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特許法条約(Patent Law Treaty;PLT)を採択するための外交会議が、2000年5月11日から6月2日にジュネーブで開催され、同条約は6月1日に採択されました。
PLTは、各国異なる国内手続を統一化、簡素化させることにより、出願人の負担を軽減するとともに、手続上のミスによる特許権の喪失を回復する等の救済規定を設けることにより、ユーザーフレンドリーな面も兼ね備えた条約です。
※PLTについての最新情報は、以下の特許庁ホームページを御覧ください。
1985年7月 |
各国毎に相違している特許制度の調和を目的として検討を開始。 |
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91年6月 |
条約採択のための外交会議を開催したが、米国が先発明主義の許容に固執したため、採択にいたらず。 |
95年5月 |
制度調和に対するモーメンタムを維持するため、先願主義等の実体面以外の、手続面で調和を図ることで合意し、議論を開始した。 |
95年12月 |
5回にわたる専門家会合及び3回の特許法常設委員会(Standing Committee on the Law of Patents;SCP)が開催された。 |
2000年5月 |
特許法条約外交会議開催(6月1日条約採択) |
採択された条約の主な内容は以下のとおりです(詳細は別添の条約及び規則を参照して下さい)。
①下記の3つの要素を官庁が受理した日を、出願日とする(第5条(1))。
※1:クレームがなくても出願日は付与される。
②明細書であると外見上認められる部分(上記(iii))は、出願日の確保のためには、いかなる言語で記載されていても構わない(第5条(2))。
③最初の提出時に欠落してしまった明細書の一部分又は図面をあとで補充することが可能。その際、出願日は補充した日が出願日となる。ただし、当該欠落部分が、優先権を主張している先の出願に含まれている場合には、出願日は、最初に出願日の認定要件が満たされた日となる(第5条(6))。
④先に提出した出願の出願番号等を引用することによって、出願の明細書及び図面と置き換えることができる(第5条(7))。
①出願に関する最大限の要件として、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty;PCT)で規定されたものを準用。出願人は、PCT出願手続における要件と異なる又は追加する要件を課されることはない(第6条(1))。
②記載された事項、優先権の申立て、又は翻訳文に合理的な疑義がない限りは、出願人は、証拠、証明又は認証等を要求されることはない(第6条(6))。
③要件を満たしていない場合は、必ず締約国の官庁からその旨が通知され、さらに通知後、要件を満たすため及び意見を述べるための機会を与えられる(第6条(7))。
④モデルとなる願書等の様式が設定されたもの(※2)については、全ての締約国に対して同一の様式を用いて出願等の手続が可能(第6条(2)、第20規則)。
※2:モデル様式として、(i)委任状、(ii)氏名又は住所変更の記録申請、(iii)出願人又は権利者変更の記録申請、(iv)譲渡証書、(v)実施権の記録又は記録取消の申請、(vi)担保権の記録又は記録取消の申請、(vii)誤りの訂正申請、が規定されている。
⑤パリ条約に基づく優先権書類の翻訳文は、その優先権主張の有効性がかかる発明の特許性の判断に影響を与える場合でない限り、要求されることはない(第6条(5)、第4規則(4))。
①官庁によって設定された期間(いわゆる指定期間)に間に合わなかった場合、その期間を延長させるか(※3)、期間満了後においても当該処理を継続させるようにすること(※4)が可能(第11条)。この選択は締約国による。
※3:期間の延長は、(i)期間満了前、又は(ii)期間満了後一定期間内の申請により((i)及び(ii)は締約国の選択)、期間満了時点から少なくとも2か月間認められる。
※4:期間満了後の処理の継続は、期間満了後の申請により、官庁による通知後少なくとも2か月認められる。期間満了後の処理の継続は、上記(ii)の期間延長を認めない締約国においては、必ず認められる。
ただし、下記の手続期間(※5)については、第三者との利益とのバランスを考慮し、締約国は救済を規定しなくてもよい(第12規則)。
※5:
②状況により求められる妥当な注意(due care)を払ったか又は故意ではなかった(unintentional)にもかかわらず(この選択は締約国による)、期間が満たせずに権利が失われてしまった場合、その権利は回復される(第12条)(※6)。
※6:権利が回復される期間は、期間満了から12か月、又は期間を満たせなかった原因が取り除かれた日から2か月のうち、どちらか早く満了する方に限定される。ただし、特許料の支払いに関しては、パリ条約第5条の2に基づく猶予期間(少なくとも6か月)の満了から12か月、又は期間を満たせなかった原因が取り除かれた日から2か月のうち、どちらか早く満了する方である。
ただし、下記の手続期間(※7)については、第三者との利益とのバランスを考慮し、締約国は救済を規定しなくてもよい(第13規則)。
※7:
③優先権関連の救済(第13条)。
①下記の事項に関しては、各締約国は代理を義務づけてはならない(第7条(2))。
②なお、特許料の支払いは、いかなる者であっても可能(第7条(2))。
①外交会議終了から5年後、すなわち2005年6月2日以降は、出願日の目的のための出願の提出、及び期間を満たすための書類の提出を除いて、締約国は紙による提出を排除することが可能。ただし、その期日までは紙による提出を認めなければならない(第8規則(1))。
②さらに、大容量出願(いわゆるメガ出願)の取り扱いを考慮し、上記①の移行期間にかかわらず、紙による提出がその性質又は容量から適当でない場合には、締約国は紙以外の手段によって提出することを要求することが可能(第8規則(1))。
移転登録にかかる申請は、旧権利者又は新権利者のいずれか一方の者による申請(単独申請)が可能。ただし、締約国の官庁は、契約に関する情報、及び申請を裏付ける書類を申請に添付することを要求できる(第16規則、第17規則)。実施権(ライセンス)の登録申請も同じ取り扱い。
特許協力条約(PCT)は、それまで特許出願しようとする国ごとに、それぞれ国で異なった出願手続をすることを余儀なくされていた煩雑さを改善し、一つの出願を国際出願として、一箇所に提出することによって複数国に出願したと同じ効果を与える出願手続の簡素化を図った条約です。他方、特許法条約(PLT)は、各国異なる特許出願手続に関して、最低限に統一、共通化が可能な方式的要件を各国がそれぞれの国内法令の中で定めることによって、出願手続の統一、簡素化を図った条約です。
PCTとPLTとでは、その対象となる出願が異なりますが、特許出願の手続に関しては両条約で整合性が図られており、PCT国際段階で図られた統一性をPLT国内出願手続に取り込むべく、PLT出願手続の中で、PCTに基づく出願の要件が準用されています。
具体的には、PLT出願の要件として、PCTに基づく国際出願の形式又は内容に関する要件を国内出願の要件として引用しています。さらに、PLT願書様式に含まれる内容として、PCTに基づく国際出願の願書様式に含まれる内容、及び国際出願の国内段階で要求される内容を引用しています。
また、電子出願に関する要件も、PCTの電子出願に関して定められる要件を引用する構造になっています。
[更新日 2016年4月15日]
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