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APEC/ABAC共同知的財産権シンポジウムの結果について

平成11年2月23日

特許庁

  • (1)特許庁は、2月22日(月曜日)から23日(火曜日)まで、福岡県北九州市において、APECと、APECの民間諮問機関であるAPECビジネス諮問委員会(ABAC)とが共同して参加する知的財産権シンポジウムを開催しました。
  • (2)シンポジウムでは、APECの16か国・地域から、知的財産権庁の長官を始めとする代表とABACの代表とが一堂に会し、APEC地域における21世紀の知的財産権制度のあり方について議論されました。
  • (3)最終日の23日には、議論の成果として
    • 1)APEC地域内での知的財産権制度の標準化を推進すること、
    • 2)模倣品等の知的財産権侵害への対策を強化すること、
    • 3)インターネットを利用した情報提供を推進すること、
    • 4)中小企業やベンチャーの特許制度利用を支援すること、

等を謳った「結論文書」が採択され、今後のAPECの活動に反映させていくことになりました。

1.シンポジウム開催の趣旨

  • (1)APECは、アジア太平洋地域の21の国・地域をメンバーとして、貿易投資の自由化及び円滑化並びに経済技術協力を目指す地域フォーラムです。知的財産権は、95年11月のAPEC大阪首脳会議で採択された大阪行動指針において、貿易・投資の自由化・円滑化に関する15の優先分野の1つとしてAPECで取り上げられることになりました。我が国は当初から知的財産権分野のとりまとめ国(コンビーナー)を務め、メンバーの共同行動をリードしています。
  • (2)共同行動の一環として、知的財産権保護の強化のためにシンポジウムを開催することが奨励されており、96年8月以来、APEC関係行政機関の代表が参加したシンポジウムがこれまでに3回開催されています。APECでは、その活動に民間の意見を積極的に採り入れていくことが謳われていますが、今回のシンポジウムは官民が共同で参加するもので、知的財産権分野では初めての試みです。
  • (3)本シンポジウムでは、APEC地域における21世紀の知的財産権制度のあり方について議論し、その成果が「結論文書」としてまとめられました。「結論文書」を踏まえ、今後、APECにおいて、多数の国で容易に特許を取得するための仕組みの検討や、模倣品対策が進められることが期待されます。

2.シンポジウムの概要

シンポジウム概要

(1)日程

:平成11年2月22日(月曜日)~23日(火曜日)

(2)会場

:福岡県北九州市(リーガロイヤルホテル小倉)

(3)実施主体

主催

:特許庁

協力

:九州通商産業局、福岡県、北九州市、社団法人発明協会

(4)プログラム

:別紙参照

3.「結論文書」のポイント

「結論文書」では、下記の14項目の重要性が強調されました。

  • (1)TRIPS協定履行とさらなる知的財産権制度の調和
  • (2)周知商標保護の重要性と保護の改善の検討
  • (3)権利取得円滑化のための情報技術の調査の必要性
  • (4)インターネットを通じた電子出願の利点
  • (5)知的財産に関する行政制度の標準化及び簡易化
  • (6)効率的で簡素な行政手続きによる権利取得の円滑化
  • (7)多数国での権利取得の円滑化
  • (8)知的財産権庁のエンフォースメント(権利行使)関連活動の強化
  • (9)知的財産権庁を含むエンフォースメント関連機関の相互協力
  • (10)エンフォースメント関連の人材育成と知的財産権保護についての公衆啓発
  • (11)知的財産権庁の行政システムのコンピュータ化の推進
  • (12)インターネットを利用した知的財産権庁からの情報提供の推進
  • (13)中小企業及びベンチャー企業の知的財産権制度利用の支援制度の確立
  • (14)大学・研究機関から民間企業への技術移転の支援制度の確立

別紙

APEC/ABAC共同知的財産権シンポジウム
プログラム

第1日目:2月22日(月曜日)

