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第5回APEC知的財産権会合(APEC IPR Get-Together)の報告

特許庁総務部国際課

はじめに

97年7月21、22日の2日間にわたり、台湾・台北において、第5回知的所有権が開催されました。今回の会合は、7月18,19日に台北で開催された「知的所有権エンフォースメントシンポジウム」に引き続いて行われました。参加者も昨年8月の東京会合と同様にハイレベルで、その数も50人を越えるました。この会合も完全に定着し、今回初めてAPEC18の全メンバー国の代表がそろいました。
なお、台湾で知的所有権の国際会議が開催されたのは初めてのことで、シンポジウムには経済部のワン大臣が参加し、知的所有権への取り組みの積極性をアピールすると共に、我が国特許庁への謝意を表明しました。

1.背景

APECとは

APECとは、アジア太平洋地域の18の国・地域をメンバーとして、貿易投資の自由化、円滑化及び経済技術協力を目指す地域フォーラムです。米国、カナダ、オーストラリアのような先進工業国と世界の成長センターと言われるアジア諸国を含む発展途上国が共通の目標を目指して協力しあうという画期的なもので、日本もそのメンバーになっています。昨年11月には、フィリピンでAPEC経済首脳会議が開かれ、各国毎に、或いはメンバーが共同して行うことを具体的に纏めたAPECマニラ行動計画(MAPA96)が承認されました。

知的所有権会合の位置づけと検討経緯

我が国は知的所有権分野のとりまとめ国となっており、各メンバー協力の下、共同行動計画を実行していくことになっています。知的所有権会合は、各メンバーの知的所有権分野の専門家が集まって、専門的、具体的な検討を行う場であり、特許庁国際課の高倉成男国際協力官が議長役を務めています。これまでに4回の知的所有権会合が開催されました。昨年は、上記知的所有権分野共同行動計画を策定しました。本年になってからは、具体的な実施段階に入り、連絡先リストのインターネットでの公開等、既に成果が出ている項目もあります。

1.今回の会合の論点と結果

共同行動の項目毎に、以下のように具体的成果を確認し、また今後の作業を実施していくことが合意されました。

(a)メンバー間の対話の深化(リード国:日本)
IPR関連の行事は、日本のホームページに掲載され、この情報はAPEC事務局のホームページ(http://www.apecsec.org.sg)にもリンクされサービスされています。このことに関して、APEC事務局が各メンバーに対し、半年毎(4月と11月)にアップデートされた情報をもとに日本は年2回(1月と7月)行事予定表を更新することが合意されました。

(b)知的所有権保護に関する調査(リード国:オーストラリア)
12メンバーが既に提出済みの「関係法令及びその関係省庁の」結果を、情報の正確性を慎重に検討した上でインターネットを通じて公開することが合意されました。
また、上記調査に引き続いて行われている「関連する判例、行政上のガイドライン又は関係機関」については、各メンバーが調査結果を9月末までに提出し、豪州は11月初めまでにこれをまとめることが合意されました。これに関連して、豪州は9月末までにプログレス・レポートを作成することとなりました。

(c)連絡先リストの作成(リード国:オーストラリア)
昨年完成した知的所有権関連の政府、民間機関の連絡先リストについても、APEC事務局のホームページに掲載されています。リストは毎年7月と1月に更新することになっています。APEC事務局から、本件リスト作成のため予算のあまりを公開費用にうまく使えないかとの提案があり、豪州が9月末までに本件に関する具体的提案を作成することとなりました。

(d)周知商標に関する情報交換(リード国:タイ)
周知商標の保護に関する質問票に関して、前回会合後に各メンバーから寄せられたコメントを踏まえた改訂版について、タイより説明がありました。各メンバーは8月末までに再度コメントを提出し、これに基づいてタイは11月末までに質問票の作成を仕上げることが合意されました。

(e)行政手続きの簡素化・標準化(リード国:米国)

