ここから本文です。
平成24年5月24日から25日、カザンにおいて第35回APEC知的財産権専門家会合(APEC/IPEG: Intellectual Property Rights Experts Group)が開催されました。
会合には日本の他、APEC14エコノミー(国・地域:カナダ、チリ、中国、香港、インドネシア、韓国、メキシコ、ペルー、フィリピン、ロシア、台湾、タイ、米国、ベトナム)から知的財産権庁の代表者等が出席しました。
日本より、ACTA、マドプロ、商標法条約(TLT)等の加盟促進のために、加盟状況調査、情報共有、普及啓蒙、人材育成等の活動を通じて、各国・各地域の条約加盟に向けた自助努力を促す取組について、概要、目的を説明し、今回会合における承認を求めました。共同提案者である米国、韓国、メキシコより、支持が表明されましたが、他のエコノミーから、現行国内制度や経済発展状況等が異なることから、条約加盟については、各エコノミーの独自の歩調・判断で取り組むべき等の慎重な意見が出され、会期間に議論を継続することとなりました。
日本より、東日本大震災の発生に伴う各国・地域の知財庁の救済措置に端を発し、将来起こりうる災害への備えとして各エコノミーの救済措置について体系化してまとめAPECエコノミー全体で共有するための調査について、現時点で提出されている調査票の結果をまとめて中間報告を行うと共に、引き続き調査への協力を求めました。
日本より、2011年3月中旬に一般公開された、人材育成機関の情報共有・発信のためのウェブ・プラットフォーム(http://ipac.apec.org/)につき、利用状況の報告を行うとともに、より積極的な活用と情報の掲載、ユーザーへの周知を各エコノミーに促しました。
米国より、GI保護制度設立の上で考慮すべき原則に関するIPEGの提言(Recommendation)をまとめたいとの提案が前回会合に引き続きなされました。日本からは、新たなGI保護の枠組みを政府内で検討中であるところ、現時点では立場を明確にできない旨を言及しました。ロシア、中国、タイ等のエコノミーからも慎重な意見が相次ぎ、議論を継続することとなりました。
米国より、次回APEC貿易・投資委員会(CTI)会合において、コピープロテクト等のコンテンツの技術的保護手段の回避を可能にする機器やサービス等の製造、提供等を防ぐための法的メカニズムに焦点を当てたモデルガイドラインの作成を提案するとの報告があり、会期間に議論を継続することとなりました。
米国より、テナントの知財権の侵害行為に対する大家の責任に関する調査研究について、前回会合に引き続き提案がなされましたが、今回会合では米国内の判例等を紹介するに留まり、情報共有等を通じて議論を継続することとなりました。
中国より、従前より提案されている、APECエコノミーにおける知財権の不適切な使用防止のための法制度に係る調査プロジェクトに関し、現在修正案につき政府内で検討中であり、引き続き各エコノミーの意見を歓迎するとの発言がなされたのみで、今回も合意には至りませんでした。
次回のIPEG会合は2013年2月にインドネシア・ジャカルタにて開催される予定です。
[更新日 2012年6月1日]