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リヤド意匠法条約の採択について

意匠法条約を確定し採択するための外交会議が、2024年11月11日から11月22日にサウジアラビア・リヤドで開催され、新条約が、「リヤド意匠法条約(Riyadh Design Law Treaty)」として、同月22日に採択されました(条約・規則・附帯決議の詳細はDLT/DC/26(外部サイトへリンク)及びDLT/DC/26 CORR.(外部サイトへリンク)

リヤド意匠法条約は、世界知的所有権機関(WIPO)の商標法、意匠法及び地理的表示に関する常設委員会(SCT)において、各国で異なる国内手続を調和・簡素化することにより、出願人の負担を軽減することを目的に、2005年から議論が行われてきたものです。グレースピリオド(新規性喪失等の例外)や出願・登録意匠の非公表の維持(秘密意匠制度)、手続期間を徒過した場合や権利を喪失した場合等に一定の条件下で提供される救済措置が盛り込まれています。

本条約は、15の国又は政府間機関が批准書又は加入書を寄託した後3か月で効力を生じます(第30条(2))。

1.採択されたリヤド意匠法条約の主な内容

採択された条約の主な内容は以下のとおりです(条約の概要表は2を、各規定の詳細はDLT/DC/26(外部サイトへリンク)及びDLT/DC/26 CORR.(外部サイトへリンク)を、参照して下さい)。

① 出願及び申請時に官庁が課すことができる要件

条約は、意匠出願、更新、名義変更又は実施権の記録の申請書類において、締約国が要求することができる要件や記載事項を列挙・明記し、更なる要件を締約国が課すことを禁止する旨を定めています。

② グレースピリオド(新規性喪失等の例外)

出願前に公開された意匠は、原則として、新規性を喪失したものとみなされ保護されませんが、条約は、グレースピリオドの期間(優先日から遡って12か月)に意匠が公開されたとしても、その意匠の新規性等が喪失しないものとして取り扱う旨を定めています(但し、締約国は、条約への加盟時に、当該規定の適用を留保することを宣言することができます)。

③ 出願・登録意匠の非公表の維持(秘密意匠制度)

条約は、出願・登録意匠を出願日から起算して最低6か月、非公表のまま維持することを可能にする締約国の義務を定めています(但し、締約国は、条約への加盟時に、当該規定の適用を留保することを宣言することができます)。

④ 手続救済措置

(a) 官庁が指定する手続期間の延長

条約は、官庁が指定する期間を、条約・規則で定める要件が満たされることを条件として、少なくとも一箇月延長する救済措置の導入を締約国の義務とすることを規定しています。延長申請書の官庁への提出のタイミングを、期間徒過前とするか又は後にするかは締約国が選択可能です。

(b) 意匠出願又は登録に関する権利回復

締約国は、期間徒過後の期間の救済措置(上記(a)参照)を提供しない場合であって、期間不遵守の直接の結果として権利喪失を引き起こしたときは、一定の基準(相当な注意基準又は故意でない基準)及び条約・規則で定める要件が満たされることを条件として、意匠出願又は登録に関する出願人又は名義人の権利を回復する義務を負います。

(c) 優先権主張の訂正・追加

締約国は、条約・規則で定める要件が満たされることを条件として、優先権主張の訂正又は追加を認める義務を負います。

(d) 優先権回復

締約国は、優先期間を過ぎた後であっても、一定の基準(相当な注意基準又は故意でない基準)及び条約・規則で定める要件が満たされることを条件として、優先権を回復する義務を負います(但し、締約国は、条約への加盟時に、当該規定の適用を留保することを宣言することができます)。