10時00分-10時30分 開会式

【主催者挨拶】

伊佐山建志

特許庁長官

【来賓挨拶】

麻生 渡

福岡県知事

楠川 徹

(株)富士総合研究所 理事長/
APECビジネス諮問委員会日本委員

10時45分-11時45分 基調講演

【スピーカー】

伊佐山建志

特許庁長官

スーザン・コラレス=ディアス

システムズ・インテグレーテッド社 会長兼CEO/APECビジネス諮問委員会米国委員

13時00分-14時30分 セッション1 APEC地域における知的財産権の取得を円滑化するための制度

【モデレーター】

ホルヘ・アミーゴ

メキシコ知的財産権庁長官

【スピーカー】

ウィラウィット・ウィラウォラウィット

タイ知的財産局局長補

ロバート・アンダーソン

米国特許商標庁長官補代行

ジョーアン・シー

弁護士(シンガポール)

【パネリスト】

ジャン・ジュネホ

韓国工業所有権庁国際協力課課長補佐

ミグニ・ミリアサンドラ・ノエルハディ

弁護士(インドネシア)

15時00分-16時30分 セッション2 適切なエンフォースメントの確保

【モデレーター】

スーザン・ファーカー

オーストラリア知的財産権庁渉外部長

【スピーカー】

ヤン・グオファ

中国対外貿易経済協力部条約法律局次長

ホルヘ・アミーゴ

メキシコ知的財産権庁長官

ロバート・ストール

米国特許商標庁法務国際部部長

スワンプラティープ・ディラポール

弁護士(タイ)

メアリー・デニソン

弁護士(米国)

【パネリスト】

ピジャン・ウー

東呉大学法学部準教授(チャイニーズ・タイペイ)

トラン・フー・ナム

弁理士(ベトナム)

第2日目:2月23日(火曜日)

10時00分-11時30分 セッション3 知的財産権情報の活用

【モデレーター】

シバカント・ティワリ

シンガポール司法省国際部部長 上級国家評議員

【スピーカー】

上野 修

特許庁特許情報課長(日本)

チュア・ジャーン・アーン

弁護士(マレイシア)

アルフレード・ランヘル

弁護士(メキシコ)

【パネリスト】

ザムリ・ムハマッド・タハ

弁護士(ブルネイ)

グレン・ブルーム

カナダ特許商標協会会長

ワン・シャチュアン

国際商業経済大学法学部教授/弁護士(中国)

13時00分-14時30分 セッション4 中小・ベンチャー企業の支援における知的財産権制度の役割

【モデレーター】

エマ・フランシスコ

フィリピン知的財産庁長官

【スピーカー】

シーンヤン・トーン

知的財産庁特許部上級審査官(チャイニーズ・タイペイ)

チュン・ドンスー

現代電子工業 特許部長(韓国)

ロルナ・パタホ・カプナン

弁護士/フィリピン知的財産協会会長

【パネリスト】

マーク・アボウリスク

弁護士(オーストラリア)

早木 敬二

東陶機器(株)知的財産本部 副本部長

ウイリアム・ハウィ

特許弁護士(ニュージーランド)

15時00分-16時30分 セッション5 全体討議

【モデレーター】

佐伯 義文

特許庁国際協力室長/
APEC知的所有権専門家会合(IPEG)議長

【パネリスト】

セッション1~4の参加者

16時30分-16時40分 閉会式

参加国・地域

オーストラリア、ブルネイ、カナダ、中国、インドネシア、日本、韓国、マレイシア、メキシコ、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、米国、ベトナム(16か国・地域)

参考1

APEC知的所有権専門家会合(IPEG)の概要

1. APECとは

APECとは、アジア太平洋地域の21の国・地域をメンバーとして、貿易投資の自由化及び円滑化並びに経済技術協力を目指す地域フォーラムです。日本、米国、カナダ、オーストラリア等の先進工業国と世界の成長センターと言われるアジア諸国を含む発展途上国が共通の目標に向かい協力する点で画期的とされています。

