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株式会社アトリエMay
日本は昔「豊葦原千五百秋瑞穂国」と呼ばれていました。日本書紀に書かれていた言葉です。
「豊かにヨシ原が茂り、毎年秋には稲が穂を実らせる国」という意味です。
このようにヨシは、美しく豊かな日本の風景の象徴でした。
昔は「アシ」とも呼んでいたのですが、「悪し」につながることから、ヨシと呼ぶのが一般的になったようです。かつては日よけや樹木を吹雪から守るヨシズに使われましたが、今は身近なところではあまり目にすることがなくなりました。
しかし、川や沼、湖のほとりに行けば、群生している様子が見られます。
このヨシ、実は素晴らしい性能を秘めている、スーパー植物なのです。
第一に、ヨシは 動物や植物を保全する機能を持っています。
川辺でヨシが生えているところには、生き物がたくさん棲んでいるとされます。
理由は、ヨシが汚れを取り込むことで、水がきれいになるから。ヨシの群生地そのものが水質浄化システムを形成し、生物多様性を実現する場所となっています。
次に、ヨシは光合成により空気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を生成して地球温暖化を防ぐ働きをしています。
そんなスーパー植物のヨシが、今、さらに別の形で地球の役に立とうとしています。
「ヨシの短い繊維は紙に、長い繊維はヨシ混紡綿として、そして端材や残渣などは農家さんの堆肥や土壌改良材として使えるんです」
そう話すのは、株式会社アトリエMayの塩田真由美さん。
アトリエMayは、地域資源や自然素材を使った生活雑貨などを企画・販売するデザインユニットです。ヨシ紙を使ったインテリア商品を制作していた塩田さんは、ヨシの魅力を知るにつれ、ヨシ製品をもっと広めてヨシ原(ヨシの群生地)を守りたいと考えるようになりました。そして、ヨシを産業化しヨシの経済的価値を高めることを目指し、ヨシ繊維を製造する技術を開発しました。繊維化によりさまざまな商品に転用する可能性を広げようとしたのです。
I-OPENプロジェクトへの参加をきっかけに、ヨシ繊維“reed yarn”の商標と、その製造技術の特許を取得。信頼が高まり、協業したいという企業が増えていきました。現在ではTシャツ、ストール、靴下、壁紙などへとヨシ製品が増え、大手企業との協業で量産化も可能になりました。
全国の水辺に群生するヨシは、その地域の人たちの大切な資源として、自治体や組合などにより管理されています。
その一方で、「ヨシの茎は中が空洞で、軽いけれど大変かさばる。原料のヨシを製造工場に運ぶのは、まるで空気を運ぶようなもの」(塩田さん)。物流コストやCO2排出による環境負荷などを考えれば、ヨシ原の近くでヨシ繊維を製造するのが理想でしょう。
塩田さんは「協力してくれる企業を全国から募り地場産業に育てていく。そのためには、確固たる理念と社会的信用が必要」と考え、一般社団法人ヨシオープンイノベーション協議会を設立しました。
「社団法人化により、自治体などの公的機関から連絡をもらうことが増えています」と塩田さん。今後は協議会の会員へライセンス提供し、全国各地のヨシ産業を支援していくことも考えています。
ヨシは刈り取らないと新芽が出にくい植物で、人の手が入らなければ荒れた状態になってしまいます。しかし、産業活用することで毎年刈取られ、新しい芽が出てくるサイクルが生まれます。
塩田さんが目指すのは、ヨシの用途が広がり、地域でヨシ産業が発展し雇用が生まれ、地域が元気になり、ヨシ原が保全される、そんな持続可能なビジネスのカタチです。
塩田さんはI-OPENで出合った専門家の助言を取り入れ、着実に知財に取り組んできました。知財を追い風に、理想のカタチの実現に向けて一歩一歩進もうとしています。
大阪府枚方市に本社を構え、地域資源を活用したデザインや企画を手掛けている。
サスティナブルな資源として注目されている植物「ヨシ」を繊維化し、ヨシ紙、ヨシ糸を製造した上で、日本のものづくり企業とコラボして、様々なヨシ製品を企画販売し、「ヨシをよしとする商品計画」をテーマに、インテリア雑貨から衣料品、寝具等、ライフスタイル全般で商品展開している。
【知的財産活用】
ヨシ繊維の製造方法で特許取得(特許第7583486号)(特許第7576833号)
ヨシ糸のブランド“reed yarn”で商標取得(商標登録第6373968号)
【I-OPEN】
株式会社アトリエMayは、特許庁I-OPENプロジェクトで支援した企業です。特許庁I-OPENプロジェクトは、スタートアップ企業、非営利法人、個人等が、知財やビジネスに精通した専門家の伴走支援を受け、知財を活用しながら、社会課題解決を目指すプロジェクトです。
URL:https://www.i-open.go.jp/
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