研究」「TRIPS協定の実施と技術協力の推進」など7項目が挙げられています。
今年2月の貿易投資委員会で、15分野のとりまとめ役(「コンビーナー」とよばれています)が決定されましたが、我が国は知的所有権分野のコンビーナーに選任されました。その主な役割は、共同行動の進め方を具体的に明らかにし、各メンバーの共同行動の一覧表である「マトリックスレポート」を作成することにあります。そのレポートの完成と、かく行動の実施の管理も重要な役割です。
知的所有権分野は専門的な分野であるにもかかわらず、これまでAPECの中に専門のフォーラムがなかったことから、我が国は、貿易投資関係者に知的所有権の専門家も交えた新しい会合として、「ゲット・トゥゲザー」の開催を提案しました。これは貿易投資委員会での審議に先立つ予備的・専門的検討の場という位置づけです。4月18日、19日の第2回貿易投資委員会では、多くのメンバーから「効率的で専門的な議論の成功例」として高く評価されました。
今回の会合では、主に7項目の共同行動の「マトリックスレポート」のフォーマットについて検討しました。この検討は、各共同行動の理念(WHY)と方法(HOW)と時期又はステップ(WHEN/STEPS)を我が国の考えで整理した「イニシャルソート」と呼ぶ作業文書をベースに行いました。他の既存のフォーラムとの関係や、実施時期の柔軟性に議論が集中しましたが、ASEAN諸国を含め、ほとんど全てのメンバーの知的所有権強化の必要性と重要性に対する認識が一致し、我が国の作成した「イニシャルソート」は「マトリックスレポート」とともに一般的支持を得ました。
例えば、「知的所有権政策に関する対話の深化」に関して、第一段階で各メンバーがセミナーやシンポジウムを開催すること、第2段階では「APEC専門家会合」による政策対話を進めること、第3段階で知的所有権関連大臣会合にまで政策議論を高めること、更にその議題として、ポスト・TRIPS協定も見据えてデジタル通信やバイオテクノロジーなどの新技術分野の登場が知的所有権保護に与えうるインパクトを議論しておくことなど、積極的な提案を行いました。
5月18日にフィリピンのセブで第2回目の「ゲット・トゥゲザー」を開催し、マトリックスレポートを提出してもらい、我が国がとりまとめを行い、7月の貿易大臣会合(ニュージーランド)で中間報告、最終的には11月の閣僚会合(フィリピン)に最終報告を提出する方向で検討を進めることとしています。
今多くのアジア途上国は、先進国からの投資貿易の一層の推進と、新たな成長をめざして、西暦2000年までの猶予期限を待つことなく、TRIPS協定の実施に着手しています。特にASEAN諸国は、「共同特許庁」の設立も視野に入れた域内協力を意欲的に進めています。このようなアジア諸国と太平洋先進国が一堂に会して、知的所有権問題を南北対立問題としてではなくて、地域協力と自主的強調の推進のために議論するフォーラムが形成されたことは特筆すべきことと思います。そのリード役を課せられた我が国の責務と期待にも大きなものがあると自覚しています。
[APEC知的財産権分野の活動]からリンク
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