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97年第1回APEC知的財産権会合(APEC IPR Get-Together)の報告

特許庁総務部国際課

97年2月24、25日間にわたり、タイ・プーケットにおいて、97年第1回知的所有権会合が開催されました。

1. 背景

APECとは

APECとは、アジア太平洋地域の18の国・地域をメンバーとして、貿易投資の自由化、円滑化及び経済技術協力を目指す地域フォーラムです。米国、カナダ、オーストラリアのような先進工業国と世界の成長センターと言われるアジア諸国を含む発展途上国が共通の目標を目指して協力しあうという画期的なもので、日本もそのメンバーになっています。昨年11月には、フィリピンでAPEC経済首脳会議が開かれ、APECマニラ行動計画(MAPA96)が承認されました。知的所有権分野の共同行動としては以下の7項目が挙げられており、それぞれの段階的計画が示されています。

APECにおける知的所有権分野の共同行動の項目

  1. 「メンバー間の対話の深化」、
  2. 「メンバー内の知的所有権保護に関する調査」、
  3. 「知的所有権関連機関の連絡先リストの作成、
  4. 「周知商標に関する情報交換」、
  5. 「行政手続きの簡素化・標準化」、
  6. 「効果的な権利の執行のための検討」、
  7. 「TRIPS協定実施と技術協力の推進」

知的所有権会合の位置づけと検討経緯

今年は昨年に引き続いて、我が国が知的所有権分野のとりまとめ国となっており、各メンバーの協力の下、これらの共同行動計画を実施していくことになっています。知的所有権会合は、各メンバーの知的所有権分野の専門家が集まって、専門的、具体的な検討を行う場であり、特許庁国際課の高倉成男国際協力官が議長役を務めています。昨年は3回の知的所有権会合が開催され、上記知的所有権分野共同行動計画の原案を作成しました。

2.今回の会合の論点と結果

今回の会合には、マレーシア、ニュージーランドを除く16カ国から50人近くの代表が集まりました。項目毎に以下のような具体的行動を実施していくことが合意されました。

(a)メンバー間の対話の深化(リード国:日本)

各メンバーが、今後予定している対話の深化のためのシンポジウム、セミナー等の会合の一覧表をAPECホームページに載せることが了承されました。そして暫定的に本共同行動のリード国である我が国の特許庁のホームページにこの一覧表を載せるとともに、APECホームページとリンクを設けることも了承されました。

(b)メンバー内の知的所有権保護に関する調査(リード国:オーストラリア)

この関係法令及びその関係省庁に関する調査は、メンバー毎に知的所有権別の関連法令及び所管官庁を一覧表にしたもので、11メンバーが既に提出済みでありその結果がとりまとめられています。
さらに「関連する判例、行政上のガイドライン及び関係機関」の調査をオーストラリアが提案し、基本的にはメンバーの支持が得られました。今後オーストラリアが提案し、基本的にはメンバーの支持が得られました。今後オーストラリアが調査票の改訂及び記載例を用意し、各メンバーが6月末までに調査結果を提出する旨合意されました。

(c)知的所有権関連機関の連絡先リストの作成(リード国:オーストラリア)

知的所有権関連の政府、民間機関の連絡先リストは、既に完成し、APEC事務局のホームページ(http://www.apecsec.org.sg)に記載されています。このホームページには前述のMAPA96を始めとするAPECにおける主な成果物が掲載されています。リストは毎年7月と1月に更新することで合意が得られました。

(d)周知商標に関する情報交換(リード国:タイ)

周知商標の運用に関する各メンバーへの質問票についてのタイ提案に対し、現時点での周知商標リストの利用可能性、周知商標権者の情報提供の可能性、判例法、行政ガイドライン下での保護等の質問項目を追加すべきとの意見が出されました。これを踏まえ、タイは質問票を修正し、各メンバーは6月末までに質問票に回答することが合意されました。
さらに、タイ提案の質問票に各メンバーの周知商標の保護状況につきサマリーペーパーを添付する事が合意されました。

(e)行政手続の簡素化・標準化(リード国:米国)

