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第3回APEC知的財産権会合(APEC IPR Get-Together)

特許庁総務部国際課

1996年8月26,27日の2日間にわたり、東京のホテルにおいて、第3回知的所有権会合が開催されました。

1. 背景

APECとは

APECとは、アジア太平洋地域の18の国・地域をメンバーとして、貿易投資の自由化、円滑化及び経済技術協力をめざす地域フォーラムです。米国、カナダ、オーストラリアのような先進工業国と世界の成長センターと言われるアジア諸国を含む発展途上国が共通の目標をめざして協力しあうという画期的なもので、日本もそのメンバーになっています。

大阪行動指針

1995年11月のAPEC大阪閣僚会議において、中長的な視点に立った総合的な行動指針がとりまとめられました。この中で、貿易投資の自由化円滑化に関連して、15の分野で協調的な行動計画が規定され、その1つに「知的所有権分野」が取り上げられました。
知的所有権が一分野に挙げられていることは、それが国際貿易・投資の発展に欠かせないものであることを示していると言えます。
知的所有権分野の共同行動として具体的に以下の7項目が挙げられています。

APECにおける知的所有権分野の共同行動の項目

  1. 「メンバー間の対話の深化」、
  2. 「メンバー内の知的所有権保護に関する調査」、
  3. 「知的所有権関連機関の連絡先リストの作成」、
  4. 「周知商標に関する情報交換」、
  5. 「行政手続きの簡素化・標準化」、
  6. 「効果的な権利の試行のための検討」、
  7. 「TRIPS協定実施と技術協力の推進」。

2. 過去の会合における検討状況

知的所有権会合の位置づけと検討経緯

今年は、我が国が知的所有権分野のとりまとめ国となっており、各メンバーの協力の下、これらの共同行動の具体的計画を完成させることになっています。知的所有権会合は、各メンバーの知的所有権分野の専門家が集まって、専門的、具体的な検討を行う場であり、特許庁の高倉成男国際協力官が議長役を務めています。今までに開催された知的所有権会合は以下の通りです。

  • 第1回 4月(シンガポール)
    主要検討項目の今後の具体的方針に関する合意
  • 第2回 5月(フィリピン)
    具体的行動計画の実施スケジュールの合意
  • 第3回 8月26,27日(東京)
    行動計画の決定、行動計画の実行への移行

共同行動をとりまとめた「マトリックシレポート」

7項目の共同行動に関する各メンバーの具体的貢献を整理したものを「マトリックス レポート」と呼んでいます。このマトリックスレポートは、各共同行動を縦軸に各メンバーを横軸にとって、各共同行動に対する各メンバーの貢献(共同行動の実現のために各メンバーがどのようなことを実施していくのか)が一覧となっているもので、今年の11月のAPEC首脳会議に提出されるものです。

「イニシャルソート」と「ワークプラン」

とりまとめ役を務める我が国は、共同行動の意義、実施のための具体的ステップについて説明したイニシャルソート(Initial Thoughts)と呼ばれる文書を提案し、第2回会合で合意が得られました。また、具体的な行動に着手するため、共同行動の具体的内容及びその実行時期をより明確にした「ワークプラン」についても、第2回会合において各メンバーの合意が得られました。
「イニシャルソート」、「ワークプラン」及び合意された統一フォーマットに基づき、各メンバーは8月中旬に、共同行動に関する各自の具体的貢献を記入したマトリックスレポートを完成させ、議長に提出しました。

3. 今回の会合の論点と結果

今回の会合は、8月28,29日に東京で開催されたAPEC知的所有権シンポジウムの直前に開催されたため、出席者が従来より多く、50人近くの代表が集まりました。また、知的所有権の専門家が多く出席し、共同行動の実行に関して、密度の濃い議論が可能となりました。
会合では、共同行動の項目毎に、検討及び実行のイニシアティブをとるリード国が選出されました。
また、項目毎に以下のような具体的行動を実施していくことが合意されました。

