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本年7月15日(木曜日)~17日(土曜日)、冷涼な風がさわやかに心地よい高地メキシコ・グアダラハラ市において、APEC(アジア太平洋経済協力)の知的所有権専門家会合(IPEG:Intellectual Property Rights Experts Group)が開催されました。同会合は96年4月の第1回会合以来、今回が9回目にあたります。我が国は第1回会合以来議長をつとめており、その貢献は各メンバーから高く評価されています。
今回の会合は、アメリカ大陸ではじめて開催されたものです。メキシコは以前より自国でのIPEG開催に意欲を示していましたが、勃発したアジアの経済危機により、主として交通費の面から(アジアから見て)遠隔地メキシコでの開催はのびのびになっていました。ようやく実現した今回の会合には14の国・地域から政府の知的所有権関係実務者が参加しました。日本からは特許庁からの5名(佐伯国際課国際協力室長(IPEG議長)、西脇同課長補佐、森次同課長補佐、小林同国際業務係長、海老原同地域機構係長)に加えて、外務省、文化庁からも参加しています。
IPEGの行動規範は1995年の大阪首脳会合で合意された大阪行動指針です。IPEGはAPEC域内の知的所有権の適切かつ効果的な保護を確保することを目的として、大阪行動指針にしたがって各種共同行動計画を推進しているのです。
今回のIPEGは、これまでの会合の中でも特に重要な意味合いを持つものでした。大阪行動指針にはAPEC各メンバーが2000年1月1日までにWTO/TRIPS協定を完全に履行することがうたわれていますが、今回の会合はその履行完了期限前の最後の会合にあたったからです。会合では期限までの完全履行に向けて最大限努力していくことが再確認されるとともに、特にTRIPS協定履行のためのいくつかのプログラムについては以下の通り進行状況および今後の計画等が報告されました。
TRIPS協定の主な項目を列挙したチェックリストを用いて、各メンバーが自国の法制度の同協定との整合性について自らチェックし、報告する、という調査が今年3月以来行われています。今回は、各メンバーからの報告の取りまとめ結果が提示されました。また、今後も各メンバーの法整備状況の的確な把握を目的として、調査を続行することが合意されました。
さらに、2000年6月に行われる貿易担当大臣会合で、WTO/TRIPS履行完了宣言を行うよう求めていくことに合意し、宣言文案の検討も開始しました。
本シンポジウムは、APEC域内途上国の知的所有権政策担当者を対象として、6月14日(月曜日)から18日(金曜日)まで、韓国、テジョン市で行われたものです。域内外の知的所有権各分野の専門家を講師として招聘し(日本からは佐伯特許庁国際協力室長と熊谷九州大学法学部助教授が講師として参加)、対話を通してTRIPS協定履行に向けた課題とその解決方法が検討されました。
今回会合では、シンポジウムのホスト・エコノミーの韓国から、各参加者から提出されたアンケート結果等を参酌したシンポジウムの評価レポートが提示されました。
IPEGでは、APEC域内の知的所有権制度の標準化・簡素化を目的として行政制度ガイドラインの検討を進めていましたが、今回該ガイドラインが採択されました。今後このガイドラインに基づいて各メンバーが自主的に行政制度の標準化・簡素化を推進していくことが期待されます。
かねてよりTRIPS協定が履行された後のポストTRIPS時代にふさわしい、より実効性のある知財保護の確保のために、共同行動計画を見直す適当な時期に来ていることが認識されていました。今回議長が新共同行動計画策定のたたき台とするべく計画案を提示しました。今後この案に基づいて詳細計画について議論が行われ、2000年中に新たな計画を策定し、2001年から新共同行動計画の下での行動が開始される予定です。
その他にも、進行中であったエンフォースメント制度の調査結果を公開することが合意されたこと等、今回会合では数々の成果が得られました。会合の概要及び調査結果などの情報はAPECホームページ(http://www.apecsec.org.sg)上で公開される予定です。
最後に、次回会合は2000年3月上旬に札幌で開催することが合意されました。
これまでIPEGは、途上国メンバーのTRIPS協定履行に焦点をあてて活動を行ってきました。今回会合は履行期限前の最後の会合にあたったわけですが、その場で、TRIPS履行の総仕上げとなる閣僚によるTRIPS協定履行宣言と、ポストTRIPSのIPEGの活動方針を決定づける新共同行動計画の策定に向けて大きな進展が得られたことは、非常に大きな意義があるといえるでしょう。
今回の会合では、2000年最初の会合が日本(札幌)で行われることが決まりました。特許庁は、IPEGの議長という立場から、TRIPS協定履行後も引き続きAPECでの知的所有権分野の活動をリードしていきます。
[APEC知的財産権分野の活動]からリンク
[更新日 1999年10月27日]
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