2. APECにおける知的所有権分野の活動

95年11月のAPEC大阪首脳会議で採択されたAPEC大阪行動指針において、知的所有権が、貿易・投資の自由化・円滑化に関する15の優先分野の1つとして取り上げられました。これを踏まえて、96年11月のマニラ首脳会合において承認されたAPECマニラ行動計画には、知的所有権分野の共同行動とその段階的計画が示されています。
その後、我が国は、知的所有権分野のとりまとめ国(コンビーナー)を務め、各メンバーの協力の下、これらの共同行動計画を実行しています。

3. APEC知的所有権専門家会合(IPEG)とは

APEC知的所有権専門家会合は、各メンバーの知的所有権分野の専門家が集まり、専門的、具体的な検討を行う場です。96年4月以来、7回の会合が開催され、知的所有権分野の共同行動について着実な進展がみられています。今回、APEC/ABAC共同知的所有権シンポジウムに続いて、25日(木曜日)、26日(金曜日)、北九州市で第8回会合が開催される予定です。

4. 知的所有権分野の共同行動

IPEGではこれまでに、関係法令や官民関係機関の連絡先のリストを作成し、インターネットで公開しました。また、現在、各メンバーの周知商標の保護、行政手続、権利執行制度についての調査を実施しており、今後は指針の作成等をめざしていくこととしています。
本年は、2000年に迫った途上国のTRIPS協定1履行期限に向けて各メンバーの履行状況を調査するとともに、各メンバーが提供可能な協力と必要とする協力の対照表を作成し、これに基づいた技術協力を実施していくこととしています。また、6月にTRIPS協定履行支援のためのシンポジウムを韓国が主催する予定です。
日本が提案したIP情報モール構想は、各メンバー国・地域の知的財産権庁のインターネットを通じた情報発信の拡大、利用性の向上をめざしており、現在、各機関のホームページを項目ごとにリンクし利用者の利便を図ったクイック・リンク・マトリックスが公開されています。

1 「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」の略。先進国、途上国を問わず、各国が遵守すべき最低限の知的財産の保護水準を定めており、全面的に発効すれば、世界的に共通レベルの知的財産保護が得られます。途上国では2000年に履行義務が生じるため、現在、履行のための最終的な制度整備が進められています。

参考2

ABAC(APECビジネス諮問委員会)の概要

  1. 1995年11月のAPEC大阪会議において、民間からの意見をAPECの活動に反映させることの重要性に鑑み、APEC地域における恒久的な民間ビジネスの諮問組織を設けることが合意されました。
  2. これを受けて、1996年初頭にAPECの各首脳が各国・地域から3人を上限として民間ビジネスの代表者を指名し、APECビジネス諮問委員会(APEC Business Advisory Council: ABAC)が発足しました。以来、ABACは精力的な活動を続け、96年には報告書「APECはビジネスである」を発表しました。
  3. 1997年11月に発表した報告書では、96年に策定されたAPECマニラ行動計画(MAPA)の評価を行うとともに、首脳への提言として、国境円滑化、インフラ投資、経済技術協力、中小企業の各分野について民間ビジネスからの提言を取りまとめており、知的所有権分野についても、TRIPS協定の履行、中央商標・特許登録機構、知的財産権教育協力プログラム、等について提言を行っています。
  4. また、1998年にはアジア地域を中心に通貨・金融危機が広まったことを背景に、金融分野を中心にした提言を行っています。
  5. なお、日本のABAC委員は以下のとおりです。
    • 松下 正幸 松下電器産業(株) 副社長
    • 楠川 徹 (株)富士総合研究所 理事長
    • (1名 空席)

参考3

APECにおける知的所有権分野の位置づけ

APECにおける知的所有権分野の組織図

メンバー(21か国・地域):オーストラリア、ブルネイ・ダルサラーム、カナダ、チリ、中国、中国香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプア・ニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、米国、ベトナム

結論文書(仮訳)

APEC/ABAC共同知的財産権シンポジウム

1999年2月22-23日
福岡県北九州市

1.日本国特許庁は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)の協力の下、1999年2月22日から23日まで、福岡県北九州市においてAPEC/ABAC共同知的財産権シンポジウムを開催した。

