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本Q&Aは立体商標の見直し(店舗等の外観・内装の保護を含む)における一般的な考え方を示したものであり、実際には事案ごとに個別具体的に判断されますので御留意ください。
Q1-1: どのように、立体商標の制度・運用が見直されたのですか?
A1-1: 主に、次の3点について、立体商標の制度・運用を見直しました。
Q1-2: 今回の(立体商標)見直しは、「トレードドレス」を保護するためのものですか?
A1-2: 「トレードドレス」は、国際的にその定義が確立していないのが実態であり、保護される対象も一義的に定まっているとはいい難い状況です。今回の立体商標の見直しは、店舗等の外観・内装をより適切に保護するために願書への記載方法等を見直したもので、いわゆる「トレードドレス」の保護制度を導入したものではありません。
Q1-3: 商標における「内装」と、意匠における「内装」の違いはあるのですか?
A1-3: 商標における「内装」とは、広辞苑(新村出編『広辞苑 第七版』2149頁(岩波書店 2018))において「建築物などの、内部の設備・装飾。」とされており、商標審査基準においても、それに則して解釈しています。次に、意匠法における「内装」とは、「店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(意匠法第8条の2)」と定められており、双方の「内装」の意味内容は、概ね一致します。
ただし、「内装の意匠」として登録を受けることができる意匠は、「内装を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠」(物品、建築物又は画像を複数組み合わせたもの)であり、かつ、内装全体として統一的な美感を起こさせるものに限られます。他方で、内装に係る立体商標については、その立体的形状が特定でき、識別力等の要件を満たすものであれば、保護対象となり得ます。
Q1-4: 店舗等にはどのようなものが含まれるのですか?
A1-4: 商標審査基準において、「店舗等」には、事務所、事業所及び施設等の建築物に加え、建築物に該当しない移動販売車両、観光車両、旅客機及び客船等も含む旨規定しています。
Q2-1: 立体商標に関する出願状況や登録状況については、どのように調べたらよいでしょうか?また、店舗等の外観・内装を表す立体商標等の出願状況や登録状況を調べる方法はありますか?
A2-1: 商標の出願状況や登録状況については、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」において提供されています。こちらで立体商標についても検索を行うことができます。また、図形分類を入力して検索することで店舗等の外観・内装を表す 立体商標等の出願状況や登録状況を調べることも可能です。
検索方法などの詳細については、「特許情報プラットフォームの提供(外部サイトへリンク)」で御確認ください。
Q3-1: 店舗等の外観を表す立体商標を出願する場合、従来の出願方法と異なる点はありますか?
A3-1: 願書に記載する際、従来の立体商標の記載方法に加え、商標登録を受けようとする立体的形状とその他の部分を描き分ける記載方法(商標登録を受けようとする立体的形状を実線で描き、その他の部分を破線で描く等の方法)が可能となりました。ただし、この場合、願書に「【商標の詳細な説明】」の欄を設け、その旨の説明を記載する必要があります。
Q3-2: 立体商標の出願において、願書に【商標の詳細な説明】を記載する必要がある場合を教えてください。
A3-2: 例えば、次のような場合には、商標登録を受けようとする商標を特定するために商標の詳細な説明の記載が必要となります。
Q3-3: 立体商標の出願において、【商標の詳細な説明】として、具体的にどのようなことを記載すればよいのでしょうか?
A3-3: 願書の商標記載欄に実線・破線等の描き分けがある場合には、描き分けた線等の説明(商標及び商標を構成しない要素の説明)を記載してください。
店舗等の内装において、願書に記載した立体商標の端が商標記載欄の枠で切れている場合は、立体的形状の内部の構成を表示した立体商標であることを記載してください。
商標審査基準及び商標審査便覧に、具体的な記載例を掲載していますので、こちらを参考にしてください。
Q3-4: 願書の商標記載欄に、店舗等の内装を表す立体商標を複数図で記載することはできますか?
A3-4: 記載することは可能ですが、各図の表す立体的形状が合致しない場合には、一つの立体的形状として特定されていないことから拒絶理由の対象となります。また、願書に記載した商標の補正は、原則として、要旨の変更となり認められません。
商標審査基準及び商標審査便覧に、具体的な記載例を掲載していますので、こちらを参考にしてください。
Q3-5: 立体商標について、商標登録を受けようとする立体的形状を実線で描き、その他の部分を破線で描く等の方法を用いて記載するのは、どのような場合でしょうか?
A3-5: 例えば、内装の立体商標について、それを構成する立体的形状のうち、同一の形状で店舗展開することが想定されない部分を、商標を構成しない部分として破線で記載することが考えられます。ただし、当該破線で表した形状は登録商標の権利範囲に含まれず、商標法第3条第2項の「同一性」や同法第4条第1項第11号の「類否の判断」においても考慮されません。
Q4-1: 立体商標の制度・運用が見直されたことによって、商標の識別力に関する審査判断や類否に関する審査判断は変わるのでしょうか?留意点を教えてください。
<識別力について>
A4-1: 立体商標の識別力の判断については、従前から変更ありません。商標が指定商品の形状や指定役務の提供の用に供する物の形状等として認識される場合には、第3条第1項第3号に該当すると判断し、同号に該当しない店舗等の形状については、同項第6号に該当すると判断します。
なお、商標登録を受けようとする立体的形状を実線で描き、その他の部分を破線で描く等(実線・破線等の描き分け)がある立体商標の識別力の判断については、商標を構成しない部分(破線等)を除いて考察することとなります。また、実線・破線等の描き分けがある出願商標と使用商標の第3条第2項における同一性の判断については、出願商標の商標を構成しない部分(破線等)については考慮しません。
詳細は、商標審査基準及び商標審査便覧をご参照ください。
<類否について>
A4-1: 立体商標の類否判断についても、従前から変更ありません。なお、実線・破線等の描き分けがある立体商標の類否の判断は、商標を構成しない部分(破線等)を除いて、商標全体として考察することとなります。
詳細は、商標審査基準及び商標審査便覧をご参照ください。
Q4-2: 長年の使用により識別力を獲得していることを立証する際には、どのような証拠が必要になるのでしょうか?
A4-2: 出願された立体商標が、単に指定商品の形状、指定役務の提供の用に供する物の形状又は店舗等の形状を表したものという理由で拒絶理由を通知された場合であっても、長年の使用により識別力を獲得していることが認められれば、その拒絶理由を解消することができます。その場合、例えば、次のような証拠により立証する必要があります。
Q4-3: 今回の立体商標の制度・運用の見直しにより、ファストトラックや早期審査の対象外となる立体商標はあるのでしょうか?
A4-3: 店舗等の外観・内装からなる立体商標又は「商標の詳細な説明」の記載を有する立体商標(出願時に商標の詳細な説明の記載がなくとも、商標を特定するために当該記載が必要と判断される場合を含む。)は、当面の間ファストトラック及び早期審査の対象外となっています。
早期審査・早期審理ガイドラインに、詳細を掲載していますので、こちらを参考にしてください。
Q5-1: 出願手数料や登録料は従来の立体商標と比べて高くなりますか?
A5-1: 従来の立体商標と同じ料金です。出願手数料や登録料については、「産業財産権関係料金一覧」でご確認ください。
[更新日 2020年5月11日]
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