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APEC知的財産権シンポジウムの開催について

平成12年2月29日
特許庁

  • 1)特許庁は、2月28日(月曜日)から29日(火曜日)まで、北海道札幌市において、APEC知的財産権シンポジウムを開催した。
  • 2)常陸宮殿下、同妃殿下をお迎えして開会式が行われ、常陸宮殿下からはお言葉を賜った。
  • 3)シンポジウムでは、APECの17か国・地域から、官、民の知的財産権の専門家が一堂に会し、APEC地域経済の発展のために知的財産権制度はどのように貢献しうるかについて議論した。なお、一般参加者はのべ600人。
  • 4)本シンポジウムでは、APEC地域経済の発展のために知的財産権制度はどのように貢献しうるかというテーマのもと、議論が行われた。特に、技術開発の成果物である知的財産を資産として活用するための方策が、大企業、中小・ベンチャービジネス、大学、政府等さまざまな立場から検討された。

シンポジウムの主な成果

(1)基調講演では、丹保北大総長より大学の立場からみた知的財産保護の重要性についての講演を初め、ゴーンポット泰商務省副大臣、アミーゴ墨工業所有権庁長官より、発展途上国の経済発展に果たす知的財産保護の重要性、知的財産権の活用についての啓発・教育の必要性について意見が述べられた。また、近藤日本特許庁長官より、知的財産権制度がいかに日本の20世紀の経済発展に貢献してきたか、今後、権利取得→権利活用→創造活動という知的創造サイクルをいかに刺激して行くべきかについての講演が行われた。

(2)各セッションでは、大学、企業、政府の参加者による議論がなされた。

セッション1で佐々木北大教授は、中央と地方、先進国と発展途上国との間の研究レベルに大きな格差はなく、これら研究成果をいかに開発に結びつけるが問題と指摘、また、過去の日本で特許制度が技術者にインセンティブを与え、基本技術を次々に改良し優れた応用発明を生み出すことができたことについて紹介し、知的財産保護が技術後進国にとって有益であると語った。また、江崎トヨタ自動車(株)知的財産部長は、今日のトヨタの業績には特許ライセンスが大きな役割を果たしていること、21世紀の企業発展には知的財産戦略が不可欠であることを指摘、さらに三星電子(株)法務知的財産部チュン氏は韓国における知的財産制度の重要性の認識の高まり、三星電子の知財保護に対する真剣な取り組みが紹介され、ともにAPECの発展途上地域からの参加者の大きな関心を集めた。

セッション2では、大学における研究成果の知的財産としての活用について、スタンフォード大学ライマース テクノロジーライセンシング室名誉室長から、大学からの地元企業へのライセンスが地方経済に果たす効果が述べられ、さらに、産学連携先進国からのアドバイスとして、失敗を経験として生かすことのできる意欲と行動力に満ちた経営者の必要性が指摘された。これに対し、加藤早稲田大学学外連携推進室課長や、プラシット チュラロンコーン大学知的財産権研究所長からは、我が国やタイにおける緒についたばかりの産学連携の試みについての状況が報告され、特にタイにおいては、大学が知的財産権活用の啓発的役割を果たしていることの紹介があり、APEC域内各国における産学連携の重要性の認識の高まりとともに、研究成果の知的財産としての活用について大学・企業双方への啓蒙の必要性が増していることが明らかになった。最後に、通産省大学等連携推進室西村課長補佐より、北海道大学と北海道TLO(株)の連携を例として、経済基点としての大学の役割への期待についてのコメントがあった。

セッション3では、システム・インテグレーション(株)多喜社長より、今まで大企業に依存していた中小企業を自立させ、開発能力を伸ばすツールとして、大企業の休眠特許等の中小企業へのライセンスの重要性が指摘され、さらに、特許を企業の資産価値として再認識し、特許流通の上での業種を越えた技術の活用可能性の分析の必要性が説明された。次に(株)光合金製作所井上社長より、メーカーの立場として、技術開発における知的財産の大切さが指摘された。最後に、中小企業である台湾プロコンプ・インフォーマティックス社イェー女史より、例えば大企業とクロスライセンスを結ぶにあたり、互いに特許を武器として用いるのではなく、信頼に基づいて人類の技術革新のための共有するツールとして用いることが必要であるとの意見が述べられ、シンポジウム参加者一同の感銘を呼んだ。

セッション4では、1000以上の技術流通エージェントが存在する米国に比較し、民間の特許流通団体がTLO含め50弱である現状の中、政府が積極的に関与してこれを立ち上げ、近い将来の民間での流通促進の実現を目指す日本の試みが三原特許庁情報流通部長より紹介された。また、アドバンスコンサルティング&エバリュエーションソーバーン部長より、オーストラリアにおけるスピンオフの現状及び政府からの援助の重要性について報告され、米ではインターネットを通じた中小企業・個人発明家への情報提供・コンサルティングの活動が紹介された。今後の知的財産の活用を援助するため政府の役割の重要性がますます高まることが認識され、各国・地域固有の文化・社会制度を考慮して、自国の実情に照らした適切なアプローチの必要性が確認された。

[APEC知的所有権分野の活動]からリンク

[更新日 2000年3月6日]

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