<商標出願メールボックス制度>

商標出願メールボックス制度とはこの制度の下で出願人が本国の特許庁に出願すると、指定国の出願日要件を満たすことを条件として、全ての指定国における出願の効果が得られ、出願書類が本国の特許庁から指定国の特許庁に自動的に送付されるというもので本国の特許庁を自宅の郵便箱(メールボックス)のように用いるというものです。(なお、米国では、自宅の郵便箱へ郵便物が配達されるとともに郵便箱につけた郵便物は回収されて郵送してもらえるのです。)今回会合では、議論のたたき台とするための多国間取り決めのサンプルが提示されました。
これに対し、いくつかのメンバーが、本プロジェクトを有意義なものにするためには全メンバーが参加することが重要であると強調しました。又、この他各メンバーからは、商標出願プロセスの簡素化の方法を探る上で本提案は有益であるが、APEC域内にメールボックス制度を作る場合の法的、経済的、技術的な困難性、及び既存の国際的な枠組みとの重複等について、さらなる議論が必要であるとの意見が出されました。
結局、各メンバーは本提案に対するコメントを8月末までに提出し、米国は更なる議論のために12月末までに修正提案を作成することとなりました。

<知的所有権行政に関する情報交換>

メキシコが提案した「知的所有権行政に関する情報交換」は、簡素化、標準化すべき行政手続きを特定するために、各メンバーの特許、商標、著作権に関する行政手続きの現状について調査するというものです。今回会合で承認された質問票に対して、各メンバーは9月末までに回答を提出し、墨は11月初めまでに調査結果をとりまとめることで合意されました。また、墨は9月末までにプログレス・レポートを作成することとなりました。

<IP情報モール>

本プロジェクトの最初の成果として、既存の各メンバーの工業所有権庁ホームページを日本の特許庁のホームページにリンクさせ、これをAPEC事務局のホームページにもリンクさせることが合意されました。IP情報モール―クイックリンク・マトリクスという名称で、8月11日、実際に特許庁のホームページに掲載されました。

いくつかのメンバーより、本プロジェクトの促進及び拡大に関する今後の議論はAPECの原則に沿うよう注意深く行われるべきであり、技術支援のプログラムも検討されるべきであるという意見が出されました。
最終的に各メンバーは本件提案に対するコメントを8月末までに提出し、日本は11月までに修正提案を作成することが合意されました。

(f)効果的な権利の執行のための検討(リード国:メキシコ)
各メンバーのエンフォースメント制度に関する情報を提出するための質問票に対して、7か国のメンバーから回答を提出済みである旨報告されました。未提出メンバーは遅くとも8月末までに回答を提出し、墨は10月末までにとりまとめることとなりました。

(g)TRIPS協定実施と技術協力の推進(リード国:韓国)
TRIPS協定の実施及び技術協力の提供・要請に関する情報に関しての質問票を既に16のメンバーが提出済みであることが報告されました。未提出メンバーは8月末までに提出し、韓国は9月末までに提出された情報をとりまとめ、技術協力の推進についての最初の提案を準備することとなりました。また、二国間のあるいは多角的な技術協力については、協力が行われるべき分野が特定された上で、APEC中央基金や各メンバーの他の財源を活用することにより促進されるべきとの提案があり例えばPFPプロジェクト等の機会を有効に活用すべきとの意見が出されました。

2. IPR・GTの名称とステータス

本会合は、これまで、コンビーナの権限により非公式に召集されてきました。しかしながら、本会合での着実な議論の進展や、具体的行動の成果も手伝って、知的所有権は非常に重要な分野で、これを扱う本会合は、より明確に権限付けられるべきであり、名称もそれに相応しいものにすべきであり、本会合をグレードアップすべきだという機運が徐々に高まってきました。
今回会合では、知的所有権非公式会合(IPR・Get-Together)のステータス、新名称及び所掌事項等について、明文化し、貿易投資委員会(CTI)に提言することが議長より提案されました。メンバーから支持を表する活発な意見が出されたあと、IPR・GTをCTIの下の専門家会合(experts group)とすること、及び名称を「Intellectual Property Rights Experts Group(IPEG)」に変更すべきことを提言することが合意されました。本提言文は、8月に開催されたCTIに提出され、無事に承認されました。

次回以降の会合

来年度からは年2回のペースで会合を開催することとされ、次回はキャンベラ(豪州)で開催される予定です。

3. さいごに

本会合は、首脳や閣僚からも高く評価されています。従来非公式な集まりであったIPR・GTをCTIの下に正式に位置づけることが決定され、また、名称も専門家会合とされたことのよって、本会合のステータスはより一層、向上したものと思われます。また、承認された所掌事項は、知的所有権に関して、より幅広く一般的な事項を含むように規定されており、今後の活動の更なる強化・拡充が期待されています。今後、各活動がより具体化する中で、全メンバーでのコンセンサスを得るのも困難になっていくと思われますが、取りまとめ国として、より一層努力していく所存です。

[APEC知的財産権分野の活動]からリンク

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