2.条約の概要表

条文番号 タイトル 主な内容
第1条
第1規則
附帯決議
略称
  • 条約・規則で用いられる用語の意味を規定。
  • 略称「官庁に対する手続」に行政不服審査法に基づく手続は含まれない。
  • 1か月を30日とみなすことが可能。
第2条 一般原則
  • 本条約は締約国が自由に実体法要件を規律する自由を制限しない。
  • 本条約は他の条約に基づく締約国の義務の適用を制限しない。
  • 締約国は出願人・名義人にとってより有利な要件を課す自由を有する。
第3条 条約が適用される出願及び意匠
  • 締約国官庁に提出される出願及び締約国の法令に基づき登録されうる意匠に、本条約が適用される。
第4条
第2規則
第3規則
附帯決議
出願の内容;
図面の詳細
  • 締約国が出願に含めることを要求できる最大限の要件を列挙。
  • 締約国の国内法令に従って、意匠の登録適格性に関連する伝統的文化表現(TCE)又は伝統的知識(TK)に関する情報を含めるよう要求することができる。
  • 締約国は、国内法令が定める場合にのみ、部分意匠出願を認める。
第5条
第31条(1)
第4規則
代理人;
通信のあて名
  • 国内に居住又は営業所を有しない者による代理人の選任義務。
  • 例外として、出願日認定を受けるための最初の出願及び単なる手数料支払については、締約国は在外者からの官庁に対する直接手続を許容しなければならない。但し、出願日認定を受けるための最初の出願への代理人選任の例外については適用留保することが可能。
第6条
第5規則
出願日
  • 締約国が出願日認定のために要求できる最大限の要件を列挙。追加の項目として、本条約の締約国となる時の国内法令が定める場合には、製品名、図面の説明、請求の範囲、手数料支払い、創作者の表示を求めることができる。
第7条
第31条(2)
グレースピリオド
  • 優先日から12か月のグレースピリオド(新規性等喪失の例外)を認めなければならない。但し、適用留保することも可能。
第8条 創作者名での出願
  • 締約国は、創作者名で出願することを求めることができる。
第9条 複数の意匠を含む出願の補正・分割
  • 複数の意匠を含む出願がなされた場合、締約国は、補正又は分割するよう求めることができる。また、国内法令が認める場合には、出願人が自発的に分割することができる。
第10条
第31条(2)
第6規則
意匠の非公表の維持
  • 締約国は、最短でも出願日から6か月間、意匠を非公表のまま維持することを可能としなければならない。但し、適用留保することも可能。
第11条 意匠の電子システム
  • 締約国は、国内法令に従って電子出願システムを提供する努力義務を有する。
  • 締約国は、優先権書類の電子的交換を可能にすることが奨励される。
第12条
第7規則
第8規則
官庁に提出される書類
  • 官庁に提出される書類の送付手段・形式、言語、署名、記載事項に関する要件
第13条
第9規則
更新
  • 更新手続の要件
第14条
第10規則
期間の救済
  • 官庁によって指定される期間を徒過した場合の救済措置の提供を義務とする。
  • 手続期間の延長請求の提出は、手続期間満了前又は同満了後とするかを官庁が選択することが可能。
第15条
第11規則
権利の回復
  • 締約国は、手続期間満了後の期間の救済措置を提供しない場合であって、期間不遵守の直接の結果として権利喪失を引き起こしたときは、一定の基準(相当な注意基準又は故意ではない基準)を満たすこと等を条件に権利を回復する義務を負う。
第16条
第31条(2)
第12規則
附帯決議
優先権主張の訂正又は追加;
優先権の回復
  • 締約国は、出願後一定期間は、優先権主張の訂正又は追加を認めなければならない。但し、実体審査の終了後は除く。
  • 締約国は、優先期間を過ぎた後であっても、一定の基準(相当な注意基準又は故意ではない基準)を満たすこと等を条件に優先権を回復する義務を負う。但し、適用留保が可能。
第17条
第18条
第13規則
附帯決議
実施権又は担保権の記録の申請;
実施権又は担保権の記録の修正又は取消申請
  • 実施権又は担保権の記録の申請並びに同記録の訂正又は取消に関して締約国が課すことができる要件。但し、税務・金融当局等による利用目的で、実施権(契約)の当事者に対して追加の情報提供を求めることを妨げない。
  • 関連意匠制度において、締約国が、本意匠及びその関連意匠の実施権の記録又は同記録の修正若しくは取消しを一括で申請することを求めることを妨げない。
第19条
第31条(2)
実施権が記録されていないことの影響
  • 実施権が記録されていないことは、意匠の登録有効性又は保護に影響を及ぼさない。
  • 侵害訴訟へ参加する権利又は侵害から生じた損害の賠償を受ける権利を有する条件として、実施権の記録を要求できない。但し、適用留保が可能。
第20条 実施権の表示
  • 意匠が実施権に基づいて使用されている旨の表示の要件の非遵守は、当該意匠登録の有効性・当該意匠の保護に影響を及ぼさない。
第21条
第14規則
附帯決議
名義人の変更の記録の申請
  • 名義人の変更の記録の申請に関して締約国が課すことができる要件。但し、税務・金融当局等による利用目的で、新旧名義人に対して追加の情報提供を求めることを妨げない。
  • 関連意匠制度において、締約国が、本意匠及びその関連意匠の名義人の変更の記録を一括で申請することを求めることを妨げない。
第22条
第15規則
氏名若しくは名称又は住所の変更
  • 名義人、出願人、代理人及び通信等の宛先の氏名若しくは名称又は住所の変更の申請に関して、締約国が課することができる要件。
第23条
第16規則
誤りの訂正
  • 出願、登録、その他の申請に含まれた誤りの訂正申請に関して、締約国が課することができる要件。
第24条
第26条
技術支援及び能力構築
  • WIPOによる、本条約履行のための技術支援及び能力構築の提供、総会への参加費用助成、総会による技術支援の監視、並びにそれらへの財政支援。
  • WIPOの提供する電子図書館で登録意匠の情報を提供することへのWIPOによる支援。
  • 締約国による手数料減免の提供は任意。
第25条
第17規則
第18規則
規則
  • 規則の内容、モデル国際様式の公表、規則の修正、修正に全会一致が要件とされる規則。
第26条 総会
  • 総会の構成、任務、定足数、総会における決定、多数による議決、会合
第27条 国際事務局
第28条 条約の改正
第29条 締約国となるための手続
第30条 効力発生;
批准及び加入の効力発生日
  • 条約の効力発生に必要な批准書又は加入書の数は、15。
第31条 留保

締約国・政府間機関は、留保を付することにより、下記規定を適用しない旨を宣言することができる。

第5条(2)(b)代理人の選任義務の例外
第7条グレースピリオド
第10条(1)意匠の非公表の維持
第16条(2)優先権の回復
第19条(2)侵害訴訟への参加等に実施権記録を求めないこと
第32条 条約の廃棄
第33条 条約の言語及び署名
第34条 寄託者

[更新日 2025年1月9日]

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総務部国際政策課国際出願企画班

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