(a)メンバー間の対話の深化(リード国:日本)

この共同項目は、知的所有権に関する会合、セミナー等を企画し、またこれらに参加することによって、APECメンバーの知的所有権政策や運用に関する対話を深めることを目的としています。今後は、各種の会合、シンポジウム、セミナー等を積極的に開催するとともに、会合等の開催予定に関する情報をメンバー間で常に共有することにより、対話を積極的に促進していくことになりました。

(b)メンバー内の知的所有権保護に関する調査(リード国:オーストラリア)

この共同行動項目は、APEC各メンバーの法制度の現状を調査し、知的所有権保護の現状を把握する事を目的としています。既に、ほとんどのメンバーが情報を提出済みで、今年中に調査結果がまとめらる予定です。

(c)知的所有権関連機関の連絡先リストの作成(リード国:オーストラリア)

この行動共同項目は、知的所有権に関する政府組織及び民間機関のコンタクト先のリストを作成し、相互の情報交換・意見交換を促進させることを目的としています。8月の時点で、このリストは完成しており、1997年1月よりAPEC事務局のインターネットホームページ(http://www.apecsec.org.sg)に掲載される予定です。

(d)周知商標に関する情報交換(リード国:タイ)

周知商標の保護義務は、パリ条約やWTO・TRIPS協定に規定されています。また、この共同行動項目は、APEC各メンバーの周知商標の保護基準の比較検討を行い、適切な周知商標の情報交換の実施方法について、リード国であるタイが提案書を作成し、各メンバーがその提案書について意見を提出することになっています。

(e)行政手続きの簡素化・標準化(リード国:米国)

この共同行動項目は、特許や商標の出願の手続を簡素化・標準化することにより、統一的な手続の実現を目指すことを目的としています。これは、APEC各メンバーの知的所有権庁のみならず、APECワイドでグローバルな特許や商標の出願活動を行う出願人・代理人にも利益をもたらします。今後は、米国が提案している商標出願制度の簡素化・標準化の検討に供するため、各メンバーが商標出願手続の現状につき情報を提出することになっています。

(f)効果的な権利の執行のための検討(リード国:メキシコ)

この共同行動項目は、エンフォースメントに関する問題点を互いに出し合い、自主的解決策を提示しまた協調して解決策の研究を行うとともに、不正商品の取り締まりに関して、データの交換、事例研究を行うことにより、適切なエンフォースメントのための法的整備とその実行を達成することを目的としています。
今後は、メキシコが提案した各メンバーのエンフォースメント制度に関する情報を提出するためのフォーマットにつき意見を出し、その後情報交換を行うこととなっています。

(g)TRIPS協定実施と技術協力の推進(リード国:日本(暫定的))

APEC各メンバーは、2000年までにWTO・TRIPS協定の完全実施を目指すこととなっています。この共同行動項目では、APECメンバー相互の技術協力を効率的に推進することにより、途上国メンバーの知的所有権制度の強化を実現することを目的としています。
今後は、TRIPS協定実施状況を明らかにし、また、技術協力の可能性と要望について情報を交換するために、日本がその実施方法につき提案書を用意し、意見を求めることとなっています。その後、情報交換を実施する予定です。

4. さいごに

APECの18メンバーは、先進工業国から発展途上国までさまざまな立場にあり、多様な意見が出ました。が、立場の違いを乗り越え相互理解を深めた上で、合意が得られたことは大きな成果であり、今後の作業も円滑に行われているものと期待されています。
今後の予定としては、共同行動の進捗状況の確認のために、来年の早い段階で知的所有権会合を開くことが合意されています。
今後とも、我が国がとりまとめ国としての責任を果たし、我が国経済と密接に関連するアジア太平洋地域で、知的所有権制度がより一層発展すべく協力していく所存です。

[APEC知的財産権分野の活動]からリンク

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