2.シンポジウムは、伊佐山 健志 特許庁長官の挨拶で開会された。麻生 渡 福岡県知事、楠川 徹 富士総研理事長兼ABAC日本委員も開会挨拶を行った。

3.シンポジウムには、APEC加盟17か国・地域から、官民の知的財産権の専門家が出席した。
伊佐山長官とスーザン・コラレス=ディアズ システムズ・インテグレーテッド社 会長・最高経営責任者兼ABAC・SME議長が基調講演を行った。APEC加盟国・地域の代表が4つのテーマに基づいたセッションでプレゼンテーションを行い議論に参加した。

4.シンポジウムへの参加者は、知的財産権に関する困難な課題を議論し、知的財産権がAPEC地域の経済発展にますます重要な役割を果たすことを認識し、

APEC地域における知的財産権の取得を円滑化するための制度

  • (1)各メンバーの知的財産制度を2000年までにTRIPS協定に適合するように強化し、さらなる調和の可能性を検討することの重要性を強調し、
  • (2)アジア太平洋地域における周知商標保護と保護の改善の可能性の検討の重要性を認識し、
  • (3)APEC地域における知的財産権の取得の円滑化のために、新たな情報技術の利用を調査する必要性を強調し、
  • (4)メンバーの技術レベルがさまざまであること、及び、現段階において電子出願を行うことの意味合いに留意しつつ、オンライン出願に際しインターネットが有する利点を認識し、
  • (5)知的財産庁における行政システムのさらなる標準化及び簡素化への取り組みを希望し、
  • (6)知的財産権取得の円滑化は、域内知的財産庁における権利登録に際しての効率的で簡素な行政手続きによっても達成されることを提示し、
  • (7)APEC地域での多数国における知的財産権の取得の円滑化を奨励し、

知的財産権の適切なエンフォースメントの確保

  • (8)[特許庁1]知的財産庁をはじめとする国内機関のエンフォースメント関連活動へのさらなる関与の必要性を認識し、
  • (9)[特許庁2]知的財産権の効果的なエンフォースメントのために、情報交換を含む知的財産庁・取締当局・民間団体間等の様々な形式の相互協力の必要性を認知し、
  • (10)[特許庁3]知的財産庁及び関連機関での知的財産権エンフォースメントに携わる人材の育成と、知的財産権とその保護の重要性に関する意識向上のための公衆啓発の意義を強調し、

知的財産権情報の活用

  • (11)情報普及を円滑化し知的財産庁間のコミュニケーションを促進するために、庁内の行政システムをコンピュータ化する必要性を認識し、
  • (12)簡易かつ安価な方法で知的財産情報を普及するために、インターネットをはじめとする最新の情報技術を効果的に利用することを推奨し、

中小企業、ベンチャー企業の支援における知的財産権制度の役割

  • (13)[特許庁4]中小企業及びベンチャービジネスの成長にとって知的財産制度が有益であることを認識し、ビジネスにおける知的財産の価値についての認識を向上させ、特許の導入、ライセンシング、評価等を通じて、その知的財産制度の利用を支援する制度の設立を奨励し、
  • (14)APECメンバー内及び相互間で大学・研究所から民間企業への円滑な技術移転を強化するために、技術移転機関のようなメカニズムを創設することを推奨した。

5.ABAC代表のシンポジウムへの参加とその発言は、提起された課題について民間からの新鮮な展望を提供するのに非常に有用であった。

6.民間の意見を反映するため、今回のようなAPEC地域における官民共同の会合を今後とも継続的に開催することが提唱された。

7.この結論はまた、21世紀に向けた知的財産権に関するAPECの共同行動のさらなる進展を支援するものである。

このシンポジウムの結論は参加者によって採択されたものであり、APECビジネス諮問委員会としての見解を示すものではありません。

[APEC知的所有権分野の活動]からリンク 

 

[更新日 1999年2月23日]

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