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WIPO・SCT「周知商標の保護規則に関する共同勧告」について

平成11年12月

国際課

商標課

平成11年9月20日から29日までジュネーブにおいて開催されていた、工業所有権保護のためのパリ同盟総会及びWIPO一般総会において、商標法、意匠法及び地理的表示に関する常設委員会(SCT)第2回第2部(1999年6月7日~11日)による「周知商標の保護に関する勧告決議案」をもとに、「周知商標の保護規則に関する共同勧告」(PDF:20KB)が採択されました。

1.経緯

周知商標の国際的な保護に関する議論は、1995年、WIPOに設けられた周知商標専門家委員会において開始され、1998年以降は、これらの問題を議論するために設けられたWIPO・SCTにおいて検討が進められてきました。
本年6月に開催されたSCT第2回第2部において、「周知商標の保護に関する勧告決議案」が、我が国を含む参加約70か国、国際機関等により議論され、採択されました。

2.本共同勧告の構成

本共同勧告は、周知商標の認定のための基準(使用期間、地理的範囲、関連する公衆等)、周知商標と抵触する商標、業務上の標識、ドメインネームからの周知商標の保護について規定しており、全6条からなります。概要は次の通りです。

本共同勧告の概要

条項

内容

共同決議

工業所有権の保護に関するパリ同盟総会、WIPO一般総会は、

  • (1)各メンバー国に対し、SCT第2回第2部で採択された規定の使用を、周知商標保護のためのガイドラインとして考慮することができる旨勧告する。
  • (2)各メンバー国に対し、本規定を準用し、周知商標を保護する可能性につき注意を喚起することを勧告する。

第1条「定義」

  • (1)メンバー国・・・パリ同盟、WIPOのメンバー国。
  • (2)官庁・・・商標登録機関。
  • (3)権限ある当局・・・周知商標であることの決定等を担当する行政的あるいは司法・準司法的当局。
  • (4)業務上の標識・・・自然人、法人等が業務を特定するために使用する標識。
  • (5)ドメインネーム・・・インターネット上のアルファベットの文字列。

第2条「周知商標の決定」

 

(1)周知商標決定の要因

  1. 周知商標の決定に際しては、周知性に言及するいかなる資料をも考慮しなければならない。特に、関連する公衆における商標の知識・認識の程度、商標使用の期間、商標使用の地理的範囲、広告・宣伝等の期間、広告・宣伝等の地理的範囲、世界的に獲得している登録の数・期間、権限ある当局で周知と認められた記録等を考慮する。(2条(1))
  2. 関連する公衆には消費者、流通経路に携わる者、類似商品(役務)を扱う者を含むが、限定されない。(2条(2)(a))

(2)周知商標の決定

  1. 一の関連する公衆に周知であるときは、周知性を認定しなければならない。(2条(2)(b))
  2. 一の関連する公衆に知られているときは、周知性があるとみなすことができる。(2条(2)(c))
  3. 当該国において周知でなくても、あるいは知られていなくても周知と決定できる。(2条(2)(d))この場合は、当該国以外の一若しくはそれ以上の他国において周知であることを要求することができる。(2条(3)(b))

(3)周知商標の決定において要求されない要因

  1. 当該国において、その商標が使用、登録、出願されていること。(2条(3)(a)(i))
  2. 他国でその商標が、周知であること、使用され、登録され、出願されていること。(2条(3)(a)(ii))
  3. 公衆全体に周知であること。(2条(3)(a)(iii))

第3条「周知商標の保護:悪意」

  • (1)周知商標は、当該国で有効に周知となったときから保護する。(3条(1))
  • (2)競合する利益の評価には悪意を考慮することができる。(3条(2))

第4条「抵触する商標」

 

(1)周知商標と商標との抵触の条件

  1. 周知商標と混同を生じさせやすい複製、模倣、翻訳、音訳よりなる商標(若しくはその要部)であって、周知商標が使用する商品(役務)と同一若しくは類似の商品(役務)に使用され、出願され、登録されている商標。(4条(1)(a))
  2. その商標(若しくはその要部)が、周知商標の複製、模倣、翻訳、音訳よりなる場合であって、(i)周知商標の所有者との関連性が示され、かつ周知商標の所有者の利益を害するおそれがあるとき、(ii)希釈するおそれがあるとき、(iii)不正利用しているときには、その商標が使用され、出願され、登録されている商品(役務)に関係なく周知商標と抵触する。(4条(1)(b))
  3. 希釈又は不正利用の場合は、公衆全体に周知であることを要求することができる。(4条(1)(c))

(2)周知商標の救済規定

  1. 商標が周知商標と抵触する場合は、周知商標の所有者にはその商標に関し、異議(混同の場合)、無効(職権による取消を含む)、使用の禁止を要求する権利が与えられる。(無効の場合は、登録の事実が公に知らされた日から5年間。使用禁止の場合は、使用を知ったときから5年間。)(4条(2)(3)(4)(5))
  2. 但し、その商標が、周知商標が周知になる以前より使用され、登録され、出願されている場合には、悪意である場合を除き、周知商標との抵触の適用を求められない。(4条(1)(d))

(3)抵触する商標が不使用の場合は、無効を請求できる期限を設けることはできない。(4条(6))

第5条「抵触する業務上の標識」

 

(1)周知商標と業務上の標識との抵触の条件

  1. 業務上の標識(若しくはその要部)が、周知商標の複製、模倣、翻訳、音訳よりなる場合であって、(i)周知商標の所有者との関連性が示され、かつ周知商標の所有者の利益を害するおそれがあるとき、(ii)希釈するおそれあるとき、(iii)不正利用しているときには、その業務上の標識の使用は、周知商標と抵触する。(5条(1)(a))
  2. 希釈又は不正利用の場合は、公衆全体に周知であることを要求することができる。(5条(1)(b))
  3. 但し、その業務上の標識が、周知商標が周知になる以前より使用され、登録され、出願されている場合には、悪意である場合を除き、周知商標との抵触の適用を求められない。(5条(1)(c))

(2)周知商標の救済規定

  1. 業務上の標識が周知商標と抵触する場合は、周知商標の所有者には、その業務上の標識に関し、使用を知ったときから少なくとも5年間使用の禁止を要求する権利が与えられる。(5条(2))

(3)悪意の場合は、使用の禁止の要求のための期限を設けることはできない。(5条(3))

第6条「抵触するドメインネーム」

  • (1)周知商標とドメインネームとの抵触の条件
    ドメインネーム(若しくはその要部)が、周知商標の複製、模倣、翻訳、音訳よりなる場合であって、悪意で登録又は使用されたときは周知商標と抵触する。(6条(1))
  • (2)周知商標の救済規定
    周知商標の所有者には、権限ある当局の決定により、ドメインネームの登録者にそのドメインネームの登録の取消、移転をすることを要求する権利が与えられる。(6条(2))

[更新日 1999年12月16日]

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