<商標出願メールボックス制度>

米国提案の商標出願メールボックス制度について、米国より説明がありました。この制度の下では、出願人が本国の特許庁に出願すると、指定国の出願日要件を満たすことを条件として、全ての指定国における出願の効果が得られ、出願書類が本国の特許庁から指定国の特許庁に自動的に送付されるというもので、本国の特許庁を自宅の郵便箱(メールボックス)のように用いるというものです。(なお、米国では、自宅の郵便箱へ郵便物が配達されるとともに、郵便箱につけた郵便物は回収されて郵送してもらえるのです。
本制度への参加は各メンバーの意志によることが確認されました。マドリッド協定及びその議定書に比べて特段の利点がない等の意見も出ましたが、オーストラリア等は出願人の利益に資するとの観点から米国提案を支持し、今後とも検討を続けていくことで一致しました。結論として米国が次回会合までに議論のたたき台とするための多国間取り決めのサンプルを作成することで合意しました。

<IP情報モール>
我が国は、各メンバーが工業所有権情報のデータベースを構築し、このデータベースを各メンバー毎のホームページ間にリンクを張るというIP情報モールを提案しました。この提案の方向性につき各メンバーの支持が得られました。各メンバーがファックスで我が国にコメントを提出し、我が国が次回会合までに修正提案を用意することで合意しました。

<知的所有権行政に関する情報交換>
メキシコが提案した「知的所有権行政に関する情報交換」は、簡素化、標準化すべき行政手続を特定するために、各メンバーの特許、商標、著作権に関する行政手続きの現状について調査するというものです。これに関しメキシコが記載例を準備し、各メンバーのコメントを求め、次回会合までに修正提案を用意されることで了承されました。

(f)効果的な権利の執行のための検討(リード国:韓国)

韓国がリード国を引き受けることが了承されました。各メンバーはTRIPS協定の実施及び技術協力の提供・要請に関する情報を昨年中に提出することになっていましたが、会合までに10メンバーが提出済みでした。韓国は、未提出メンバーに対して早期の提出を要請しました。
オーストラリアは、国内法体系の中での知的所有権の枠組みの位置づけに関する質問票を提案しました。これは各メンバーの法体系を明らかにすることにより、法体系がにているメンバーから技術協力を受けることが可能となり、協力の円滑化に資するというものです。オーストラリア提案に基づき韓国が修正案を作成し、各メンバーは6月末までにこの質問票を完成させることが了承されました。
共同行動以外の論点についても検討が行われました。主なものは以下の通りです。

<知的所有権分野に関するABAC提言>
各メンバーの民間の代表からなるAPECビジネス諮問委員会(ABAC)は、昨年APEC経済首脳に対し、数々の提言をしました。知的所有権関連では3つの提言をしています。それは「(1)APEC共同特許・商標機構の成立」「(2)知的所有権の包括的協力プログラムの設立」及び「(3)可能な限り短期間でのTRIPS合意(WTO非加盟国について同等の義務)の履行です。この提言について、優先度の設定、実施方法を検討しました。(2)、(3)の提言については、現在の共同行動計画の着実な実施により達成されるとの認識で一致しました。一方(1)の提言については、むしろ長期的目標と位置づけるべきであり、周知商標に関する情報交換(共同行動d)及び行政制度の簡素化・標準化(共同行動e)における議論等を通じステップ・バイ・ステップで実行して行くべきとの意見で一致しました。

<次回以降の会合>
チャイニーズ・タイペイが、7月後半に予定されているAPEC知的所有権エンフォースメント・シンポジウムと前後して次回会合をタイペイで開催することを提案し、支持されました。また、この会合は、APECの一機関である貿易投資委員会の下部組織で非公式なものという位置付けでしたが、途上国を中心に名前を変えて公式化したいという意見が出され、今後の検討課題となりました。

2. さいごに

APECの18メンバーは、先進工業国から発展途上国まで様々な立場にあり、多様な意見が出ましたが、立場の違いを乗り越え相互理解を深めた上で、合意が得られたことは大きな成果であり、今後の作業も円滑に行われているものと期待されています。
今後とも、我が国がとりまとめ国としての責任を果たし、我が国経済と密接に関連するアジア太平洋地域で、知的所有権がより一層発展すべく努力していく所存です。

[APEC知的財産権分野の活動]からリンク

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